理学療法士(PT)・作業療法士(OT) 新人必見!!カルテの情報収集と書き方のポイント!
カルテにはどんな情報が載っているの
病院のカルテや医療記録には、個々の患者に適切なケアを提供するために必要な情報が含まれています。これには、患者の個人情報、医療歴、薬歴、主訴、現病歴、身体検査の結果、検査結果、診断、治療計画、経過記録、同意書、退院サマリーなどが含まれます。これら全ての情報は、患者の健康状態と履歴を理解し、適切な診断と治療計画を立て、患者の進行状況を監視するために必要です。また、これらは医療チーム間のコミュニケーションと調整にも重要な役割を果たします。
中枢神経系疾患での必要な情報は何か
療法士は、中枢神経系障害の患者のリハビリテーションにおいて重要な役割を果たします。リハビリテーション計画を立案する際に、カルテからさまざまな情報と検査結果を考慮する必要があります。
・個人情報: 年齢、性別、およびその他の個人情報は、患者のリハビリテーションの可能性とその障害の予想される経過に影響を及ぼすことがあります。
・医療歴: 脳卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症、パーキンソン病など、特定の中枢神経系疾患に関する詳細は重要です。リハビリテーションに影響を及ぼす可能性がある他の健康状態、例えば心疾患や糖尿病に関する情報も考慮する必要があります。
・服薬歴: 薬は患者が療法に参加する能力に影響を及ぼすことがあります。例えば、一部の薬はめまいや疲労を引き起こすことがあります。
・身体検査所見: 患者の運動能力、バランス、協調性、筋力、筋緊張に関する情報は極めて重要です。感覚評価(触覚、痛み、温度感覚、固有感覚など)も重要です。
・機能評価: 患者の現在の機能レベルについて、つまり、移動能力、自己ケア、日常生活活動(ADL)に関する情報は必須です。Barthel ADL IndexやFunctional Independence Measure(FIM)などの評価がこの情報を提供することができます。
・神経学的評価: 神経学的検査の報告書、例えば脳神経評価、反射テスト、認知評価などは非常に関連があります。MMSE(Mini-Mental State Examination)やMoCA(Montreal Cognitive Assessment)などのツールは、認知状態についての洞察を提供することができます。
・画像と検査結果: 画像検査(MRI、CTスキャン)は、中枢神経系疾患の位置と範囲に関する詳細を提供することができます。検査結果は、患者の全体的な健康状態に関する情報を提供し、リハビリテーションへの潜在的な障壁を特定するのに役立ちます。
・リハビリテーションの目標: リハビリテーション過程で以前に設定された目標、達成された進歩、遭遇した障壁については確認されるべきです。
・退院計画: 患者が最近病院や他の医療施設から退院した場合、退院計画は推奨されるフォローアップケアと注意点についての貴重な情報を提供することができます。
【補足】上記の検査結果とは具体的に以下の表の内容のことです。
検査結果の種類 | 説明 |
---|---|
血液検査 | 身体のさまざまな機能についての情報を提供します。これには、全血球数、生化学パネル(例えば、肝機能、腎機能、電解質レベルなど)、血糖値、コレステロールレベル、炎症マーカーなどが含まれます。 |
画像検査 | X線、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)、超音波などの画像検査結果は、内部器官や組織の状態についての詳細な情報を提供します。 |
生体検査 | これには、心電図(ECG)、脳波(EEG)、肺機能テストなどが含まれます。これらのテストは、身体の特定の部分やシステムの機能を評価します。 |
病理検査 | 組織サンプル(例えば、生検)や体液(例えば、尿、髄液)をミクロスコープで調べることで、病気の存在や進行度を評価します。 |
遺伝子検査 | 遺伝子検査は、遺伝性疾患のリスクや特定の遺伝子変異の存在を確認するために使用されます。 |
これらの要素を評価することにより、療法士は、機能的な独立性を促進し、生活の質を改善し、さらなる合併症のリスクを減らす患者中心のリハビリテーションプログラムを設計することができます。
カルテ情報を理解するための勉強は何をしたらいい
療法士として、医療記録、特に中枢神経系疾患に関連する記録を理解するためには、いくつかの主要な領域における知識が必要です。
・医療用語: 医療用語(略語を含む)に精通していることは医療記録を理解するために極めて重要です。
・神経解剖学と神経生理学: 中枢神経系の構造と機能についての深い理解が必要です。これには、脳、脊髄、運動機能と感覚機能を制御する経路に関する知識が含まれます。
・神経病理学: 脳卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症、パーキンソン病など、一般的な中枢神経系障害の病理学について学ぶことで、患者の状態、予後、潜在的な合併症を理解するのに役立ちます。
・薬理学: 中枢神経系疾患を治療するために一般的に使用される薬物とその潜在的な副作用を理解することが、治療アプローチに影響を与える可能性があります。これには、痛みや痙縮などの症状管理のための薬物、および疾患修飾薬が含まれます。
・臨床評価ツール:Barthel ADL Index、Functional Independence Measure(FIM)、Mini-Mental State Examination(MMSE)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)など、神経リハビリテーションで使用される一般的な臨床評価ツールに精通することが重要です。これらのツールの使用方法と結果の解釈方法を理解することは非常に有益です。
