【2024年版】脳卒中機能評価法(サイアス:SIAS)の活用法!評価表・項目・カットオフまで解説!
はじめに
脳卒中機能評価法(Stroke Impairment Assessment Set:SIAS)は、脳卒中により引き起こされる身体機能への影響の程度を定量的に測定するための包括的な評価ツールです。その目的は、脳卒中患者の症状の進行や経過を見据えた予測、そしてリハビリテーションの成果を確認・評価することです。
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特徴
多種多様な脳卒中関連の評価スケールが存在しますが、それらの多くは特定の機能、たとえば運動機能に対する評価に特化しています。しかしSIASはそのようなスケールとは一線を画し、感覚機能、体幹機能、言語機能といった様々な機能面を含む幅広い領域についての評価を可能にしています。これは、脳卒中が引き起こす影響が単一の機能に留まらないという事実を反映しており、SIASはこれらの複数の影響を全体的に評価できることが特色です。
SIASの具体的な利用方法を説明します。まず、運動機能、筋緊張、感覚、関節の可動範囲、痛み、体幹の機能、視覚空間認識、言語機能、非麻痺側の機能といった9つの主要な機能領域について、それぞれ評価します。これらは、合計22の評価項目に分かれており、各項目は0から3または0から5の範囲で点数化されます。ここでの高得点は軽度の障害を意味し、低得点は重度の障害を示します。
SIASは脳卒中が発症したばかりの患者の初期評価にも使われますが、その特長は手軽さと速さにあります。約10分という短い時間で評価が可能なため、リハビリテーションの進行に伴う機能改善や障害の変化を追跡し、定期的に評価することができます。また、SIASは専門的な器具を必要とせず、患者のベッドサイドでの実施が可能なため、常に患者の健康状態を把握し、状態の変化を迅速に追跡するのに役立ちます。
こうした理由から、SIASは脳卒中患者の機能評価やリハビリテーション効果の追跡における重要なツールとして位置付けられています。そして、それは多角的で定量的な評価を可能にするその特性から、医療専門家たちによって高く評価されているのです。
以下はシンプルな点数評価表です。細かな得点は上記PDFをご確認ください
分類 | 項目 | 得点 |
---|---|---|
1. 麻痺側運動機能 | 上肢近位テスト(膝・口テスト) | 0~5 |
上肢遠位テスト(手指テスト) | 0~5 | |
下肢近位テスト(股関節テスト) | 0~5 | |
下肢遠位テスト(膝伸展テスト) | 0~5 | |
下肢遠位テスト(足パットテスト) | 0~5 | |
上肢反射(上腕二頭筋・上腕三頭筋) | 0~3 | |
下肢反射(膝蓋・アキレス腱) | 0~3 | |
2. 筋緊張 | 上肢緊張 | 0~5 |
下肢緊張 | 0~5 | |
3. 感覚 | 上肢感覚 | 0~3 |
下肢感覚 | 0~3 | |
4. 関節の可動域 | 上肢関節の動域 | 0~3 |
下肢関節の動域 | 0~3 | |
5. 痛み | 痛み | 0~3 |
6. 体幹機能 | 体幹機能 | 0~3 |
重症化テスト | 0~3 | |
7. 視覚空間認知 | 視覚認知 | 0~3 |
8. 言語機能 | 言語機能 | 0~3 |
9. 非麻痺側の機能 | 非麻痺側四頭筋筋力 | 0~3 |
非麻痺側握力 | 0~3 | |
合計 | 76 |
具体的実施例
SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)のカットオフ値について具体的な基準を明示した研究は限られていますが、一般的な評価基準としては以下のような点数の解釈が考えられます。
SIAS評価の一般的なカットオフ値
SIASの総合点数は76点満点であり、高い点数ほど軽度の障害を示します。以下のようなカットオフ値が参考にされることがあります。
-
重度の障害: 総得点が30点以下の場合
- 重度の運動機能障害があり、日常生活動作(ADL)に大きな支援が必要。
-
中等度の障害: 総得点が31点から50点の場合
- 中等度の運動機能障害があり、部分的な支援が必要。
-
軽度の障害: 総得点が51点以上の場合
- 軽度の運動機能障害があり、日常生活において自立しているか、わずかな支援が必要。
具体的なカットオフ値については、各医療機関や研究によって異なる場合があるため、詳細な評価や適用については、専門的なリハビリテーションガイドラインや医療専門家の指導に従うことが推奨されます。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)