【2023年版】AMPS 作業療法評価の実施手順とメリット・デメリットは? アンプス評価
Assessment of Motor and Process Skills (AMPS)とは?
AMPSは、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、Dr. Anne Fisherとその同僚たちによって開発されました。Dr. Fisherは作業療法士であり、作業療法分野に大きな貢献をした学者です。
AMPSの開発は、作業療法実践フレームワークと人間作業モデル(MOHO)に基づいています。これらの基盤は、健康と幸福における行動の重要性、そして個人的な要素、環境的要素、タスクに関連する要素の相互作用によって職業的なパフォーマンスが影響を受けるという理解を強調しています。
Dr. Fisherは、人々の作業的パフォーマンスの質を評価できる信頼性と有効性のあるツールが必要だと認識しました。彼女は、個々の運動や認知タスクを実行する能力だけでなく、実際に日常のタスクをどのように遂行できるかを評価することの重要性を認識していました。
そのため、彼女はAMPSを開発しました。これは、選ばれた、馴染みのある、関連性の高いタスクの実行中に観察される人々の運動スキルとプロセススキルを評価するツールです。AMPSは、特定の欠陥や能力だけに焦点を当てるのではなく、人々の作業的パフォーマンス全体を見るためのツールとして設計されています。
年月を経て、AMPSは継続的な研究と臨床経験に基づいて更新・改良されてきました。また、多くの言語に翻訳され、世界中の作業療法士に使用されています。これは、その信頼性、有効性、文化的適応性を示しており、Dr. Fisherの仕事が作業療法分野に与えた大きな影響を強調しています。
AMPSの大まかな概要は以下の通りです:
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導入: 療法士は、評価対象者にAMPSの目的とプロセスを説明します。
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タスクの選択: 評価対象者は、自分が普段行う、馴染みのある2つのタスクを選びます。タスクは、その人の文化、習慣、興味に基づいて大いに変わることができます。
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タスクの実行: 評価対象者がタスクを実行し、その間、作業療法士が観察します。安全上の理由がない限り、療法士はこのプロセスで介入や支援を行いません。
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スコアリング: 作業療法士は、16の運動スキル項目と20の処理スキル項目に基づいて、評価対象者のパフォーマンスを採点します。各項目は4点の序数尺度で採点されます。
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スコアの解釈: スコアはコンピュータープログラムに入力され、評価対象者の運動スキルと処理スキルの質のスケールスコアを計算します。これらのスコアは、その人の年齢、性別、文化グループの基準と比較することができます。
実施手順は?
AMPSの実施手順は以下の通りです:
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タスクの選択: まず、評価対象者が自分にとって関連性のある、馴染みのあるタスクを選びます。これは、食事の準備から、自己ケアのタスク、例えば着替えなど、何でも可能です。
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パフォーマンスの観察: 次に、作業療法士が評価対象者が選んだタスクを実行する様子を観察します。この間、作業療法士は介入したり、ガイドしたりしません。
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スキルの評価: 作業療法士は、観察に基づいて評価対象者の運動技能とプロセス技能を評価します。
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運動技能: これらは身体的な行動を含み、姿勢、機動性、力、エネルギー、器用さを含みます。
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プロセス技能: これらはタスクの実行に関与する認知的、統括的な機能を含み、ペーシング、シーケンシング、注意力、道具や材料の選択、問題が発生したときの行動の適応を含みます。
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ラッシュ分析: 生のスコアは、Rasch分析という統計的方法を使用して線形測定値に変換されます。これにより、結果のより意味のある解釈が可能になります。各スキルは、”competently performs”(スコア4)から”does not perform”(スコア1)までの4点の序数尺度で評価されます。
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スコアの解釈: 運動技能とプロセス技能のスコアは別々に提示されます。それぞれのスコアは標準と比較され、スコアが高いほどパフォーマンスが良いことを示します。一般的に、1.0未満のスコアは日常生活活動における重大な制限を示し、1.0から2.0の間のスコアは改善の可能性を示します。
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運動技能スケール: スコアが高いほど、身体的なパフォーマンスが良いことを示します。
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プロセス技能スケール: スコアが高いほど、認知的・統括的なパフォーマンスが良いことを示します。
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- 介入計画の作成: 作業療法士は、これらのスコアを使用して、評価対象者のニーズに合わせた介入計画を作成します。これには、特定のモーターまたはプロセススキルを改善する戦略、環境への適応、またはタスク自体の変更が含まれるかもしれません。
AMPSのスコアリングシステムは、評価対象者の作業的パフォーマンスを詳細に、客観的に、そして標準化された方法で測定するためのものです。これは、個々の人が日常生活の活動を実行する能力を改善するためにサポートや介入が必要な特定の領域について、貴重な洞察を提供します。
AMPSは特定の知識とスキルを必要とするため、訓練を受けた作業療法士がAMPSを実施し、適切に解釈することが必要であることを覚えておいてください。
メリット・デメリットは?
