学生・新人療法士必見!!見学実習の目的と視点!学んだことは?理学療法士・作業療法士
臨床見学の目的は?
病院やリハビリテーション環境での治療場面の臨床見学は、特に学生や新入職の療法士にとって重要です。その重要性についていくつか説明します。
・患者ケアの理解:治療を見学することで、学生や新人療法士は、実際の臨床現場でどのように治療が行われるかを直接見ることができます。この経験は、療法士の日常生活や、さまざまな症状を管理するために使用される治療的介入についての洞察を提供することができます。
・疾患と治療について学ぶ:さまざまな患者や治療戦略を観察することで、さまざまな病状やその影響、治療や管理方法について深く理解することができます。
・コミュニケーションスキル:観察することはまた、患者と療法士の相互作用について学ぶ機会を提供します。コミュニケーションは療法士の重要な部分であり、観察により、経験豊富な療法士がどのように患者との関係を築き、治療計画を説明し、患者の懸念に対応するかを理解することができます。
・多職種連携:病院やリハビリテーション環境では、療法士は大きな医療チームの一部として働いています。治療シーンを観察することは、さまざまな医療専門家がどのように連携してケアを提供するかを理解するのに役立ちます。
・倫理的な実践:プロフェッショナルの行動を観察することは、専門職の倫理規範を強化するのに役立ちます。観察者は経験豊富な療法士の行動から学び、複雑な倫理的状況をどのようにナビゲートするかを理解することができます。
・批判的な反省:観察は何がうまくいっているか、何を違う方法で行うことができるかについて批判的に考える機会を提供します。これは、臨床的な推論スキルを身につけるのに役立ちます。
・専門性の発展:見学によって、学生や新人は、自分の役割と責任をよりよく理解し、プロとしての行動を身につけ、新しい役割に移行する際に自分の能力に自信を持つことができます。
見学は受動的なものではなく、能動的なものでなければならないことを忘れないでください。メモを取り、質問し、議論に参加することで、見学経験を最大限に活用することができます。
脳卒中の方の臨床見学の視点は?
脳卒中の患者の治療を観察する際には、新人療法士、または学生が心に留めておくべきいくつかの特定の視点があります。
・個別性:脳卒中の患者の体験は、一人ひとり異なります。症状、進捗状況、個人的な目標、治療に対する反応などは、大きく異なることがあります。患者を “脳卒中患者 “としてだけでなく、一人の人間として観察することが重要です。
・全体的な視点:脳卒中は、患者の身体だけでなく、認知や感情にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、セラピストは、身体的なリハビリテーションだけでなく、認知的、感情的な健康にも注意を払いながら、全体的な視点を持つ必要があります。
・機能的なアプローチ:脳卒中後のリハビリの最終目標は、患者ができるだけ多くの機能を回復できるようにすることです。歩行、着替え、調理などの日常生活の再学習など、療法士が機能的な作業をどのように治療に取り入れているかを観察してください。
・多職種間のアプローチ:脳卒中のリハビリテーションは、医師、看護師、言語療法士などの医療専門家のチームを必要とすることが多いです。これらの異なる専門家がどのように協力して包括的なケアを提供しているかを観察することが重要です。
・患者中心のケア:患者のニーズと目標が治療の指針になります。療法士がどのように患者さんとコミュニケーションをとり、意思決定のプロセスに患者を巻き込むかを観察することは非常に重要です。
・家族/介護者の関与:家族や介護者は、回復プロセスにおいて重要な役割を担っています。彼らの関与は、治療計画の遵守を支援し、家庭への復帰を促進することができます。療法士が家族や介護者とどのように接し、どのようにリハビリテーションのプロセスに参加させているかを観察してみましょう。
・適応と修正:脳卒中の回復はダイナミックなプロセスであり、治療計画はしばしば患者の進行状況に応じて適応または修正する必要があります。患者が回復したり、停滞したり、新たな課題に直面したときに、療法士がどのように治療を調整するか、注目する必要があります。
・制約の理解:脳卒中のリハビリテーションで起こりうる制限や合併症、例えば、移動、嚥下、言語、気分の変化などを理解することも重要です。そうすることで、脳卒中のリハビリテーションにおける課題を現実的に捉えることができます。
・倫理的、文化的な配慮:発生する可能性がある倫理的な問題を認識し、療法士がそれらをどのように解決しているかを観察します。また、療法士が患者の文化的な信念と慣習をどのように尊重しているかも注視します。これらは治療の受け入れと結果に影響を与える可能性があります。
これらの視点は、脳卒中リハビリテーションを通じた患者の旅路をより深く理解し、自身の実践に対してより洗練された、共感的なアプローチを開発するのに役立ちます。
見学前後の質問ってどんなことを尋ねればいいのか?
