【2023年最新】長趾屈筋の起始停止と作用・神経は?筋トレ、ストレッチ、自主トレ、評価、リハビリ論文サマリーまで
長趾屈筋の概要
・長趾屈筋は、下腿後区画の深層筋群の一部です。
・長趾屈筋は、下腿の遠位では後脛骨筋腱の上方をまたぎ、足根管のレベルでは後脛骨筋腱の後方を通過します。
・長趾屈筋は、脛骨後面より起始し、短趾屈筋の腱裂孔を通過し、第2-5趾の末節骨底に停止します。
長趾屈筋の起始停止
図引用元:visible bodyより
起始:脛骨後面
停止:第2-5趾の末節骨底
*足関節底屈位では、足趾の屈曲動作を行いにくくなります。
長趾屈筋の神経支配
図引用元:visible bodyより
・脛骨神経(L5、S1、S2)
・脛骨神経は、坐骨神経の2つの筋枝のうち、より大きな末端枝であり、下腿と足部の筋肉の神経支配をします。
・脛骨神経の膝窩枝は後脛骨筋、上脛腓関節、下脛腓関節、脛骨、脚の骨間膜を支配します。
・脛骨神経の後枝は後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、ヒラメ筋の深部を支配します。
長趾屈筋の血管栄養
図引用元:visible bodyより
・後脛骨動脈
・後脛骨動脈は、浅層のヒラメ筋と深層の後脛骨筋や長趾屈筋に挟まれて下降します。
長趾屈筋の機能・臨床的意義
図引用元:visible bodyより
・第2-5趾屈曲
・足関節底屈
・足部の回外(内反)
・下腿の後傾(足部が固定された状態の場合)
・足部が固定された場合には、長趾屈筋は下腿を後傾させ、足部アーチを挙上させます。
・長趾屈筋は、立位で地面を掴むことによってバランスを取るのを助けます。
・また、歩行・ランニング・ジャンプの推進期において、長趾屈筋はつま先を地面に向かって引き下げ、つま先離地の際に最大限の力を発揮し推進力を生みます。
脳卒中患者の足部内反に関与する筋
・脳卒中患者の歩行では、歩行開始動作で足部内反筋群の筋緊張が亢進することが多いです。
・それにより麻痺側踵接地や麻痺側下肢の振り出しが難しくなり、代償動作が生じてしまいます。
・足部内反筋群の筋緊張が亢進する原因のうち、腓骨筋群の筋緊張低下に伴う足部内反筋群の過活動や二次的な問題とした足部内反筋群の短縮が影響します。
・そのため、腓骨筋群の影響もしくは足部内反筋群の影響のどちらの原因が強いのかを評価する事は非常に重要です。
・足部内在筋の一つである長趾屈筋は、足部内反作用に加えて第2-5趾屈曲作用が主であり、足部内在筋が機能不全の場合に足趾屈曲による代償動作が生じ、それにより長趾屈筋の過活動を伴い、更に足部内反を助長する場合があります。
・筋の短縮に対してはストレッチ、周辺組織の滑走障害に対しては、長趾屈筋の収縮を利用して周辺組織との滑走性の改善が有効です。
*歩行時の足部内反に対する治療方法に関しては下記の動画をご参照ください。
「内反歩行」の改善 脳卒中発症後,介入1年で復職 自費/保険外 東京
足部内在筋の機能不全による外在筋の代償に関して
・麻痺や短縮などの影響で足部内在筋群が機能不全に陥っている脳卒中患者の場合、まずは立位や重心移動のなかで足趾が代償せずに支持できるような足部アーチの確保が必要です。
・足部内在筋は短母趾屈筋・母趾外転筋・短趾伸筋があり、足部外在筋は前脛骨筋・ヒラメ筋・長母趾屈筋・長趾屈筋があります。
・足部アーチにおいて重要な役割を果たす短趾屈筋や虫様筋の活動を促す際は、外在筋である長趾屈筋の代償を伴いやすいです。
・脳卒中患者に多く見受けられる足趾が曲がった(Crow toe)は、外在筋群の代償や過緊張の影響が大きいです。
・片脚立位テストでは、内在筋群の評価が可能で、足趾が過剰に屈曲する場合は外在筋の代償が生じています。
図1:足部内在筋の活動と代償パターン
図引用元:脳卒中の動作分析 金子唯史 著
*足部内在筋への促通などの治療方法に関しては下記の動画をご参照ください。
【リハビリ変化】装具なし!(金属支柱)・杖なし!歩行を目指す 脳梗塞/脳出血/脳卒中
長趾屈筋の評価
長趾屈筋の触診
図引用元:https://musculoskeletalkey.com/11-muscles-of-the-leg-and-foot/
・長趾屈筋の近位部は腓腹筋、ヒラメ筋の下を走行しているため直接触診することは困難です。
・しかし、遠位部では長趾屈筋腱の触診が足根管の後脛骨動脈の拍動を基準に前方で触れる事ができます。
・第2,3趾の他動伸展に伴い長趾屈筋腱の緊張が触れられます。
図引用元:basicmedicalkey.comより
*長趾屈筋の触診に関しては下記の動画をご参照ください。
脳卒中×触診【足関節内反 後脛骨筋ー長趾屈筋ー長母趾屈筋ー前脛骨筋ー長母趾伸筋】
長趾屈筋の筋力評価(MMT)
・長趾屈筋の筋力テストでは、座位にて足はセラピストの膝に乗せる、あるいは仰臥位で行われます。
・セラピストの手は前足部を固定するために指を足背に回し、親指をPIPやDIPまたは母趾のIPの下面に当てます。
・抵抗位置:第2-5趾の末節骨の下に当て抵抗を加える
・動作:第2-5趾屈曲
5 Normal:最大限の抵抗で第2-5趾屈曲させ、最終域を維持できる
4 Good:中程度の抵抗で第2-5趾屈曲させ、最終域を維持できる
3 Fair:重力以外の抵抗なく、最終域を維持できる
2 Poor:可動域の一部のみ動かすことができる
1 Trace:最小限の収縮を蝕知できる
0 Zero:収縮が触知できない
長趾屈筋の治療
筋力強化
・長趾屈筋の筋力強化のための一般的な運動は、タオルやセラバンドを使用して行われます。
・座位または立位で足の下にタオルを置き、足趾でタオルを握ってもらい、床に沿ってタオルを移動させます。
図引用元:https://mobilephysiotherapyclinic.net/peroneal-muscles-anatomy/
・また、セラバンドを第2-5趾に巻いて、抵抗に対して第2-5趾の屈曲をすることで鍛えます。
・さらに、芝生や砂地などの異なる路面を歩いたり走ったりすることで、さらに長趾屈筋の機能を高めることができます。
ストレッチ
・長趾屈筋のストレッチは、第2-5趾を伸展させ、足首を背屈させることによって行うことができます。
図引用元:muscletherapyaustralia.com.
・前方に手を伸ばすのが困難な場合は、足趾を伸展させた状態で片膝を着いてストレッチする方法もあります。
図引用元:https://learnmuscles.com/glossary/fibularis-longus-stretching/
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)