第4頚髄損傷(C4) リハビリテーション/ 評価・治療・脊髄損傷・できることは?
第4頚髄の概要
脊髄は中枢神経系の主要な部分であり、脳と体の残りの部分の間で信号を伝達する神経で構成されています。それは異なるセクションに分けられており、頸椎または首の領域が最上部になります。頸椎は7つの椎骨で構成されており、C1からC7までラベルが付けられています。C4は上から4番目に位置しています。
第4頸椎、またはC4は、脊髄健康と日常の機能において重要な役割を果たしています。C4は頸椎の中で比較的高い位置にあり、そのため損傷が発生した場合、呼吸機能や首の動きに重大な影響を及ぼすことがあります。
解剖学的に、C4は比較的短い棘突起が特徴で、首の上部で容易に感じることができます。それはC3およびC5椎骨と接しています。C4椎骨は頭の重さを支え、その動きを支援し、それを通る脊髄と関連神経を保護します。
具体的には、C4神経根は、脊椎柱近くのC4椎骨の近くで出口すると、体の感覚と運動の機能を制御します。それは横隔膜や首の一部の筋肉を制御し、呼吸や首の動きを可能にします。
分かりやすい頚髄損傷動画解説
第4頸椎が支配する筋肉と機能障害
以下は、第4頸椎(C4)が支配する主要な筋肉と、それに関連する機能障害の表です。
筋肉名 | 機能 | 損傷による機能障害 |
---|---|---|
横隔膜 | 呼吸 | 呼吸困難 |
僧帽筋 | 首と肩の動き | 首と肩を動かす動作が難しくなる |
肩甲挙筋 | 肩甲骨の挙上 | 肩を上げる動作が難しくなる |
第4頸椎(C4)損傷による主な機能障害
- 呼吸: 横隔膜が影響を受けるため、呼吸が困難になる可能性があります。重度の場合、人工呼吸器が必要になることがあります。
- 首と肩の動き: 僧帽筋や肩甲挙筋が影響を受け、首や肩を動かすことが難しくなります。
- 肩の挙上: 肩甲挙筋が影響を受けるため、肩を上げることが難しくなります。
これらの機能障害は、日常生活のさまざまな動作に影響を及ぼし、呼吸、食事、着替え、個人的な衛生活動などの基本的なタスクの遂行が困難になる可能性があります。
第4頚髄損傷の影響と原因
第4頸椎(C4)への損傷は、身体の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があります。損傷の程度や具体的な位置によりますが、効果は軽度の運動と感覚の中断から、損傷箇所以下の完全な麻痺に至るまで範囲が広がります。
即時および長期的な影響
C4が直接損傷を受けると、患者は強烈な初期のショック、いわゆる脊髄ショックを経験する可能性があります。これは、損傷箇所以下の反射の消失、筋力の低下、および排尿または排便の制御の潜在的な喪失を特徴とします。
C4損傷の長期的な影響は、しばしば脊髄が完全に損傷されたか不完全に損傷されたかによります。完全な損傷では、損傷箇所以下の機能がありません – 感覚も自発的な動きもありません。不完全な損傷では、損傷箇所以下に一部の機能があります – 人は一方の肢を他方より動かすことができ、体の部分を感じることができ、または排尿や排便の機能の一部を制御することができます。
C4損傷による運動および感覚の影響は広範で、患者は呼吸が困難になることや首を動かすことに困難を感じることがあります。感覚の変化、例えば無感覚やピリピリ感は、首や肩の周囲に影響を及ぼすことがあります。
自律神経の影響には、血圧の変化、体温調節の困難、排尿と排便の制御の中断が含まれる可能性があります。慢性疼痛も一般的な問題であり、性機能障害もあります。
一般的な原因
C4の損傷は、様々な原因から引き起こされる可能性がありますが、最も一般的なのは自動車事故、高所からの転落、スポーツによる負傷などの外傷的な事象です。非外傷性の原因には、癌、関節炎、または椎間板変性疾患のような脊髄の健康を損なう疾患が含まれる可能性があります。
第4頚髄損傷の臨床症状
患者がC4脊髄損傷を呈した場合、理学療法士や作業療法士は、さまざまな臨床症状や徴候を目にすることが予想されます。具体的な症状は損傷の程度によって異なりますが、いくつかの一般的なパターンが臨床家の指針となります。
臨床的症状 | 詳細説明 |
---|---|
呼吸困難 | C4損傷では横隔膜が影響を受けるため、呼吸が困難になります。重度の場合、人工呼吸器が必要になることがあります。 |
