【質問】脳卒中/片麻痺の歩行時の動作分析のコツを教えてください!5つのフェイズを理解
質問
お忙しいところ恐れ入りますが、歩行分析についてご相談させていただきたく、メールを送らせていただきました。
現在、「脳卒中の動作分析」を参考に、脳卒中の患者様の歩行分析を行っておりますが、いくつかのステップで悩みが生じています。特に以下の点について、どのように対処すればよいかアドバイスをいただけますでしょうか?
初期コンディションの評価:
- 患者の姿勢の歪みや不安定さを見逃さないためには、どのようなポイントに注意すればよいでしょうか?
- 環境適応能力の評価方法についてもアドバイスをいただけると助かります。
準備段階での課題設定:
- 患者の現在の能力に合った課題を設定する際のポイントについてご教示いただけますか?
- 課題に対する患者の反応を観察し、適切に評価するための方法についてもご教示ください。
動作開始時および実行中の評価:
- 動作を開始するタイミングや方向を適切に評価するためのコツがあれば教えてください。
- 歩行中のタイミング、方向、スピード、スムーズさの観察ポイントについてもアドバイスをいただけると助かります。
動作終了時およびアウトカムの評価:
- 歩行を終える際のタイミングと安定性を評価するための具体的な方法を教えてください。
- 最終的な課題達成の評価基準や、患者に対する適切なフィードバックの提供方法についてもご教示ください。
これらの点についてアドバイスをいただけると、大変助かります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
お忙しいところ恐縮ですが、ご返信をお待ちしております。
歩行分析に必要な基礎知識
歩行分析は、脳卒中患者のリハビリテーションにおいて重要な要素です。患者の歩行パターンに関する詳細な情報を提供し、移動性と生活の質を向上させる介入をカスタマイズするのに役立ちます。
1. 歩行分析の重要性
客観的評価:歩行分析は、歩幅、歩調、対称性など、運動障害の程度を評価するために重要なさまざまなパラメータに関する客観的なデータを提供します。
カスタマイズされた介入:特定の歩行偏差を理解することで、個々の障害をターゲットにしたカスタマイズされたリハビリテーション プログラムを開発できます。
2. 脳卒中患者によく見られる歩行偏位
片麻痺歩行:麻痺側の脚が硬直して回旋する動きを特徴とし、痙縮や筋力低下が原因であることが多い。
足下垂: 足首を背屈できず、足を引きずる状態になり、つまずいたり転倒したりする原因になります。
非対称性: 影響を受けている側と影響を受けていない側の歩幅とタイミングに差があり、非効率的で不安定な歩行につながります。
3. 測定するパラメータ
時間的・空間的パラメータ: 歩幅、歩幅、歩行速度、歩調、歩行周期時間が含まれます。
運動学的パラメータ: 歩行周期のさまざまな段階における関節の角度と動き。
運動学的パラメータ: 歩行中の負荷と推進力に関する洞察を提供する地面反力とモーメント。
4. 歩行分析で使用されるテクノロジー
ウェアラブル センサー: 加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニット (IMU) は、動作パターンに関するリアルタイム データを提供します。
モーション キャプチャ システム: 身体に取り付けられたマーカーを追跡して、歩行の詳細な 3D モデルを作成するカメラベースのシステム。
フォース プラットフォーム: 歩行中に地面に及ぼされる力を測定し、体重の配分とバランスに関する貴重な情報を提供します。
5. 脳卒中患者の歩行サイクルの段階
立脚期: 代償戦略により、健側で長くなっていることがよくあります。
遊脚期: 患側で短くなり、歩行速度が低下し、エネルギー消費が増加します。
両足支持期: 患者が安定性を求めるため、バランスの問題を反映して持続時間が長くなります。
6. 臨床的影響
早期発見: リハビリテーション プロセスの早い段階で歩行異常を特定することで、関節の変形や転倒などの二次的合併症を防ぐことができます。
進捗状況の監視: 定期的な歩行分析により、介入の進捗状況と有効性を追跡し、タイムリーな調整を行うことができます。
転倒防止: 患者の歩行パターンを理解することで、転倒防止戦略の実施を導き、安全性を向上させることができます。
7. リハビリテーション戦略
筋力トレーニング: 大腿四頭筋や足首背屈筋など、歩行の重要な側面を担う筋肉群をターゲットにします。
バランストレーニング: バランスと固有受容感覚に挑戦するエクササイズを通じて安定性を強化します。
機能的電気刺激 (FES): 電気刺激を使用して筋肉の収縮を刺激し、足のクリアランスを改善します。
歩行トレーニング装置: 体重支持システムとロボット外骨格を備えたトレッドミルは、歩行の反復練習に役立ちます。
8. 多分野アプローチ
コラボレーション: 理学療法士、作業療法士、および整形外科医と協力することで、歩行リハビリテーションへの包括的なアプローチが確保されます。
患者教育: 患者と介護者に歩行異常と自宅での運動プログラムについて教育することで、ケアの継続性が促進されます。
引用:金子唯史 医学書院 脳卒中の動作分析より
1. 初期コンディション (Initial Condition)
- 姿勢 (Posture): 患者の初期の姿勢を評価します。脳卒中による麻痺や筋力低下がある場合、立位姿勢に異常が見られることがあります。例えば、片側に重心が偏っている、体幹の傾きがあるなどです。
- 環境への適応能力 (Ability to adapt to the environment): 環境に対する適応能力も評価します。例えば、歩行するための足場の状況や、環境の変化に対する反応などです。
