FIMのメリットとデメリットとバーセルインデックスBarthel Indexとの違いは?
FIMとは?
日常活動を実行する際の個人の自立レベルを評価する広く使用されている評価ツールです。リハビリテーションの設定で患者の進行状況を追跡し、機能状態を決定するためによく使用されます。 FIMは、1(全介助)から7(完全な自立)までの尺度で評価される18の項目で構成されています。項目は、運動と認知の2つのカテゴリに分かれています。
完全自立(7点)
介助者や手助けが全く必要としないレベル。
修正自立(6点)
介助者や手助けは不要。しかし時間を要し、また安全面で配慮が必要。また投薬や自助具、装具などが必要な場合も含まれる。
監視・準備(5点)
手助けは不要だが、介助者による監視や指示、もしくは準備や促しが必要。
最小介助(4点)
介助者による手助けが必要。ただし動作(活動)全体のうち75%以上は自身の能力で行う。
中等度介助(3点)
介助者による手助けが必要。動作(活動)全体のうち50%~75%は自身で行うことができる。
最大介助(2点)
介助者による手助けが必要。動作(活動)作全体のうち25%~50%は自身で行うことができる。
全介助(1点)
介助者による手助けが必要。動作(活動)全体のうち25%未満しか行うことができない。
FIMは13の日常生活からなる運動項目と、5つの認知項目の合計18項目から構成
13の運動項目の詳細は以下の通りです。この動作の際に必要な介助量が採点基準となる。
- 食事:食物を口に運び、噛み、飲み込むまでの動作
- 整容:口腔ケアや髪を整え、手や顔を洗う動作
- 清拭:風呂・シャワーで背中以外の首から下を洗う動作
- 上衣更衣:腰よりも上の更衣や、義肢装具を装着する動作
- 下衣更衣:腰よりも下の更衣や、義肢装具を装着する動作
- トイレ動作:衣服の上げ下げ、排泄後の清潔さ、生理用品などの使用
- 排尿管理:器具やお薬の使用を含む、排尿の管理など
- 排便管理:器具やお薬の使用を含む、排便の管理など
- 移乗(ベッド・椅子・車椅子):立ち座り動作を含む、各場所間の乗り移り
- 移乗(トイレ):便器への(からの)乗り移り
- 移乗(浴槽・シャワー):浴槽・シャワー室への(からの)乗り移り
- 移動(歩行・車椅子):屋内での歩行・または車椅子での移動
- 階段:12~14段程度の階段における昇降
5つの認知項目は、以下の内容が対象です。
- 理解:見聞きによるコミュニケーション時に内容を理解する
- 表出:言語や非言語での表現する
- 社会的交流:他者との交流や社会的状況へ順応する
- 問題解決:生活上での問題を解決したり、適切な決断をする
- 記憶:生活に必要な情報を記憶する
FIMのメリットデメリット
FIM(Functional Independence Measure:)の利点と欠点
利点 | 欠点 |
---|---|
1. 総合的な評価: FIMは、18項目にわたって個人の身体的および認知的機能能力を評価し、独立性を広く評価することができます。 | 1. 主観性: 評価者の解釈に影響を受ける可能性があり、異なる評価者間で一貫性が欠ける場合があります。 |
2. 広く受け入れられ、標準化されている: FIMは、リハビリテーション設定で広く使用される認識されたツールであり、患者の比較や機関間での一貫したデータ収集が可能になります。 | 2. 限られた感度: FIMは、軽度の改善や低度の障害を持つ場合など、機能能力の微細な改善や悪化を検出できない場合があります。 |
3. 時間経過にわたる進行状況を追跡: FIMは、リハビリテーションプロセス中に進行状況と機能的改善を監視するために複数の時点で使用できます。 | 3. 独立性への焦点: FIMは、社会的サポートや補償戦略の重要性を見落とし、個人の生活の質を向上させることができます。 |
4. 客観的かつ数量化された測定: FIMは、異なる個人や設定間で進行状況と結果を比較するために使用できる客観的な数値スコアを提供します。 | 4. 限られた範囲: FIMは、感情的な健康状態や職業的能力など、すべての機能領域を評価するわけではなく、個人の全体的な機能状態の完全なイメージを提供することができない場合があります。 |
5. 目標設定と計画を促進する: FIMは、特定の困難な領域を特定し、改善を測定することによって、治療計画と目標設定をガイドするのに役立ちます | 5. 時間がかかる: FIMの実施とスコアリングは時間がかかる場合があり、正確で一貫した結果を保証するために、評価者に重要なトレーニングが必要になる場合があります。 |
BI:Berthel Indexとの違いは?
FIM(Functional Independence Measure:)とBarthel Indexは、どちらも患者の日常生活動作(ADLs)における機能能力を評価するためのツールです。しかし、評価される項目数、採点方法、焦点領域など、いくつかの点で違いがあります。以下に、両者の比較を示します。
項目 | FIM | Barthel Index |
---|---|---|
正式名称 | Functional Independence Measure | Barthel Index |
目的 | 日常生活動作における患者の機能能力を評価するため | 基本的な日常タスクを行う際の患者の独立性を測定するため |
項目数 | 18 | 10 |
採点方法 | 7点法 (1 = 完全な介助; 7 = 完全な自立) | 重み付け採点法 (0 = 完全な介助; 100 = 自立) |
評価される領域 | 1. 自己ケア 2. 括約筋制御 3. 移動 4. 歩行 5. コミュニケーション 6. 社会的認知 | 1. セルフケア 2. 移動 |
焦点 | コミュニケーションや社会的認知を含む幅広い機能能力に焦点を当てている | 主に移動とセルフケアに焦点を当てている |
リハビリテーションでの使用 | 脳卒中や脊髄損傷患者などのリハビリテーション環境でよく使われている | 脳卒中のリハビリテーションや高齢者ケアでよく使われている |
要するに、FIMとBarthel指数はどちらも日常生活動作の機能能力を評価するために使用されますが、FIMは機能能力の範囲が広く、採点方法も詳細です。一方、Barthel指数は主に移動とセルフケアに焦点を当てており、脳卒中患者や高齢者ケアなど特定の患者層に適しています。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)