首と肩の麻痺 | 僧帽筋や肩甲挙筋が影響を受け、首や肩を動かすことが難しくなります。これは、日常生活において大きな影響を及ぼします。 |
感覚の鈍化と器用さの低下 | 感覚の変化はC4損傷で一般的で、患者は首や肩の部分で感覚の鈍化、チクチク感、感覚の低下を報告することがあります。細かい運動技能を必要とするタスクに困難を引き起こす可能性があります。 |
排便や排尿の制御の変化 | C4損傷の自律神経への影響により、排便と排尿の制御の変化が起こることもあります。 |
日常生活と生活の質への影響 | これらの変化は患者の日常生活と生活の質に深刻に影響を及ぼす可能性があります。 |
検査方法
画像検査は脊髄と周囲の構造の視覚的な表現を提供し、診断を確認し、損傷の程度を決定するのに役立ちます。
- X線:脊椎のX線は、椎骨の整列を基本的に描くことができ、明らかな骨折や脱臼を特定することができます。これは迅速で非侵襲的な方法ですが、脊髄のような軟部組織の詳細な画像は提供しません。
- コンピュータ断層撮影(CT)スキャン:CTスキャンは、脊椎構造のより詳細なビューを提供します。X線では明らかでない骨折や脱臼を明らかにし、脊髄を圧迫している可能性のある脊髄管の狭窄や閉塞も特定できます。
- 磁気共鳴画像法(MRI):MRIは、脊髄、椎間板、周囲の神経を含む軟部組織構造を評価するための最良の画像技術です。腫れ、出血、ヘルニアの椎間板、またはこれらの構造への他の損傷があるかどうかを示すことができます。
電気生理学的検査
場合によっては、損傷が神経機能に及ぼす影響を評価するために、神経伝導研究や筋電図などの電気生理学的検査が必要になることがあります。これらは、神経または筋肉の損傷を検出し、時間の経過とともに損傷の進行をモニターするのに役立ちます。
臨床評価
C4脊髄損傷を疑われる場合の臨床評価は、患者の詳細な医療履歴の確認、現在の症状の評価、そして損傷の状況から始まります。
- 医療履歴:これには、患者の脊髄の健康または全体的な健康状態に影響を及ぼす可能性がある以前の健康問題、手術、および以前の怪我が含まれます。医療提供者は、回復時間と治療オプションに影響を及ぼす可能性がある喫煙やアルコール摂取のような生活習慣についても尋ねるかもしれません。
- 症状の評価:次に、医療提供者は患者が報告する症状を評価します。これには、疼痛、感覚変化(しびれやピリピリ感)、運動機能の変化、および排尿や排便の制御の変化などの自律神経症状が含まれる場合があります。
- 身体検査:身体検査では、打撲や腫れなどの外傷の兆候を特定し、詳細な神経学的評価を行うことに重点を置きます。この検査では、麻痺の証拠、反射の変化、感覚の喪失または変化をチェックします。
神経学的評価の手順
- 運動検査:医療提供者は、手動筋力テストを使用して筋力を評価します。特に上肢に重点を置きます。この目的のために、米国脊髄損傷協会(ASIA)障害尺度が使用される場合があります。首の筋肉や横隔膜の筋肉群など、C4脊髄レベルに関連する筋肉群が主に注目されます。
- 感覚検査:医療提供者は、C4レベルに関連する特定の皮膚感覚領域での軽い触感と鋭鈍の判別能力を評価します。これは、綿棒(軽いタッチのため)や安全ピン、またはニューロチップ(鋭鈍の判別のため)のような一般的な道具を使って行われます。
- 反射テスト:反射は反射ハンマーを使ってテストされます。これには、上腕二頭筋反射(C5-C6神経根)、腕の屈筋反射(C6神経根)、および上腕三頭筋反射(C7神経根)が含まれます。
- 協調テスト:患者の症状によっては、指先-鼻や迅速な交互手動運動などの微細な運動技能を評価する協調テストも行われる可能性があります。
これらの評価により、患者の神経機能や脊髄損傷の可能性がある位置と程度についての詳細な全体像を提供します。
治療方法
C4脊髄損傷の治療は、複雑な多専門的なプロセスであり、通常は医学的、外科的、リハビリテーション戦略の組み合わせが用いられます。
初期安定化
脊髄損傷後の最初の優先事項は、患者が安定していることを確認することです。これには呼吸と循環をサポートする措置、さらなる損傷を防ぐための脊椎の固定などが含まれます。
薬物療法
