【2022年最新】腓骨筋の起始停止と作用・神経は?筋トレ、ストレッチ、自主トレ、評価まで解説
腓骨筋の概要
・長腓骨筋は、短腓骨筋の表層にあり、腓骨筋の中で最も大きいです。
・長腓骨筋は、下肢の外側コンパートメントを下方に伸び、中間部で先細りになり、長い腱となって足部に下降します。
・短腓骨筋は、下腿の外側で長腓骨筋の深部にある短い筋肉で、長腓骨筋とともに内反捻挫の際によく損傷し、短腓骨筋腱はよく脱臼する腱であります。
・第3腓骨筋は、3つの腓骨筋(長腓骨筋、短腓骨筋)のうちの1つであり、下腿の前区画(前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋)にある最も表層にある筋肉であります。
・第3腓骨筋の有病率は研究者により異なるが、以下の通りであると報告されています。
・アジアの集団 38.5%-95.5%
・西アジア人集団 38.5%-42%
・日本:95.5%
腓骨筋の起始停止
図引用元:visible bodyより
起始:脛骨外側顆
腓骨頭・腓骨外側面の近位2/3
下腿筋膜
筋間中隔
停止:第1中足骨底
内側楔状骨の外側
起始:腓骨外側遠位2/3
下腿筋間中隔
停止:第5中足骨底・外側面
起始:腓骨遠位1/3(内側面)
筋間中隔
停止:第5中足骨底の背側面
・長腓骨筋は、上腓骨筋支帯下で外果窩を短腓骨筋腱と伴走します。
さらに、立方骨を滑車として方向転換し長腓骨筋腱溝を滑走した後、内側楔状骨・第1中足骨底に停止します。
・長腓骨筋は、下腿部外側の表層は下腿筋膜、深層の近位部は深腓骨神経、深層の遠位部は短腓骨筋と隣接し、足底にて小趾外転筋の下層と隣接します。
・短腓骨筋は、下腿部前方は長趾伸筋、後方はヒラメ筋・長母趾屈筋、表層は長腓骨筋・浅腓骨神経と隣接します。
・長腓骨筋腱と短腓骨筋腱は、外果を境に走行が逆転します(図1)。
・外果より近位では長腓骨筋腱が前方に位置しますが、外果後方では短腓骨筋腱が前方に位置します。
・第3腓骨筋は、下腿部外側では長・短腓骨筋、内側は前脛骨筋、表層は下腿筋膜と隣接します。
図1:長腓骨筋腱と短腓骨筋腱の走行
図引用元:https://teachmeanatomy.info/lower-limb/muscles/leg/lateral-compartment/
腓骨筋の神経支配
図引用元:visible bodyより
・長腓骨筋: 浅腓骨神経(L4、L5、S1)
・短腓骨筋: 浅腓骨神経(L4、L5、S1)
・第3腓骨筋: 深腓骨神経(L4、L5、S1)
・総腓骨神経は長腓骨筋の中で分岐し、深層の深腓骨神経は前方から遠位へ、表層の浅腓骨神経は外側から遠位に走行します。
・浅腓骨神経は長・短腓骨筋間で両筋に筋枝を出すとともに、腓骨筋・長趾伸筋間を遠位へ走行して内側足背皮神経・中間足背皮神経となり、下腿の前外側面から足部の背面の皮枝となります。
・深腓骨神経は前下腿筋間中隔を通過して前下方へ向かい、前脛骨筋腱と長母趾伸筋腱の間を走行しながら前脛骨筋・長趾伸筋・長母趾伸筋・第3腓骨筋に筋枝を出し、足関節背側の下伸筋支帯の下層を通過します。
腓骨神経に関しては下記記事にて詳細に解説しておりますので、併せてご覧ください。
腓骨筋の血管栄養
図引用元:visible bodyより
・長腓骨筋:腓骨動脈
・短腓骨筋:腓骨動脈
・第3腓骨筋:前脛骨動脈
腓骨筋の機能・臨床的意義
図引用元:visible bodyより
・長腓骨筋: 足関節底屈・外反
外側縦アーチ・横アーチの挙上
第1中足骨を屈曲(底屈)・外反方向に固定し、荷重時の母趾支持性高める
・短腓骨筋: 足関節底屈・外転
外側縦アーチの挙上
・第3腓骨筋 足関節背屈・外反
・長腓骨筋は、前足部内側の足底を床面から離れないように作用しています。
・長腓骨筋は足部アーチと密接な関連があり、母趾列の内転・回外を制限し、アーチを保持します。
また、内側より母趾中足骨底を後方へ引き、内側楔状骨・舟状骨を挙上させ、外側より立方骨を挙上させます。
・短腓骨筋は、長腓骨筋とともに底屈を補助し、外反に必要な力の63%を担っています。
・短腓骨筋は、突然の足部内反ストレスの際に、動的な足首外側の安定性に関与し、第5中足骨基部に停止しているため、足部内反を制動します。
・第3腓骨筋は、足の背屈と外転を補助し、歩行の遊脚相で長母趾伸筋と一緒に働きます。
下記記事と動画において傾斜地における腓骨筋の活動について解説しています。併せてご覧ください。
腓骨筋の活動低下
・脳卒中患者は前脛骨筋の活動が過剰なケースが多く、相反的に小趾側の筋群や腓骨筋などの活動が弱まりやすいです。
・背屈動作においても背側骨間筋や短趾屈筋などの内在筋、腓骨筋などの外在筋の活動を伴わず、内反優位の前脛骨筋の活動を伴いやすくなります。
・腓骨筋群の筋力低下は、過度な回外(内反)の原因となります。