長所:
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実用性: AMPSは評価対象者が選んだ日常生活活動(例:料理、着替え、掃除など)に基づいています。これにより、評価は実用的であり、個々の実際の状況にどう対応するかについての洞察を提供します。
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文化的な配慮: AMPSは特定の文化や地域に偏りません。評価されるタスクは、評価対象者の文化的な文脈と日常生活に基づいて選ばれるため、ユニバーサルなツールと言えます。
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標準化と信頼性: AMPSは標準化された評価であり、広範に研究されています。これにより、人の運動スキルと処理スキルの信頼性と妥当性のある測定が提供されます。
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詳細な分析: AMPSは運動スキルと処理スキルの両方の詳細な分析を提供する点で独特です。これにより、セラピストは日常生活活動を行う能力に影響を与える問題を理解できます。
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さまざまな条件で使用可能: AMPSは、身体的、心理的、認知的障害を持つ人々を含む幅広い臨床集団で使用できます。この汎用性は大きな利点です。
短所:
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特別なトレーニングが必要: AMPSを効果的に使用するためには、セラピストが特定のトレーニングとキャリブレーションを受ける必要があります。これは一部の専門家にとって障壁になるかもしれません。
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時間がかかる: AMPSは評価と結果の分析の両方で時間がかかるプロセスです。これは、迅速な評価が必要な環境では適していないかもしれません。
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特定の障害の検出における制限: AMPSは機能能力の良好な全体的な評価を提供しますが、より特定的な評価に比べて、特に微妙な障害の検出には効果的でない場合があります。
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重度の障害に対してはあまり効果的ではない: 重度の障害を持つ人に対しては、AMPSが提供する追加の有益な情報は限られているかもしれません。その制限はしばしば明らかであるためです。
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潜在的な偏見: AMPSは偏りのない設計を目指していますが、セラピストの主観的な判断が評価に影響を与える可能性があります。
長所 | 短所 |
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1. 実用性:評価対象者が選んだ日常生活活動に基づく | 1. 特別なトレーニングが必要:AMPSを効果的に使用するためには、セラピストが特定のトレーニングとキャリブレーションを受ける必要がある |
2. 文化的な配慮:特定の文化や地域に偏りのない評価 | 2. 時間がかかる:評価と結果の分析の両方で時間がかかる |
3. 標準化と信頼性:信頼性と妥当性のある測定が提供される | 3. 特定の障害の検出における制限:特に微妙な障害の検出には効果的でない場合がある |
4. 詳細な分析:運動スキルと処理スキルの両方の詳細な分析 | 4. 重度の障害に対してはあまり効果的ではない:重度の障害を持つ人に対しては、提供する追加の有益な情報が限られている |
5. さまざまな条件で使用可能:幅広い臨床集団で使用できる | 5. 潜在的な偏見:セラピストの主観的な判断が評価に影響を与える可能性がある |
結論として、AMPSにはいくつかの制限がありますが、その強みは、人間中心のアプローチ、文化的感度、そして運動および処理スキルの詳細な分析にあります。いずれの評価にも言えることですが、セラピストはこれらの強みと弱みを理解し、個々のニーズと状況に基づいて最も適したツールを選ぶことが重要です。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)