安定化後、患者にはメチルプレドニゾロンなどのコルチコステロイドが投与される場合があります。これらの薬物は脊髄周辺の炎症と腫れを減らし、損傷を限定する可能性があります。しかし、コルチコステロイドの使用は議論の余地があり、その使用は治療者の判断とケースの具体的な状況に基づいているべきです。
手術
患者が安定したら、外科的介入を考慮することがあります。手術の主な目的は、脊髄を減圧し、脊椎を安定化することです。減圧は、骨片やヘルニアのあるディスクなど、脊髄を圧迫している物体や組織を除去することを含みます。脊椎の安定化は、多くの場合、金属製のロッド、ネジ、またはプレートを使用して脊椎にサポートと整列を提供します。
リハビリテーション
初期の医学的、外科的介入の後、長期的な治療は主にリハビリテーションに焦点を当てています。物理療法と作業療法は、このプロセスで重要な役割を果たし、患者の筋力、運動能力、日常生活活動の自立性を向上させることを目指します。
合併症の管理
脊髄損傷は、痛み、膀胱と腸の機能不全、呼吸問題などの一連の合併症を引き起こす可能性があります。これらの問題を管理するための対策が必要です。
痛み管理
慢性的な痛みは脊髄損傷患者にとって一般的な問題で、これはNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、神経痛薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などの薬物療法によって管理されることが多いです。必要に応じて、理学療法、行動療法、および代替療法(例えば、鍼治療やマッサージ)も用いられます。
膀胱と腸の管理
脊髄損傷はしばしば膀胱と腸の制御に影響を与え、これに対する戦略は患者により異なります。例えば、いくつかの人々はタイミングスケジュールに基づく排尿(計画的な時刻に排尿すること)、カテーテルを使用するか、または他の補助技術を利用することができます。便秘や排便不全の管理には食事の調整、運動、薬物療法、または排便プログラム(定期的な排便を促進するためのスケジュール)が含まれる場合があります。
呼吸管理
特に高位の脊髄損傷では、呼吸筋の弱さが生じ、これに対する対策が必要となることがあります。これは呼吸訓練、呼吸器具の使用(必要な場合)、または呼吸器感染の予防によって行われます。
第4頚髄損傷(C4損傷)のリハビリテーション
C4損傷は、呼吸機能や首の動きに重大な影響を及ぼす可能性があるため、リハビリテーションは多岐にわたるアプローチが必要です。以下に、具体的なリハビリテーションの方法を挙げます。
1. 呼吸リハビリテーション
- 呼吸訓練: 横隔膜の強化と呼吸筋のトレーニングを行います。呼吸運動、深呼吸練習、インセンティブスパイロメーターを使用して呼吸能力を向上させます。
- 咳支援技術: 自力での効果的な咳が難しい場合、咳を補助する技術や装置を使用します。
- 呼吸器具の使用: 人工呼吸器やCPAP(持続的陽圧呼吸療法)を使用して、呼吸を補助します。
2. 理学療法(PT)
- 関節可動域訓練: 関節の柔軟性を維持するために、受動的な関節可動域訓練を行います。これは、関節の硬直や拘縮を防ぐのに役立ちます。
- 筋力強化訓練: 僧帽筋や肩甲挙筋などの残存筋力を強化するためのエクササイズを行います。
- バランスと姿勢訓練: 座位や立位のバランスを改善し、姿勢を正すための訓練を行います。特に首の安定性を向上させることが重要です。
- 電気刺激(FES): 機能的電気刺激を使用して筋肉を収縮させ、筋力を強化します。
3. 作業療法(OT)
- 日常生活活動訓練(ADL訓練): 食事、着替え、個人的な衛生などの日常生活活動を行うための訓練を行います。適応具や補助具の使用を教え、自立を促します。
- 上肢機能訓練: 上肢の残存機能を最大限に活用するための訓練を行います。手指の微細運動技能を向上させるための練習を行います。
- 適応戦略の指導: 患者が日常生活をより効率的に行うための適応戦略や工夫を指導します。たとえば、電動車椅子や環境制御装置の使用方法などです。
4. 言語療法(ST)
- コミュニケーション訓練: 話すことが困難な場合、代替コミュニケーション手段(AAC)を使用する方法を教えます。これには、文字盤、電子機器、視線追跡デバイスなどが含まれます。
- 嚥下訓練: 嚥下機能が低下している場合、嚥下訓練を行い、誤嚥を防ぎます。
