ヒトの二足歩行における四肢間の協調運動 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー|神経系 歩行 上肢
タイトル|二足歩行における四肢の協調:運動障害への影響
Quadrupedal coordination of bipedal gait: implications for movement disorders←Pubmedへ Dietz V:J Neurol. 2011 Aug;258(8):1406-12
論文内容
・二足と四足の移動は多くの点で共通する脊髄の神経制御機構がある.だが,霊長類の上肢は熟練した手の動きを実行することに特化しており,明確な違いもある.
・つまり,リーチや手指の巧緻操作の際の上肢筋の皮質運動ニューロン制御と移動中に頸膨大部の脊髄固有回路による間接的な制御といった課題依存の切り替えが存在するだろう.
<出典:Dietz V2011←原著pdfへ>
・上図は異なる運動課題中の運動制御を示す.
・a 手の熟練運動中は強い直接的な皮質-運動ニューロンの興奮が優位である.そして,頸部の脊髄固有ニューロン系は抑制されている.
・b 歩行中,脳の指令は(皮質-運動ニューロンよりも)介在ニューロンを優位に介していると仮定される.頸髄と胸・腰髄の固有脊髄系は上肢と下肢の運動を連結し協調させる.
・ ヒトにおける上肢・手指の運動は強力な皮質-脊髄コントロールの進化によるものである.だが,歩行時の上肢のスイングは四肢の協調として四足移動の機能残存を反映している.
・パーキンソン病患者(PD群)と年齢を一致させた対照群のステップ時の脛骨神経刺激が上肢のスイングに及ぼす影響を調査したところ,上肢筋の予期的脊髄反射応答は対象群と比べてPD群で大きかった.
・結果,PD群において四肢の協調メカニズムは基本的に保たれているが,課題のパフォーマンス中に身体平衡を自動的に制御する予期的脊髄神経活動がより強化されている.
・強化された予期的脊髄神経活動は上肢スイングの減少を引き起こす.これは固定による生体力学的制限が寄与しているだろう.
<出典:Dietz V2011←原著pdfへ>
図は脛骨神経刺激による三角筋の反射応答 黒線は,非麻痺側三角筋の反射EMG応答 灰色線は,麻痺側三角筋の反射EMG応答 ヒトの模式図の斜線領域は麻痺側を表す
・脳卒中後遺症者において,麻痺側下肢を刺激した時と比べて非麻痺側の脛骨神経刺激した時に両側上肢筋で活動が強くなっている.
・この違いは通常時より障害物を越える時に著しい.これは麻痺側からの上行性入力の処理が障害されたことを表している.機能的結果として,肢内–肢間協調障害の原因と想定される感覚–運動統合の欠陥は,求心性入力の処理の障害によるものかもしれない.
明日への臨床アイデア・感想
上肢にはリーチやバランス,コミュニケーションなど多彩な役割がある.ただし,その神経機構は活動によって異なるシステムを使用しており,我々が治療を検討するときには神経機構を含めたリーズニングが重要になると再認識した.
パーキンソン病患者では,四肢の協調を改善するよりも過剰な筋緊張を調整することが治療の近道となるかもしれない.脳卒中患者の麻痺側足部からの感覚入力は重要であり,上肢のバランス活動にまで影響を及ぼす.治療では全身の運動連鎖を考えた緻密な課題設定が必要であると考えられた.
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)