【2022年最新】菱形筋の起始停止と作用とは?痛みとトレーニング・ストレッチ・リハビリまで解説
菱形筋の概要
菱形筋の起始停止
図引用元:VISIBLE BODY
菱形筋は、僧帽筋のすぐ近くにある大小2つの筋肉から構成されています。
小菱形筋
起始:C6とC7、T1の棘突起
停止:肩甲骨の内側縁上部、肩甲棘の付け根付近
大菱形筋
起始:T2-T5の棘突起
停止:小菱形筋のすぐ下、肩甲骨の内側縁
菱形筋の神経支配
図引用元:VISIBLE BODY
菱形筋の運動機能は肩甲背神経 (DSN) によって制御されています。
肩甲背神経は脊髄神経根C5の腹側枝から発生し、後下方で中斜角筋を通り、後斜角筋、肩甲挙筋および上後鋸筋の間に進入します。腕神経叢の深部まで続き、小菱形筋と大菱形筋を支配します。
菱形筋の血液供給
図引用元:VISIBLE BODY
肩甲背動脈から栄養を供給されています
菱形筋の機能・臨床的意義
・菱形筋は肩甲骨を内転、挙上(肩甲骨を上内方へ引く)、下方回旋させます。
・僧帽筋中部の補助として肩甲骨の後退をさせます。
・寝返りからon elbowにかけての相にて拮抗筋である前鋸筋と協調しながら肩甲胸郭関節の安定に関与します。
・菱形筋は肩甲骨を寄せ、胸を開く働きをサポートします。デスクワークの方では、長時間同一姿勢で作業を続けると硬くなりがちになります。菱形筋が働かないと胸が開かなくなってしまいます。
菱形筋の評価
触診
図引用元:https://anschutzwellness.com/show-some-tlc-to-your-tfl/
筋力
方法:座位にて手背を脊柱に近づけた位置から開始します。肘と手を共に脊柱から遠ざけるように実施します。
<MMT3〜5>
5 Normal:最大限の抵抗で最終域を維持できる
4 Good:中程度の抵抗で最終域を維持できる
3 Fair:重力以外の抵抗なく最終域を維持できる
<MMT2>
2 Poor:検査者が自重をサポートすれば実施できる
<MMT1とMMT0>
1 Trace:セラピストが筋肉の収縮を感じることができる
0 Zero:収縮が触知できない
トリガーポイント
菱形筋の治療
肩甲骨は姿勢に重要な役割を果たすので、菱形筋を強化することが姿勢改善のカギになります。強化エクササイズで菱形筋を強化し、背筋のアンバランスを解消し、姿勢を改善させます。
姿勢のエクササイズに特に重点を置きたい場合は、菱形筋を中心に軽量で自重のあるエクササイズを行うことがおすすめです。これにより、肩を後ろに引いて良い姿勢を保つという良い習慣を身につけることができます。
毎朝、起床時に菱形筋エクササイズを行うことで、一日中、良い姿勢を保つことができます。
●ダンベルを使った菱形筋エクササイズ
図引用元:https://www.setforset.com/blogs/news/best-rhomboid-exercises
・両手にダンベルを持ち、腰を約45度の角度で曲げます。
・この姿勢を維持し、動作全体を通して体幹を鍛えましょう。
・息を吐きながら、ダンベルを真上に持ち上げます。腕は肩と平行にならない程度にします。
・持ち上げながら、手首をしっかりさせ、脚は動かしてはいけません。
・息を吸いながら、コントロールしながらウエイトを下ろします。
●シーテッドローイング
図引用元:https://www.setforset.com/blogs/news/best-rhomboid-exercises
・足のまわりに抵抗バンドを引っ掛けます。
・フォームを整えます。
・バンドを後方へ引いていきます。肩甲骨を意識して引っ張って下さい。
・胃の上方くらいの高さで引くのが丁度良いです。
・肩甲骨の後退および下方回旋を用いて菱形筋の力を絞り出して下さい。
●BANDED W
図引用元:https://www.setforset.com/blogs/news/best-rhomboid-exercises
・左右のバンドを片手ずつ持ちます。中央に近いほどテンションが高くなります。
・肘を横に倒し、両手は腰の距離に保ちます。
・肩を体から離し、まっすぐ水平に外旋させていきます。
・ゆっくりとスタートポジションに戻り、繰り返します。
菱形筋のストレッチは下記動画を参考にしてみてください。
菱形筋のリハビリテーション
菱形筋は、スポーツや重いものを運ぶ(リュックを背負うなど)際の不適切な姿勢、または過剰な使用や過度の伸ばし過ぎなど、様々な活動によって損傷する可能性があります。
菱形筋の緊張は、多くの場合、使い過ぎや悪いフォーム、悪い姿勢、あるいは悪い寝姿勢によって引き起こされます。菱形筋の緊張を感じると、背中の上部から中央部にかけて深呼吸をすると痛みが出ることがあります。
菱形筋を痛めた場合は、まず1日に何度も、1回20分程度アイシングをするのが最適なリハビリです。それ以外に、菱形筋を休ませる必要があります。つまり、負荷のかかる引っ張り運動は避けるということです。回復中は常に良い姿勢を保つことが大事です。
ほとんどの菱形筋の緊張は早く治りますが、菱形筋の怪我が治るまでにかなりの時間がかかったり、弱いと感じる場合は、菱形筋を再び強化するための運動や物理療法を行う必要があります。
上肢のリーチと菱形筋
図引用元:脳卒中の動作分析 金子唯史 著
屈曲相とは、肘関節が屈曲する方向に動き始める段階を指します。個人差はありますが、肘関節の屈曲と同時に、肩甲上腕関節における上腕骨頭に伸展モーメントが加わり、肩甲骨の内側縁の筋肉(菱形筋や前鋸筋、僧帽筋中部線維など)が活発に動きます。
これにより肩甲骨の安定性が得られ、大胸筋や上腕二頭筋などの前面筋群が効果的に伸張され、肩関節屈曲方向への推進力生成に寄与します。また,肩甲上腕関節の外旋を伴うことで、肩甲上腕関節を安定させるローテーターカフが活動し、上肢挙上時のインピンジメント症候群を防ぐことができます。
この相はテーブルの距離に影響を受けやすく、テーブルが近すぎると肩甲上腕関節の伸展がより求められます。肩周囲の低緊張が強い脳卒中患者の場合、肩甲骨の挙上・前傾、肩関節外転パターンで代償されやすいです。
脳卒中患者の食事場面では,膝上よりテーブル上に麻癖側上肢を 置いておくほうが代償が少なく、リーチや補助手としての活が容易になりやすいため,ポジショニングを考盧する必要があります。
菱形筋に関連するリハビリ論文サマリーはこちら
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)