5. 補助具の利用
- 電動車椅子: 自力での移動が難しい場合、電動車椅子を使用して移動を補助します。
- 環境制御装置: 家電製品や照明などを操作するための環境制御装置を使用します。これにより、患者の自立性が向上します。
- スプリントや装具: 手や腕の機能を補助するためのスプリントや装具を使用します。
6. 痛み管理
- 薬物療法: NSAIDs、神経痛薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などの薬物を使用して痛みを管理します。
- 非薬物療法: 理学療法、行動療法、鍼治療、マッサージなどの非薬物療法を併用します。
リハビリテーションの進行
リハビリテーションは患者ごとにカスタマイズされるべきです。リハビリチームは、患者の状態、目標、および生活環境に基づいてプランを調整します。定期的な評価とフィードバックに基づいて、リハビリ計画を見直し、最適化していくことが重要です。
STROKE LABの脊髄損傷者に対するリハビリ効果
治療方法の展望
脊髄損傷の新たな治療法についての研究は現在も進行中です。これらの治療法は、再生、リハビリテーション、二次的な合併症の予防といった、脊髄損傷がもたらす課題に対応することを目指しています。特に活発な研究が進められている分野をいくつか紹介します。
- 幹細胞移植:幹細胞は異なる細胞タイプに発展する独特の能力を持つため、損傷した神経組織を再生するために利用できる可能性があります。脊髄損傷の状況下では、移植された幹細胞が新たな神経細胞やサポート細胞に分化し、損傷した脊髄を修復し、ある程度の機能を回復することを期待しています。この分野の研究は有望ですが、まだ実験段階であり、安全で効果的であることを確認するためには多くの課題が残っています。
- 神経保護薬:神経保護薬は脊髄損傷後の二次的な損傷を防ぐことを目指します。初期の損傷後、生化学的および細胞レベルで一連の反応が起こり、さらなる神経組織の破壊が引き起こされるというプロセス、つまり二次損傷が進行します。神経保護薬により、このプロセスを中断し、損傷の深刻度を低減することができるかもしれません。現在、いくつかの有望な神経保護薬が研究およびテストの段階にあります。
関連論文
C4脊髄損傷のリハビリテーションには、ロボットデバイスやロコモータートレーニングなど、伝統的な方法と革新的なアプローチが含まれています。たとえば、Lokomat®のようなデバイスは体重を支えながらトレッドミルトレーニングを行い、運動機能やバランスの向上を目指します。研究によると、高強度のトレーニングが歩行速度や筋活動の点でより良い結果をもたらす可能性があるとされています (Springer)。
伝統的な方法も依然として重要であり、車椅子でのアクセスが可能な抵抗トレーニング、バランスタスク、有酸素運動などが含まれます。これらのエクササイズは筋力と敏捷性を向上させることを目的としており、必ずしも移動能力の回復に焦点を当てているわけではありません (Springer)。
C4損傷レベルで発生する合併症に対処するための管理戦略も包括的です。C4損傷は横隔膜の機能に影響を与えるため、呼吸と咳のエクササイズが重要です。また、自律神経性反射と呼ばれる重篤で一般的な合併症の管理が重要です。この状態は、損傷レベル以下の刺激によって突然の高血圧などの症状を引き起こします (Flint Rehab)。
また、日常的な機能能力と移動性を向上させるために、作業療法と理学療法の統合が不可欠です。作業療法では、適応ツールの使用や新しい技術の学習が行われ、失われた機能を補うことが目的です。一方、理学療法では、個々の運動能力を評価し、パーソナライズされた運動プログラムを作成して、リアルな回復目標に向けて作業します (Flint Rehab)。
より深い理解と詳細については、SCIRE(Spinal Cord Injury Research Evidence)プロジェクトなどのリソースが、さまざまなリハビリテーション方法の効果に関する包括的なレビューを提供しており、医療専門家や患者にとって良い出発点です (ICORD)。
退院後のリハビリは STROKE LABへ
当施設は脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)