・腓骨筋群の過緊張は、過度な回内(外反)の原因となります。
・歩行における長腓骨筋の求心性収縮は、ショパール関節を回内させることで前足部内側を接地させます(図2)。
・また、腓骨筋群は下腿の移動側への傾斜が起きた際に、前足部の足底を床に接地させる目的で足部回内に作用します。
・脳卒中患者は、腓骨筋群の緊張が低下しやすいため、踵骨・下腿傾斜時に前足部の足底を床面に接地させておくことが難しく、下腿傾斜を制御しようとして、足部内反筋群の活動が増えて足部が内反します。
図2:ロッカーファンクション
図引用元:脳卒中の動作分析 金子唯史 著
腓骨筋障害
図3:腓骨筋腱脱臼
図引用元:visible bodyより
腓骨筋群は、以下のようないくつかの病態に陥りやすいです。
・腓骨筋腱症
・腓骨筋腱亜脱臼または不安定性(図3)
・長腓骨筋腱断裂(図4)
・疼痛性腓骨筋症候群
・コンパートメント症候群
・長腓骨筋腱断裂により、腓骨剥離骨折を起こす可能性があります(図4)。
・何らかの原因で上腓骨筋支帯が弛緩し、足関節背屈時に腓骨筋腱が外果を前方に乗り越える病態が腓骨筋腱脱臼です(図3)。
・距骨下関節の回外拘縮があると、腓骨筋腱は腓骨滑車部での摩擦力が増強して腓骨筋腱鞘炎を引き起こします。
・回外–内転の傷害では、短腓骨筋腱が損傷し、第5中足骨の基部を引っ張って、ジョーンズ骨折を引き起こす可能性があります。
・前距腓靭帯断裂例では、長腓骨筋が距骨の内反不安定症を制動し、短腓骨筋が距骨の内転不安定症を制動します。
・第3腓骨筋症候群は、歩行中に足首の第3腓骨筋腱の引っかかり、クリック、ロックまたはポッピングを特徴とする状態です。
図4:腓骨筋腱断裂
腓骨筋の評価
長腓骨筋の触診
図引用元:https://musculoskeletalkey.com/11-muscles-of-the-leg-and-foot/
A:触診する指を腓骨の外側、腓骨頭のすぐ遠位に当て、抵抗の手を足部外側に置きます。
長腓骨筋は遠位1/2の位置で腱になるため、長腓骨筋の筋腹は近位1/2で触診出来ます。
B:長腓骨筋腱は、足部外転に抵抗することにより外果の後方ですぐ触診出来ます。
長腓骨筋腱は変わった経路を辿り、外果後方を横切って足部外側に入り、そこで立方骨の後方を横切って足底の奥深くに潜り込みます。
最終的には前脛骨筋の付着部(内側楔状骨と第1中足骨底)と同じ位置で足部内側に付着します。
短腓骨筋の触診
図引用元:https://musculoskeletalkey.com/11-muscles-of-the-leg-and-foot/
A:短腓骨筋の筋腹は、長腓骨筋腱のすぐ後方で触知出来ます。
B:短腓骨筋腱は、外果の遠位で触知出来ます。
第3腓骨筋の触診
図引用元:https://musculoskeletalkey.com/11-muscles-of-the-leg-and-foot/
・第3腓骨筋腱は、長趾伸筋腱の小趾へ行く腱の外側(第5中足骨に繋がる腱)で触知出来ます。
・腱は見えない可能性があるので、繊維方向に対して垂直に触診する必要があります。
腓骨筋の触診に関しては下記の動画をご参照ください。
腓骨筋の筋力評価(MMT)
・腓骨筋の筋力テストでは、座位にて足関節は中間位とし、仰臥位でもテスト可能です。
・前足部の背外側縁に手を当てて、足部外がえしに対して抵抗をします。
5 Normal:最大限の抵抗で足部外がえしさせ、最終域を維持できる
4 Good:中程度の抵抗で足部外がえしさせ、最終域を維持できる
3 Fair:重力以外の抵抗なく、最終域を維持できる
2 Poor:可動域の一部のみ動かすことができる
1 Trace:最小限の収縮を蝕知できる
0 Zero:収縮が触知できない
腓骨筋の治療
筋力強化
・腓骨筋の筋力強化のための一般的な運動は、セラバンドを使用して行われます。
・セラバンドを対象足部に巻き、非対象足部の足裏から通って手でセラバンドを持ち、足部外がえし(外反)を行います。
図引用元:https://mobilephysiotherapyclinic.net/peroneal-muscles-anatomy/
視床出血後1年経過した症例の円滑な歩行に向けたセラピーで、外反を伴った背屈を誘導するための腓骨筋群などに介入した下記の動画をご参照ください。
ストレッチ
・腓骨筋のストレッチは、タオルなどを用いて足部内がえし+背屈でストレッチされます。
図引用元:https://learnmuscles.com/glossary/fibularis-longus-stretching/
・座った状態で、足を反対側の膝の上に乗せて足首を手前に引き、下腿外側の腓骨筋群をストレッチします。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)