リハビリテーション環境で脳卒中患者の治療を観察する際に、学生・新人療法士は、患者のケアについてより深く理解するために、バイザーまたは先輩に以下のような情報を収集をすることが必要かもしれません。例を説明します。
・臨床症状:患者はどのようなタイプの脳卒中に罹患したのか?その結果、身体能力や認知能力にどのような影響があったのか?
・評価:患者の状態を評価するためにどのような評価ツールが使用したのか? 脳卒中の重症度はどのように決定したか?
・治療計画:患者のリハビリの主な目標は何か? これらの目標はどのように決定したのか? これらの目標に向けた進捗はどのように測定するのか?
・治療的介入:この患者さんには、具体的にどのような介入を行っているのか?どのように患者さん個人のニーズや目標に合わせているのか?
・包括的な要素:患者さんに包括的なケアを提供するために、治療チームはどのように連携しているか?患者さんのケアに関する決定はどのようにして、チーム内で伝達しているのか?
・患者の反応:これまでの治療に対して、患者さんはどのように反応(感想や手応え)しているのか。どのような問題に直面し、それに対してどのように対処してきたか?
・家族/介護者の関与:患者のご家族や介護者は、リハビリテーションのプロセスにどのように関与しているのか?患者の状態やケアの必要性について、どのようにまたはどんな教育をしているのか?
・退院計画:患者の退院計画はどうなっているのか?自宅や他の介護施設への移行を支援するために、どのような資源が用意されているのか?
・倫理的な配慮:患者のケア中に発生した倫理的な問題はあったか?もしあれば、どのように対処したか?
これらの質問は、脳卒中リハビリテーションの複雑さをより深く理解し、様々な治療上の決断の背後にある理由についての洞察を得るのに役立ちます。質問には敬意を払い、治療セッションを妨げないよう適切なタイミングを考慮することを忘れないようにしましょう。
また、上記は参考例であり質問を考えることは自身の成長につながるプロセスです。徐々に推論や考察のにために、解釈する必要がある事柄を考え、質問するようにしましょう。
学生・新人が臨床見学で見落としやすいこと
脳卒中リハビリテーションの臨床現場を見学することは、学生や新人療法士にとって、複雑で圧倒される体験になります。次のことは不注意で見落としてしまうかもしれません。
・脳卒中の非身体的影響:脳卒中の身体的影響(運動機能障害、バランス障害など)はよく重要な焦点となりますが、認知的、情緒的、心理社会的な影響は時折見落とされます。うつ病、不安、認知機能障害、社会的孤立などの問題は、脳卒中後に一般的であり、全人的な患者ケアの重要な側面です。
・教育:直接的なケアと治療に焦点を当てるのは簡単ですが、患者と家族への教育は脳卒中リハビリテーションの重要な要素です。状態、回復プロセス、家庭での管理方法について患者と家族に教えることの重要性を理解することは重要です。
・長期的なケア計画:退院計画や長期的なケアに関する考慮は、初期の臨床見学では見過ごされることもあります。潜在的なケア資源、フォローアップケア、家庭環境への適応など、患者さんの将来のニーズに対する計画の重要性を理解することが重要です。
・文化/倫理的側面:リハビリテーションにおいて、患者の多様な文化背景や価値観を理解し尊重することは重要です。また、新人の療法士が見落としがちな倫理的問題としては、インフォームド・コンセント(患者の自己決定権)や守秘義務などがあります。
・進歩の変動性:新人の療法士は、一部の患者の急速な進歩に焦点を当てる傾向があります。しかし、脳卒中後の回復は個々の患者で大きく異なり、長期間にわたって改善し続けることがあります。小さな成果も重要であり、進歩はゆっくりと非線形であることがあると理解することが重要です。
こうした点を意識することで、新人や学生の療法士は、脳卒中リハビリテーションについてより包括的な理解を深めることができます。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)