- 背景(文脈) (Context): 患者の生活環境や過去の病歴、リハビリの進行状況など、背景情報も重要です。
2. 準備 (Preparation)
- 刺激(課題)の特定 (Identification of stimuli/tasks): 歩行のための課題を特定します。例えば、直線を歩く、方向を変える、階段を昇降するなどの課題です。
- セクションへの反応 (Response to the section): 特定の課題に対する反応を観察します。例えば、歩き始める前の足の位置や体のバランスなどです。
- プログラミングの反応 (Programming response): 脳がどのように動作をプログラムしているかを評価します。例えば、どの筋肉をどのタイミングで使うかなどです。
3. 動作開始時 (Initiation of Movement)
- タイミング (Timing): 歩行を開始するタイミングを評価します。脳卒中の影響で動作の開始が遅れることがあります。
- 方向 (Direction): 動作の方向を評価します。初めの一歩をどの方向に踏み出すかなどです。
- スムーズさ (シークエンス) (Smoothness – Sequence): 一連の動作がスムーズかどうかを評価します。ぎこちない動きや急な動作が見られる場合があります。
4. 実行中 (Execution)
- タイミング (Timing): 歩行中の動作のタイミングを評価します。例えば、足を前に出すタイミングや腕の振りのタイミングなどです。
- 方向 (Direction): 歩行中の方向を評価します。例えば、まっすぐ歩けているか、左右にぶれていないかなどです。
- スピード (Speed): 歩行のスピードを評価します。脳卒中患者は通常、歩行速度が遅くなります。
- スムーズさ (Smoothness): 歩行のスムーズさを評価します。例えば、足を引きずるような動作がないか、滑らかに歩けているかなどです。
5. 動作終了時 (Termination of Movement)
- タイミング (Timing): 歩行を終えるタイミングを評価します。歩行を止めるタイミングが適切かどうかを見ます。
- 安定性 (Stability): 歩行を終えたときの安定性を評価します。バランスを崩していないか、しっかりと立っていられるかなどです。
- スムーズさ (Smoothness): 歩行を終える際の動作のスムーズさを評価します。急に止まる動作や、不自然な動作がないかなどです。
6. アウトカム (Outcome)
- 課題は達成できたか? (Was the task achieved?): 最終的に歩行の課題が達成できたかを評価します。例えば、指定された距離を安全に歩けたか、方向転換ができたか、階段の昇降ができたかなどです。
新人が陥りやすいミスは?
1. 初期コンディション (Initial Condition)
- 姿勢の評価不足: 姿勢の歪みや不安定さを見逃し、動作の開始前に適切な修正を行わないことがある。
- 環境適応能力の過小評価: 患者が異なる環境にどれほど適応できるかを過小評価し、実際の環境での歩行訓練を怠ることがある。
- 背景情報の不足: 患者の生活環境や病歴、リハビリの進行状況を十分に把握せずに進めてしまうことがある。
2. 準備 (Preparation)
- 課題の特定の不備: 患者の現在の能力に合わない課題を設定してしまうことがある。過度に難しい課題や簡単すぎる課題を選んでしまうことがある。
- 反応の観察不足: 患者の反応を適切に観察せず、必要な修正を行わないことがある。
- プログラミング反応の理解不足: 患者がどのように動作をプログラムしているかを十分に理解せずに進めてしまうことがある。
3. 動作開始時 (Initiation of Movement)
- タイミングの評価不足: 動作を開始するタイミングを適切に評価せず、患者が急いで動作を開始してしまうことがある。
- 方向の指導不足: 患者に対して動作の方向を明確に指導せず、誤った方向に動作を開始させてしまうことがある。
- スムーズさの見逃し: 一連の動作がスムーズでないことを見逃し、ぎこちない動作を修正しないことがある。
4. 実行中 (Execution)
- タイミングの評価不足: 歩行中の動作のタイミングを適切に評価せず、適切なタイミングで動作を行えないことがある。
- 方向の評価不足: 患者の歩行中の方向が正確でないことを見逃し、誤った方向に進むことがある。
- スピードの管理不足: 歩行のスピードを適切に管理せず、速すぎるか遅すぎるかを修正しないことがある。
- スムーズさの見逃し: 歩行のスムーズさを見逃し、足を引きずるような動作や不自然な動作を修正しないことがある。
5. 動作終了時 (Termination of Movement)
- タイミングの評価不足: 歩行を終えるタイミングを適切に評価せず、急に止まってしまうことがある。
- 安定性の確認不足: 歩行を終えたときの安定性を確認せず、バランスを崩したまま終わってしまうことがある。
- スムーズさの見逃し: 歩行を終える際の動作がスムーズでないことを見逃し、不自然な動作を修正しないことがある。
6. アウトカム (Outcome)
- 課題達成の評価不足: 最終的に課題が達成できたかを適切に評価せず、成功と失敗の基準を明確にしないことがある。
- フィードバックの不足: 患者に対して適切なフィードバックを提供せず、次のステップに進む際の指導が不足することがある。
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)