・エビデンスに基づく実践:ニューロリハビリテーションにおける最新の研究を常に把握し、利用可能な最良のエビデンスに基づいた診療を心がけましょう。これには、科学雑誌を読み、専門会議に出席し、継続教育コースに参加することが含まれます。
・専門職間の連携:中枢神経系疾患の患者のケアに関わるさまざまな医療従事者の役割について学びます。これにより、コミュニケーションやケアの連携を向上させることができます。
・倫理と守秘義務:医療記録へのアクセスと使用に関連する倫理原則と法律を理解することは、患者のプライバシーと機密保持の問題を含め、非常に重要です。
医療記録の中で理解できない情報があった場合は、常に説明を求めることが良い方法であることを忘れないでください。また、同僚に相談したり、信頼できる医療資料を参照することで、情報を正確に解釈することができます。
新人さんが見落としやすい情報は
新人療法士は、特に中枢神経系のような複雑な病状に関するカルテを読み解くことが大変な任務と感じるかもしれません。新人がしばしば見落としがちな側面をお伝えします。
・服薬歴:薬歴は、患者さんの状態について貴重な洞察を与えてくれるものです。しかし、薬の副作用が患者の身体や認知機能に影響を与える可能性があることを考慮することを忘れてしまうことがあります。中枢神経系疾患によく処方される薬と、その副作用や相互作用の可能性に注意して下さい。
・経過観察記録:経過記録は、患者さんの状態が時間とともにどのように変化してきたかを知ることができます。また、患者さんの現在の状態を把握し、リハビリテーションにおける潜在的な問題を予測するのに役立ちます。
・画像診断と検査結果: 新人はこれらの結果の解釈に自信を持つことができないかもしれません。しかし、CTやMRIスキャンのような画像検査の基本的な所見を理解することは、中枢神経系疾患の性質と範囲についての重要な洞察を提供することができます。
・患者さんのベースラインの状態:中枢神経系疾患の発症前のベースラインの機能状態を把握することは、現実的なリハビリテーションの目標を設定する上で非常に重要です。この情報は、看護記録や以前のPT/OTの記録など、医療記録の様々な部分に記載されています。
・診察報告書: 神経科医、神経外科医、リハビリテーション医などの専門家は、診察記録で患者の病状について詳細な洞察を提供することがあります。これらの記録は、特に複雑なケースにおいて、非常に価値のある資源となることがあります。
・心理社会的要因:精神的な健康状態、サポート体制、生活環境、社会経済的な状況などの要素は、リハビリテーションの経過に大きな影響を与えることがあります。これらの要素は、医療記録の中に散在していることが多いです。
・退院計画記録 これらの記録には、患者さんの入院後の生活状況や予想されるケアの必要性などに関する重要な情報が含まれていることが多いです。これは、リハビリテーション計画の指針となります。
カルテを書くポイントは?
理学療法士(PT)や作業療法士(OT)は、患者の進捗を追跡し、治療計画を立て、他の医療提供者とコミュニケーションを取るためにチャートを使用します。これらのチャートには、主観的および客観的な評価、介入の詳細、そして今後の治療計画が含まれます。以下に、PT/OTのためのチャートの書き方の一般的なガイドを示します:
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患者の識別: 患者の名前、年齢、実施日を記入します。
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主観的情報: 患者が自分の状態について語った情報です。症状、痛みの程度、その状態が日常生活にどのように影響しているかなどの情報を含めます。前回の訪問からの変化や治療の目標も記入します。
例:「患者は前回の実施以来、右肩の痛みが減少したと報告。日常のタスクは以前よりも不快感が少なくなったが、物を持ち上げることにはまだ苦労している。筋力と可動性を改善することが目標。」
- 客観的情報: これは療法士が観察し測定した情報です。運動範囲や力、患者の移動能力、バランス、日常的なタスクをこなす能力についての具体的な測定値と一般的な観察を含めます。
例:「前回の実施から右肩の運動範囲が15度改善。右腕の力は5分の1-2kg以上の物を持ち上げることに難しさを示す。」
- 評価: 患者の進捗、治療への反応、潜在的な問題や合併症についてまとめます。患者の状態についての専門的な判断を含めます。
例:「患者は肩のリハビリテーションにおいて着実な進捗を示している。痛みは減少し、機能は改善している。しかし、力の問題は依然として存在し、日常活動への完全な復帰を妨げる可能性がある。」
- 計画: このセクションでは、実施の頻度や期間、具体的な介入、次回の実施や長期的な目標に向けた計画など、今後の治療計画を概説します。
例:「現在の治療計画を続け、強化運動と痛み管理を含めます。次回の実施日までに物を持ち上げる能力を増やすことを目指します。患者は次の4週間、週に2回 PT実施予定です。」
- 署名: レポートの日付とともに、あなたの名前と肩書きで署名します。
すべてのエントリーは、クリアで簡潔に書かれるべきです。カルテを読む可能性があるすべての人が理解できない専門用語や略語の使用を避けてください。常に患者の守秘義務を心に留めておくことが重要です。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)