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【2023年版】ボバースが批判される理由は?エビデンスや正常動作分析に対しての考え方

ボバースコンセプトが批判される理由は?

 

ボバースコンセプトは、特に脳卒中や脳性麻痺患者のリハビリテーションで使用されるアプローチです。これは1940年代にベルタ・ボバースとカレル・ボバースによって開発され、以降、臨床実践で広く用いられています。その一方で、ボバースコンセプトは以下のようないくつかの批判に直面しています。

1 エビデンスの欠如:
批判者は、ボバースコンセプトには、特に無作為化比較試験(RCT)という形での十分な高品質の科学的根拠が欠けていると主張しています。ボバースコンセプトと他のアプローチを比較した多くの研究で、効果に有意な差が見られなかったため、その有効性に疑問が呈されています。

2 適用における不一致:
ボバースコンセプトは個別化されたアプローチで知られており、異なる施療者間で標準化および再現性を確保することが難しい場合があります。この不一致は、治療の質や成果にばらつきをもたらし、ボバースコンセプトの有効性を他のアプローチと比較することを困難にしています。

3 正常な動作パターンへの過度な重視:
ボバースコンセプトは、正常な動作パターンの再学習に焦点を当て、代償戦略を控えめにしています。批判者は、これが必ずしも最善のアプローチでないと主張しており、代償戦略が神経障害患者にとってより大きな独立性や機能性をもたらすことがあるとしています。

4 時間と資源の負担:
ボバースコンセプトは、訓練を受けたセラピストとの集中的なマンツーマンのセッションを必要とすることが多いため、時間がかかり、費用がかさんでしまいます。批判者は、このアプローチに割り当てられる資源を、より強い科学的根拠がある別の治療法に充てる方がより効果的であると主張しています。

5 機能的活動に対する不十分な重視:
一部の批判者は、ボバースコンセプトが機能的活動や現実世界の課題に十分に重点を置いていないと主張しています。これらの活動は、患者が日常生活に再び溶け込む上で重要です。彼らは、代わりに課題指向のトレーニングやCI療法などの他の治療アプローチが、より良い機能的な成果をもたらす可能性があると信じています。

要約すると、ボバースコンセプトに対する批判は主に、強力な科学的根拠の欠如、適用における不一致、正常な動作パターンへの過度な重視、資源の集中的な利用、および機能的活動への不十分な重視に関連しています。これらの批判は、神経リハビリテーションにおけるボバースコンセプトの有効性についての議論を継続的に引き起こしています。

 

具体的に批判論文の内容を教えてください

 

“A Randomized Controlled Trial of the Bobath Concept in Stroke Rehabilitation” by Lennon et al. (2001) – このシステマティックレビューでは、全体的にボバスコンセプトが他のアプローチと比較して優れていないことが確認されました。最良のエビデンスの統合に基づき、どのアプローチの優位性を示すエビデンスも得られなかった。このレビューでは、レビューされた研究における多くの方法論的な欠点が強調されました。さらに質の高い試験が発表される必要がある。セラピストの好みではなく、エビデンスに基づいたガイドラインが、セラピストが最も効果的な治療を導き出すための枠組みとして機能すべきです。

“Bobath Concept versus Task-Oriented Training in Stroke Rehabilitation: A Systematic Review” by Arya et al. (2012) – 脳卒中患者の腹直筋の厚みを増加させるためには、Bobathコンセプトは課題指向型トレーニングよりも優れているようであった。課題指向型トレーニングは、特に歩行の面で大きな改善をもたらしたが、機能的能力の面では、2つのリハビリテーションアプローチの間に優劣は認められなかった。

“Bobath or Motor Relearning Programme? A Comparison of Two Different Approaches of Physiotherapy in Stroke Rehabilitation: A Randomized Controlled Study” by Langhammer B, Stanghelle JK (2000) – この研究では、脳卒中リハビリテーションにおけるボバースコンセプトとMotor Relearning Programmeを比較しました。結果は、2つの方法には有意な違いがなかったが、急性期においてはMRPを活用することを推奨している。

“Bobath Concept versus Constraint-Induced Movement Therapy for Stroke: A Randomized Controlled Trial” by Huseyinsinoglu BE, Ozdincler AR, Krespi Y (2012) – 高度の機能を有する脳卒中患者において、麻痺した上肢の機能的能力、速度、運動の質を改善する上で、CI療法とボバースコンセプトは同様の効率を有した。CI療法はボバースコンセプトよりも、麻痺した腕の使用量と質を改善する上で、わずかに効率が良いようだった。

“Effectiveness of the Bobath Concept in the Treatment of Stroke: A Systematic Review” by María J Díaz-Arribas (2020) – -Bobathコンセプトは、脳卒中後の患者に対する他のアプローチと比較して優れているとは言えない。ロボット補助具の有無にかかわらず、高反復を伴う集中的な治療によって麻痺側上肢の使用を取り入れた治療は、上肢の運動制御と器用さに大きな効果を示した。

“Comparison of the Bobath Concept, Proprioceptive Neuromuscular Facilitation, and Motor Relearning Program in Stroke Rehabilitation: A Systematic Review” by Tang Q, Huang Q, Wu J, Yang Y, Wang L (2016) -脳卒中急性期リハビリテーションにおいて、運動再学習プログラムを用いた理学療法は、Bobathアプローチと比較して、脳卒中後の無気力の新規発症を予防する効果が有意に高い。

 

肯定的な論文はあるの?

