【2024年版】低周波治療 (TENS療法:経皮的電気神経刺激)の脳卒中・片麻痺に対するリハビリ – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【2024年版】低周波治療 (TENS療法:経皮的電気神経刺激)の脳卒中・片麻痺に対するリハビリ

TENSとは?

1.TENSの役割

経皮的電気神経刺激法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation, TENS)は、脳卒中後のリハビリテーションにおいて多方面で効果を発揮します。具体的な効果は以下の通りです:

  1. 痛みの管理

    • TENSは神経の痛み信号をブロックすることで、慢性的な痛みを緩和します。痛みの管理が適切に行われることで、患者はリハビリテーションに積極的に参加しやすくなります。
  2. 筋肉の再教育

    • TENSは電気刺激を用いて筋肉を直接刺激し、筋肉の収縮と弛緩を誘発します。これにより、麻痺した筋肉の再教育が促進されます。
  3. 神経再教育

    • TENSは神経経路に対しても刺激を与え、脳から筋肉への信号伝達の再教育を支援します。これにより、損傷を受けた神経経路が新たに再構築されることが期待されます。
  4. 筋力強化

    • 電気刺激による筋収縮を通じて、筋力が強化されます。特に、患者が自力で筋肉を動かすことが難しい場合に効果的です。

2. 適用方法

2.1. 電極パッドの配置

脳卒中患者の手の背屈麻痺に対するTENSの効果を最大化するためには、電極パッドの正確な配置が重要です。

配置場所

  • 手の背屈筋(手首の伸筋群):具体的には、主に前腕の伸筋である総指伸筋(Extensor Digitorum)、尺側手根伸筋(Extensor Carpi Ulnaris)、橈側手根伸筋(Extensor Carpi Radialis LongusおよびBrevis)を対象とします。

配置方法

  • 筋肉の起始部と停止部:総指伸筋は上腕骨の外側上顆から始まり、指の中節骨および末節骨に停止します。橈側手根伸筋は上腕骨の外側上顆から第2および第3中手骨に、尺側手根伸筋は上腕骨の外側上顆と尺骨の後面から第5中手骨に停止します。
  • 電極の具体的な配置
    1. 起始部の配置:前腕の背側中央部に電極パッドを配置します。この部分は上腕骨の外側上顆付近になります。
    2. 停止部の配置:手首に近い部分に電極パッドを配置します。具体的には、手首の背側(手の甲側)で、伸筋の停止部に近い位置に配置します。

この配置により、TENSの電気刺激が筋肉の全体に行き渡り、効果的な筋収縮を促進します。

2.2. TENSの設定

周波数

  • 50-100Hz(中〜高周波)
    • 低周波(1-10Hz):持続的な筋収縮を引き起こし、エンドルフィンの放出を促進しますが、手の背屈麻痺の治療には適さないことがあります。
    • 中〜高周波(50-100Hz):効果的な筋収縮を引き起こし、筋の再教育を促進します。頻度を高めることで、筋の疲労を避けつつ効果的な刺激を提供します。

パルス幅

  • 100-200マイクロ秒
    • パルス幅は筋収縮の強さに影響します。100-200マイクロ秒は、快適で効果的な筋収縮を得るために最適な範囲です。

刺激強度

  • 患者が感じることができるが、痛みを感じないレベル
    • 刺激強度は個々の患者に合わせて調整する必要があります。通常、患者が心地よく感じるが、強い痛みを感じない程度の強度に設定します。これは、効果的な筋収縮を促しながら、患者の不快感を最小限に抑えるためです。

2.3. 刺激パターン

持続モード(Continuous Mode)

  • 一定の刺激を与え続けるモード
    • 持続的な電気刺激を提供し、筋肉の継続的な収縮を促します。これにより、筋力の強化や神経筋の再教育が促進されます。

バーストモード(Burst Mode)

  • 断続的な刺激を与えるモード(10秒間の刺激、10秒間の休止など)
    • 断続的な刺激を提供することで、筋の疲労を軽減しながら、効果的な筋収縮を維持します。このモードは、特に筋持久力の向上や、筋の収縮と弛緩のサイクルを再教育するために有効です。

補足情報

追加の設定パラメータ

  • 波形:通常、対称性バイフェーシック波形が使用されます。この波形は、皮膚下の神経と筋肉に対して効果的かつ安全な刺激を提供します。
  • 治療時間の調整:初期治療では短時間(10-15分)から始め、患者の耐久性と応答性に応じて徐々に治療時間を延ばします。

実施前後の評価

  • **筋電図(EMG)**を用いて筋収縮の質を評価することが推奨されます。これにより、TENSの効果を客観的にモニタリングし、設定の最適化に役立てることができます。

患者教育

  • TENSの使用方法と効果について患者に十分な説明を行い、患者自身が治療に積極的に参加できるようにします。患者のフィードバックは設定の調整や治療の成功において重要です。

これらの詳細な設定と方法を用いることで、TENSが脳卒中後の手の背屈麻痺のリハビリテーションにおいて効果的に活用されることが期待されます。

実際の使用場面例


STROKE LABでのリハビリ場面。患者(60歳、男性)は、手の背屈麻痺の治療を受けています。セッションは専門の理学療法士(PT)が担当しています。

場面: テーブルの上にはTENSユニットが設置され、電極パッドが前腕の背側に配置されています。

手順

  1. 準備

    • PT:「今日はTENSを使って手の背屈筋のトレーニングを行いますね。最初に、電極パッドを前腕に配置します。少し冷たく感じるかもしれませんが、大丈夫ですか?」
    • 患者:「はい、大丈夫です。」
  2. 電極パッドの配置

