【2023年版】検査値・血液データ・リハビリ必須項目は!?リスクを踏まえた介入 療法士・看護師
リハビリテーションで踏まえておくべき検査データの一覧
マーカーのフルネーム | 略語 | 簡単な役割 | 一般的な正常値 |
---|---|---|---|
ヘモグロビン | Hb | 酸素を運搬する | 男性: 13.5-17.5 g/dL 女性: 12.0-15.5 g/dL |
ヘマトクリット | Hct | 血液中の赤血球の割合を示す | 男性: 38.8-50.0% 女性: 34.9-44.5% |
C反応性蛋白 | CRP | 炎症や感染を示す | <10 mg/L |
赤血球沈降率 | ESR | 炎症の存在を示す | 男性: <15 mm/hr 女性: <20 mm/hr |
プロカルシトニン | PCT | 重症の細菌感染を示す | <0.1 ng/mL |
アルブミン | Alb | 栄養状態と肝機能を示す | 3.5-5.5 g/dL |
プレアルブミン | PA | 栄養状態を示す | 15-35 mg/dL |
ナトリウム | Na | 電解質バランスを維持する | 135-145 mEq/L |
カリウム | K | 電解質バランスを維持する | 3.5-5.0 mEq/L |
クロライド | Cl | 電解質バランスを維持する | 98-107 mEq/L |
血液尿素窒素 | BUN | 腎機能を示す | 7-20 mg/dL |
クレアチニン | Cr | 腎機能を示す | 男性: 0.74-1.35 mg/dL 女性: 0.59-1.04 mg/dL |
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ | AST | 肝機能を示す | 10-40 U/L |
アラニンアミノトランスフェラーゼ | ALT | 肝機能を示す | 7-56 U/L |
プロトロンビン時間 | PT | 血液の凝固時間を示す | 11.0-13.5 秒 |
国際標準化比 | INR | 血液の凝固能力を示す | 0.8-1.2 |
活性化部分トロンボプラスチン時間 | aPTT | 血液の凝固時間を示す | 30-40 秒 |
トロポニンI | TnI | 心筋損傷を示す | <0.03 ng/mL |
トロポニンT | TnT | 心筋損傷を示す | <0.01 ng/mL |
クレアチンキナーゼ-MB | CK-MB | 心筋損傷を示す | <5 ng/mL |
YouTube 動画で確認
上記検査値とリハビリテーションへのリスクは?
-
ヘモグロビン (Hb) および ヘマトクリット (Hct):低ヘモグロビンおよびヘマトクリットは、酸素を運搬する能力が低下していることを示し、これにより筋肉疲労や心臓への負担が増加する可能性があります。
-
C反応性蛋白 (CRP) と 赤血球沈降率 (ESR):これらのマーカーが高い場合、体内に炎症や感染が存在している可能性があります。これらの状態は、リハビリテーションの効果を低下させ、回復を遅らせる可能性があります。
-
アルブミン (Alb) と プレアルブミン (PA):これらの値が低い場合、栄養不足を示しており、筋肉の回復と機能向上が妨げられる可能性があります。
-
ナトリウム (Na)、カリウム (K)、クロライド (Cl):これらの電解質の異常は、筋肉の機能障害、不整脈、脱力感などを引き起こす可能性があります。
-
血液尿素窒素 (BUN) と クレアチニン (Cr):これらの腎機能マーカーが高い場合、腎機能不全を示し、これにより薬物の代謝や排泄が影響を受け、副作用のリスクが増加する可能性があります。
-
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) と アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT):これらの値が高い場合、肝臓の損傷を示し、薬物の代謝に影響を及ぼす可能性があります。
-
プロトロンビン時間 (PT)、国際標準化比 (INR)、活性化部分トロンボプラスチン時間 (aPTT):これらの値が高い場合、出血リスクが高まり、特に手術や侵襲的手技を伴うリハビリテーションで問題となる可能性があります
- トロポニンI (TnI)、トロポニンT (TnT)、クレアチンキナーゼ-MB (CK-MB):これらの心筋損傷マーカーが高い場合、心筋梗塞や他の心疾患が存在する可能性があり、これらは運動トレーニングや他のリハビリテーション活動の適応性を制限します。心臓への過度のストレスは、重大な心臓イベントを引き起こす可能性があります
他にも踏まえておくべきデータは?