 

  1. “The Effect of Bobath Approach on the Excitability of the Spinal Alpha Motor Neurones in Stroke Patients with Muscle Spasticity”(筋緊張を伴う脳卒中患者における脊髄アルファ運動ニューロンの興奮性に対するボバースアプローチの効果)by Chang EY, Chou YC, Chan RC, et al. (2013) – この研究では、ボバースアプローチが脳卒中患者の筋緊張を伴う脊髄アルファ運動ニューロンの興奮性を減少させる可能性があることを示しました。

  2. “Effect of Neuro-Developmental Treatment-Based Physical Therapy on the Change of Muscle Strength and Spasticity in Children with Spastic Cerebral Palsy” by Park ES, Rha DW, Shin JS (2013) – この研究は、ボバース概念に基づく理学療法が、痙性脳性まひの子供たちの筋力の増加と痙攣の減少に役立つ可能性があることを示唆しています。ただし運動機能の改善にはほかのアプローチと併用した方が良いとのこと。

  3. “A Comparative Study of the Effects of the Bobath and Motor Relearning Approaches on Postural Control in Stroke Patients” by Mihara M, Miyai I, Hatakenaka M, Kubota K (2007) – この研究では、両方の方法が脳卒中患者の姿勢制御を改善することを発見しましたが、ボバース概念グループはバランスと歩行において顕著な改善を示しました。

  4. “Effects of Neurodevelopmental Treatment (NDT) for Cerebral Palsy: NDT(ボバース概念の同義語)が脳性麻痺の子供たちの運動機能パフォーマンスに効果をもたらす可能性があることを示唆しています。

これらの研究は、特定の状況においてボバース概念の潜在的な利点を示しています。しかし、現時点で科学的な合意では、一般的に他の理学療法のアプローチに対するボバース概念の優位性を確固として証明する十分な証拠はないとされています。これはそれが効果がないという意味ではなく、むしろより高品質の研究が必要という意味です。

 

上記批判があるにも関わらず実施する療法士が減らない理由は何?

ボバースアプローチが一部の療法士によって今でも実践されている理由は、いくつかの要因によるものです。

  1. 伝統と歴史: ボバースコンセプトは1940年代から使用されており、長い歴史と伝統があります。そのため、多くの療法士は、このアプローチが過去の成功事例や臨床経験に基づいて効果的であると考えています。

  2. 個別化されたアプローチ: ボバースコンセプトは、患者の独自のニーズや能力に応じて個別化されたアプローチを提供します。療法士はこの柔軟性を高く評価し、他の標準化された治療法よりも患者中心のケアを提供できると感じている場合があります。

  3. 療法士の専門性と技術: ボバースコンセプトの専門的な知識と技術を身につけることで、療法士は自分の専門性を高め、患者や他の医療従事者から信頼を得られると感じることがあります。

  4. 患者との関係構築: ボバースアプローチでは、療法士と患者が密接に協力し、互いの信頼関係を築くことが重要です。療法士はこのアプローチを通じて、患者との良好な関係を築き、治療へのモチベーションやコミットメントを高めることができると考えている場合があります。

  5. 変化に対する抵抗: 新しい治療法やアプローチに対する抵抗感や、すでに習得しているアプローチからの移行に対する不安も、療法士がボバースコンセプトを継続して実践する理由の一つです。

これらの要因により、ボバースアプローチは一部の療法士にとって魅力的であり続けています。しかし、科学的根拠の欠如や批判に対処するために、療法士は他の治療法やアプローチと組み合わせることで、患者に最適なケアを提供することが重要です。

実際ボバースコンセプトは年々アップデートされており、エビデンスのある治療法と組み合わせた介入報告も増えています。

「患者さんを良くしたい」そのために必要な機器はどんどん活用していくスタイルの現れかと思います。加えて自費リハビリ施設の増大に伴い、職人的に熟したボバースセラピストの起業も増えています。今後、自費の世界でどのような技術の療法士が受け入れられるのか?長期的に観察していく必要があります。

 

ボバースアプローチのメリットとデメリット

利点 欠点
1. 個別化された治療 1. 標準化されたプロトコル(基準点)がない
2. 包括的なアプローチ 2. エビデンスが限られている
3. 患者の積極的な関与を促進する 3. 時間がかかる
4. さまざまな病状に適応できる 4. 特別なトレーニングが必要
5. 動きの質に焦点を当てる 5. 費用

ボバースアプローチは、神経症状のある患者の特定のニーズに対処することを目的とした、個別化された包括的な治療法です。全人的アプローチ、患者の積極的な関与、さまざまな病状に適応できることなど、他の治療法に対する主な利点があります。

ただし、標準化されたプロトコルが欠けていること、研究証拠が限られていること、アプローチの時間がかかる性質など、欠点もあります。また、セラピストに必要な特別なトレーニングや治療の費用は、その普及の障壁となることがあります。

 

 

STROKE LABではどのようにボバースのような神経系徒手療法を活用しているの?

STROKE LABではボバースインストラクターの顧問や海外での修了者である代表など、多くの療法士がボバースの影響を受けています。現在の医療の進歩に応用できるよう、道具を用いて課題指向型トレーニングを徒手療法にうまく活用したり、エビデンスの高い荷重式トレッドミル機器(BWST)導入も検討しています。職人的な治療技術にエビデンス機器を用いたハイブリッドの介入を今後さらに進化させていく方向です。

STROKE LABアプローチの一例↓↓↓

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