    • PT:「電極をここに配置します。1つは前腕の背側中央部、もう1つは手首に近い部分です。これで電気刺激が筋肉全体に行き渡ります。」
    • 患者:「わかりました。」
  3. TENSユニットの設定

    • PT:「次に、TENSユニットの設定を行います。周波数は50-100Hz、パルス幅は100-200マイクロ秒に設定します。刺激強度は痛みを感じない程度に調整します。何か不快感があったら教えてください。」
    • 患者:「はい。」
  4. 治療の実施

    • PT:「では始めますね。最初は持続モードで行います。10分後にバーストモードに切り替えます。刺激を感じますか?」
    • 患者:「はい、少しピリピリしますが、痛くはないです。」
  5. 患者とのやり取り

    • PT:「刺激の強さはこのままで大丈夫ですか?」
    • 患者:「はい、大丈夫です。気持ちいい感じです。」
    • PT:「良かったです。TENSを使っている間に手の動きに意識を集中させてください。手首を軽く動かしてみてください。」
    • 患者(手首を動かしながら):「少し動かしやすくなった気がします。」
    • PT:「素晴らしいですね。この調子で続けましょう。」
  6. 治療後のフォローアップ

    • PT:「今日はこれで終了です。電極パッドを外しますね。皮膚の状態を確認しますが、特に問題はなさそうです。」
    • 患者:「ありがとうございます。痛みもなく、気持ちよかったです。」
    • PT:「それは良かったです。次回もこの設定で進めましょう。何か質問や不安があればいつでも教えてください。」

効果のモニタリング

  • 筋力評価:徒手筋力テスト(MMT)や握力計を使用して、筋力の変化を定期的に評価します。
  • 機能評価:ADL評価(Barthel IndexやFIMスコア)を用いて、日常生活機能の改善を評価します。
  • 患者のフィードバック:痛みの変化や使用感についての患者報告を記録します。

家庭用と医療用の違いは?

項目 家庭用TENS 専門的なTENS
用途 一般的な痛みの緩和 専門的なリハビリテーションおよび疼痛管理
デザイン 持ち運び可能で簡単な操作 多機能で設定が複雑
操作の複雑さ 簡単なインターフェース、基本的な設定 詳細な設定が可能、専門的な知識が必要
機能 基本的なパルス幅と周波数設定 広範な周波数範囲とパルス幅、カスタマイズ可能
電極パッドの種類 一般的なパッド 様々なサイズと形状の電極パッド、専門用途に応じた配置
価格 比較的安価 (4000円〜12000円) 高価 (4万円〜20万円)
使用場所 自宅でのセルフケア 医療機関、リハビリテーションクリニック
適応症 一般的な筋肉痛、関節痛、慢性痛 専門的な治療、例えば脳卒中後のリハビリテーション、術後の疼痛管理
安全性 安全性確保のために制限された設定 専門家の監督下で使用されるため、高度な設定が可能
使用者の教育 最小限のトレーニング 専門的なトレーニングが必要

詳細説明

家庭用TENS

  • 用途:一般的な筋肉痛、関節痛、慢性痛の緩和に使用されます。ユーザーが自宅で簡単に使用できるように設計されています。
  • デザインと操作:持ち運び可能で、シンプルなインターフェースを持ち、基本的な周波数とパルス幅の設定が可能です。操作が簡単であり、特別な訓練を受けていない一般ユーザーでも使用できます。
  • 機能:基本的な痛みの緩和に必要な機能を備えており、設定オプションは限られています。
  • 安全性:一般的に低出力で設計されており、安全性を確保するために設定が制限されています。

専門的なTENS

  • 用途:医療機関やリハビリテーションクリニックでの使用を目的としており、脳卒中後のリハビリテーションや術後の疼痛管理など、特定の医療用途に対応します。
  • デザインと操作:複雑なインターフェースを持ち、多機能であり、詳細な設定が可能です。使用には専門的な知識とトレーニングが必要です。
  • 機能:広範な周波数範囲とパルス幅、カスタマイズ可能な設定が特徴で、様々な医療用途に対応できます。
  • 安全性:専門家の監督下で使用されるため、より高出力で高度な設定が可能です。特定の治療に応じた電極パッドの種類も豊富です。

これらの違いにより、家庭用TENSは一般的なセルフケアに適しており、専門的なTENSは特定の医療ニーズに対応するために設計されています。


引用:伊藤超短波

当施設ではエスパージを活用し、専門的な評価のもとで実施します。

エビデンス

経皮的電気神経刺激(TENS)に関する最近の研究では、特に脳卒中後のリハビリテーションにおいて有効であることが示されています。具体的な効果には、痛みの軽減、筋緊張の管理、および一部のケースでの運動機能の改善が含まれます。

  1. 痛みの軽減: TENSは、痛みの緩和に有効であるとされています。システマティックレビューとメタ分析により、慢性痛に対するTENSの使用が広く評価されており、多くの研究で痛みの緩和に有効であることが報告されています​ (BMJ Open)​。

  2. 筋緊張の管理: 下肢の痙縮に対するTENSの使用が、他の物理療法と併用することで痙縮を減少させる効果があることが示されています。メタ分析では、TENSを他の治療と組み合わせて使用した場合に、プラセボと比較して顕著な効果が見られたと報告されています​ (NIHR Evidence)​。

これらの結果から、TENSは脳卒中後のリハビリテーションプログラムにおいて有用な補助療法として考慮されるべきです。ただし、TENSの効果は個々の患者の状態や特定の臨床的文脈によって異なる可能性があるため、使用する際には専門家による適切な評価と指導が必要です。

 

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