血栓リスクや骨転移に伴う骨折リスクを評価するためには、以下のような追加の血液検査が有用である可能性があります:
-
D-ダイマー:D-ダイマーは血栓形成とそれに続くフィブリン分解の産物であり、高値は深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)の可能性を示す可能性があります。しかし、高齢者や炎症性疾患、がんなど他の状態でも上昇するため、診断には臨床的な文脈が重要です。
-
アルカリフォスファターゼ (ALP):ALPは骨形成マーカーであり、骨転移や骨形成異常がある場合に上昇する可能性があります。
-
カルシウムとリン:これらの電解質は骨の健康と関連しており、その異常は骨転移や骨疾患の可能性を示すことがあります。
-
パラチオレン:このホルモンはカルシウムとリンのバランスを調節し、そのレベルの異常は骨の健康に影響を及ぼす可能性があります。
-
ビタミンD:ビタミンD不足は骨の弱さと関連しており、骨折リスクを高める可能性があります。
これらのテストは全てのリハビリテーション患者にとって必要なわけではなく、個々の患者の状況やリスク要因に基づいて適用されるべきです。また、これらのテスト結果は医療プロフェッショナルによって評価され、解釈されるべきです。
新人療法士が陥りやすいミスは何?
リハビリテーションの分野では、定期的な血液検査の重要性を認識することが重要です。これらのデータを無視すると、さまざまな介入失敗につながる可能性があります。新人セラピストが遭遇する可能性のあるいくつかの例を挙げてみましょう:
-
貧血患者への過度の負荷:ヘモグロビンとヘマトクリット値は、血液の酸素運搬能力を反映しています。これらの値が低い場合(貧血を示す場合)、患者の運動耐性は低下する可能性があります。新人セラピストは、これらの患者に過度の負荷をかけ、不必要な疲労や心血管へのストレスを引き起こす可能性があります。
-
栄養不良の兆候を見落とす:アルブミンとプレアルブミンは栄養状態を示す指標です。これらの値が低いと、栄養不良を示す可能性があり、これは治癒と筋肉機能を損なう可能性があります。これを考慮しないと、患者はリハビリテーションプロセスから十分に効果を得るための必要なリソースを持たない可能性があり、リハビリの進歩が遅くなったり、さらには悪化したりする可能性があります。
-
炎症や感染の兆候を無視する:C反応性蛋白(CRP)や赤血球沈降率(ESR)の上昇は、全身性の炎症や感染を示す可能性があります。これらの兆候を見落とすと、基礎疾患の悪化を引き起こし、リハビリテーションを遅らせる可能性があります。
-
電解質の不均衡を見落とす:ナトリウム、カリウム、塩化物は神経と筋肉の機能において重要な役割を果たします。不均衡は、筋肉の弱さや心臓の不整脈などの問題を引き起こす可能性があります。これらが認識されないと、治療が効果的でなくなったり、患者にさらなる害を及ぼす可能性があります。
-
骨関連のリスクの兆候を無視する:アルカリフォスファターゼ(ALP)の値が高い、またはカルシウムとリンの値が異常であると、骨転移や骨折のリスクなど、骨関連の合併症の可能性が示されます。これらの兆候が見落とされると、患者は理学療法中に怪我をするリスクがあります。
-
腎臓や肝臓の障害の兆候を無視する:BUN、クレアチニン、AST、ALTの値が高い場合、これは腎臓または肝臓の障害を示しており、これは薬物の代謝と排泄に影響を及ぼします。適切に管理されない場合、薬物毒性のリスクが高まる可能性があります。
これらの場合すべてで、他の医療チームとの効果的なコミュニケーションが重要です。セラピストはこれらのテスト結果を理解し、それらをリハビリテーションの戦略の計画と実施に考慮する必要があります。また、これらの値の懸念すべき変化を認識した場合、患者を主治医や専門医に再度紹介する準備も必要です。
ほかの記事もおすすめ⇒【2023年版】急性期・回復期の脳卒中リハビリテーションのリスクと違い
参考⇒Blood biomarkers for physical recovery in ischemic stroke: a systematic review
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)