【2022年最新】前脛骨筋の起始停止と作用は?筋トレ、ストレッチ、自主トレ、評価、リハビリ論文サマリーまで
前脛骨筋(Tibialis anterior)の概要
・前脛骨筋は脛骨の外側にあり、上部は筋腹が厚く、下部は腱質であります。
・筋繊維は下方に垂直に走り、末端は腱になっており、下腿3分の1の位置で筋前面に見えます。
・下腿の上方で前脛骨動脈と深腓骨神経に重なります。
・筋の深部はまれに距骨に挿入されたり、腱膜が第1中足骨頭や母趾の第1指骨の基部を通ることがあります。
前脛骨筋の起始停止
図引用元:VISIBLE BODY
起始:脛骨(外側顆と骨幹近位)の外側上部2/3
下腿骨間膜上方2/3前面
下腿筋膜(深部)
停止:第1楔状骨の内側面、第1中足骨底
前脛骨筋の支配神経
図引用元:VISIBLE BODY
深腓骨神経L4,L5,S1
・深腓骨神経は、腓骨頭を回って下腿前面に出てきた総腓骨神経から分岐し、前脛骨動脈と伴行しながら下腿の前面を下行します。
・走行中に下腿の伸筋群に筋枝を出したのち、背側指神経になります。
・深腓骨神経は、長趾伸筋・短趾伸筋、長母趾伸筋・ 短母趾伸筋、第三腓骨筋も支配します。
前脛骨筋の血管供給
図引用元:VISIBLE BODY
前脛骨動脈
・前脛骨動脈は下腿骨間膜の上端にできた裂孔を通り、下腿前側へと出てきます。
・前脛骨動脈は深腓骨神経と伴行し前脛骨筋の外側を下行しながら下腿伸筋群を養い、足背動脈へと移行します。
前脛骨筋の機能
図引用元:VISIBLE BODY
・足関節背屈(長母趾伸筋、長趾伸筋、長腓骨筋との相乗作用により)
・足関節内反(後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋との相乗作用により)
・足部内転
・前脛骨筋は、足部内側アーチの維持にも貢献します。
・歩行開始時の予測的姿勢調整(APA)期では、前脛骨筋は脛骨の前方変位を引き起こすことによって立脚期の膝屈曲を支持します。
・前脛骨筋は、抑制され活動低下しやすい筋肉の1つであり、これにより相乗的な筋肉である長母趾伸筋、長趾伸筋、長腓骨筋が過剰に活動することになります。
・片麻痺やパーキンソン病の患者など、前脛骨筋が抑制または弱化している人は、患肢の歩行開始時に先行的姿勢調整(APA)フェーズに異常が生じます。
・そして、対側の大腿筋膜張筋の過活動によって前脛骨筋の弱さを補おうとします。
起立・着座時の前脛骨筋の役割
図引用元:脳卒中の動作分析 金子唯史 著
・前脛骨筋は動作開始前に筋活動が発生しており、移行相における離臀時に最大となります。
・離臀より前脛骨筋から主たる筋活動は外側広筋を主とした大腿部の筋へと移行し、伸展相より腓腹筋・ヒラメ筋が作用し始めます。
・第2相(移行相)は、骨盤前傾から足関節最大背屈までの過程で、体幹前傾位から伸展運動に切り替わるまでの離臀を指し、前脛骨筋はこの移行相でも重要な役割を果たします。
・第2相では、CoGが足部に移行し、重心制御のために前脛骨筋の求心性収縮とヒラメ筋の遠心性収縮が協調的に活動し始めます。
・足関節最大背屈を作り出せることで、下腿三頭筋や足底筋膜の伸張が促され、足部内在筋群が活性化し、力強い足底の床反力生成が可能となります。
・下腿三頭筋が低緊張の場合、膝が過剰に前方移動したり、背屈が強調されすぎて距腿関節でのインピンジメントや不安定性が生じやすくなります。
・第2相から第3相に切り替わる際には、前脛骨筋やヒラメ筋などの下腿筋群の協調性が重要であります。
・脳卒中患者は、前脛骨筋の活動が過剰なケースも多く、相反的に小趾側の筋群や腓骨筋などの活動が弱まりやすいです。
歩行時の前脛骨筋の役割
図引用元:脳卒中の動作分析 金子唯史 著
・初期接地(IC):足関節背屈筋により中間位で足を保持
・荷重応答期(LR):前脛骨筋で足関節底屈を制御
・遊脚初期(Isw):前脛骨筋の収縮による足関節背屈でクリアランス確保
・遊脚中期(Msw):足関節中間位で保持する為、背屈筋を積極的に利用
・足関節の支点機能(ロッカーファンクション)であるヒールロッカーでは、踵接地時に床反力作用線が足関節後方を通り、踵が回転軸となり足関節底屈が生じます。
・その底屈作用に対し、前脛骨筋の遠心性収縮によりブレーキが加わり、下腿は前方傾斜し、膝関節屈曲が生じます。
・歩き始めの際は、振り出し側の下腿三頭筋の筋活動が減弱し、拮抗筋である前脛骨筋の筋活動が高まります。
前脛骨筋の評価
触診
図引用元:https://learnmuscles.com/blog/tag/anterior-compartment/
・前脛骨筋を触診する際は、足関節背内側で前脛骨筋の遠位腱を見て、遠位腱を垂直に叩いて触診します。
・前脛骨筋の近位から脛骨外側顆まで、繊維に対して垂直に叩くように触診を続けます。
前脛骨筋の触診に関しては下記の動画をご参照ください。
筋力評価(MMT)
・姿勢 :座位もしくは背臥位
・抵抗位置:足関節背内側の上に当てる
・動作 :背屈+内反
・MMT3 :全可動域を動かし、抵抗が無ければ最終肢位を保てる
・MMT4 :強度~中等度の抵抗に対抗して、全可動域を動かせる
・MMT5 :全可動域を動かし、最大抵抗に対抗して最終位置を保てる
*長趾伸筋、長母趾伸筋による足趾背屈の代償が生じるため、足趾背屈を含めないよう注意。
前脛骨筋の治療
筋力強化
Tibialis Anterior Muscle Exercise:ゴムバンドを用いて足関節背屈+内反に抵抗をかけて行います。
ストレッチ
図引用元:https://www.verywellfit.com/shin-stretches-standing-stetch-3436425
図左参照:つま先立ちのストレッチ
➀立位で壁などに手をついてバランスを取ります。
②ストレッチする脚は反対側の後ろに置き、ストレッチする脚のつま先が地面に着くようにします。
➂伸ばしている足の甲から脛にかけて伸びを感じたら、そのまま15~30秒キープします。
図右参照:座位でのストレッチ
➀椅子に座り、膝を地面に向けて落とし、立ち姿勢と同じように足のつま先が地面に着くようにします。
②つま先を地面につけたまま、ゆっくりと前に引き、足の甲から脛にかけて伸びを感じたら15秒から20秒キープします。
前脛骨筋にFESを用いた高速トレッドミル練習の効果に関する記事は下を参照してください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)