片麻痺のリハビリ:バランスを考える。脳卒中(脳梗塞・脳出血)
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金子コメント:本日はバランスに関連する論文です。
当時話題になっていたことは、バランスを全て「反応」と考えるな、という点でした。
一般的なバランステストってどうしても「反応」に意識が向きやすいです。他動的に押した際にどのようにCOMをlimit内に納めるか、あるいは越えていくかなどが良い例です。
ただ、人間のバランスはFF(Feed forward)とFB(Feed back)の相互作用で生み出されるので、どのバランステストも0:100で考えないことが大切です。
走る動作や野球の投球などはFFの要素が大きいですが随時FBも入ってきています。
一方誰かに押されてバランスを保持するテストはFBの要素が大きいですが、自身の経験を上手く活用する部分もあるのでFFは一部入ってきます。
つまりFF×FB=Controlなのです。
バランスコントロールを常にどう評価するかはセラピストのセンスになりますし、それにより治療展開も大きくかわってくると思われます。
本文contents
英文抄読:Theoretical considerations in balance assessment
内容が非常にしっかりしていたため、今回は自分の理解をより深めるために少し長く訳しています。
読みにくいかもε=ε=(;´Д`)
それぞれのバランススケールでどのような特徴があるか?あるいはいくつかの条件下を満たすバランススケールはどのようなものがあるのか?という見解でもバランススケールを紹介しています。
大まかに各章を要約していきます。
・Balance and function are inextricable(バランスと機能は密接している) バランスは単一ではなく、機能(function)と切り離せないものとし、すべての随意運動スキルの基礎としている。
・What constitutes balance control?(何がバランス制御を構成するのか?) バランスコントロールは何で構成されるのか?
1.重力への姿勢維持
2.加速力への平衡維持(随意運動の際に生じる身体内への力、予測外からの外力)
・Balance depends on task characteristics and environmental context (環境状況と課題の特性に基づくバランス)
・課題の特徴(例:正常歩行、つま先歩行、ハイヒール歩行)によってバランス要素を複雑にあるいは、簡単する。
・環境の特徴(例:暗い住みなれない部屋)も同様にバランスに影響を与える。 課題と環境の制約は二方向の運動遂行に影響を及ぼす
1.活動時の生体力学的特徴に影響を及ぼす
2.バランスとゴールの両者を達成するために遂行されるべき情報量に影響を及ぼす。
・Biomechanical aspects of balance control(バランス制御におけるバイオメカニカルな側面)
身体の姿勢制御(Postural control)と平衡制御(equilibrium control)の両者は重力や加速力に対する身体の安定の維持に必要である。
Postural component of balance control(姿勢のバランス制御の要素)
1.重力に対してアップライトの姿勢を保つ
2.床面(COG)への身体のCOMの移動を調整するあらゆる運動へのカウンターバランス
Equilibrium component of balance control(平衡のバランス制御の要素) 平衡制御は実行する際の力に関わらず、身体の体節間の部位間の維持する。
・角加速度(上肢を挙げるときの肩は体幹上で反作用するモーメントを作り出す:つまりAPAのこと)
・直線加速度(歩行時の股関節で生じる:イニシャルコンタクトや蹴りだしの時に体幹が屈曲するため、COMを中心に維持するよう股関節の抗重力伸展が生じる)のような力は身体部位間に影響を与える。
平衡制御はスピードや多くの動きに影響を受ける(早い運動やおもりを持って手を挙げる運動はゆっくりした運動よりもより平衡制御が要求される)
また、平衡制御はエネルギーが最小限になるように調整している(歩行時の大腿や脛骨のスイング時の際に、クワドの活動よりも膝の伸展(パッシブな力)を利用する)
Task influences on the biomechanical parameters of balance control(課題のバランス制御におけるバイオメカニカルなパラメーターへの影響)
課題の間中ずっと加速や重力のコンビネーション、方向づけ、マグニチュードの決定、バイオメカニカルなパラメーターを要求される。この章では、1.静止時、2.自ら動く動揺、3.外乱、4.感覚操作や動揺のカテゴリー別で、BOSが動くか、動かないかで、それぞれで特徴のあるバランススケールを挙げてる。(例えば、静止時→BOSは動かない→立位が何秒とれるか?など)また、タスク時に環境の要素も考慮すべきとしている。
How environmental context influences the biomechanical parameters of balance (どのように環境状況がバランスのバイオメカニカルなパラメーターに影響を及ぼすのか) 環境におけるバランスを評価していく上で二つの要素を考慮すべきである。
1.proactive balance mechanisms(これは視覚システムに基づいている:ちらかった環境や入り組んだ地形など).
2.Predictive control mechanism(APAs) これらは、環境と身体間の調整に必要な予測を作り出す
3. Reactive balance control 刺激に対するバランス制御(脊髄反射や皮質でのステッピング反応レベル)
・小さい動揺であればankle strategy
・大きい動揺であればhip strategy
・BOSを超えたらstep strategyとなる.
私見:何の評価スケールを用いるのか?ということは結果測定において非常に重要ですし、もちろん患者さんの分析をする上でも重要です。
この文献では、Berg Balance ScaleやTime up and go ,Functional Reach Testなど数多くのスケールの特性、課題と環境要因の考慮、バランスシステム的な側面など区分しながら説明しています。
また、バランスを構成する要素の細かい用語説明もあり、スケールのための文献としてだけでなく、バランスとは?ということを整理していく上でも非常に参考になる文献です。
Functional reach testのお役立ち動画↓↓↓
バーグバランススケール↓↓↓
TUGお役立ち動画↓↓
お知らせ information
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)