脳梗塞後の片麻痺に対するバイブレーション(振動刺激)の活用方法は?有効性から種類まで – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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脳梗塞後の片麻痺に対するバイブレーション(振動刺激)の活用方法は?有効性から種類まで

振動刺激とは?

振動刺激(vibration therapy)は、特定の周波数で機械的振動を身体の特定の部位に適用することで、筋肉や神経の機能を改善することを目的とした治療法です。この方法は、筋肉の収縮やリラックスを促進し、血液循環を改善し、痛みを軽減することができます。振動刺激は、全身振動(Whole Body Vibration, WBV)と局所振動(Focal Muscle Vibration, FMV)に分けられます。

主な目的と効果

  1. 筋力の向上:

    • 振動刺激は筋肉を反射的に収縮させるため、筋力トレーニングの一環として使用されます。特に、高頻度の振動は筋肉の強度と持久力を向上させることができます
  2. 筋緊張の調整:

    • 振動刺激は、特定の周波数で筋緊張(トーヌス)を調整することができます。低周波の振動は筋収縮を促進し、高周波の振動は筋緊張を低下させる効果があります​ 
  3. 痛みの軽減:

    • 振動刺激は、痛みの感覚を抑える効果があります。これは、振動が感覚受容体を刺激し、痛みの信号を遮断するためと考えられています​ 
  4. 血液循環の改善:

    • 振動が血管を刺激することで血流が促進され、組織の酸素供給が改善されます。これにより、回復プロセスが促進されます

振動刺激の具体的な方法

  • 周波数と強度: 振動周波数は一般的に20Hzから50Hzが使用されますが、特定の目的に応じて調整されることがあります。強度も個々の患者の状態に応じて調整されます​ (MDPI)​​ (BioMed Central)​。
  • 持続時間と頻度: 初めは短時間(1〜2分)から始め、患者の反応を見ながら徐々に延長します。頻度は1日数回から週数回が推奨されます​ (BioMed Central)​。

使用例

  1. 脳卒中後のリハビリテーション:

    • 振動刺激は、脳卒中後の筋肉の麻痺や痙縮の治療に有効です。筋肉や腱に振動を加えることで、筋力の回復や筋緊張の調整が期待されます​ 
  2. 慢性痛の管理:

    • 慢性的な痛みの管理にも使用され、特に腰痛や肩こりの緩和に効果的です
  3. スポーツ医学:

    • アスリートのトレーニングやリカバリーにも使用され、筋力増強や疲労回復をサポートします​

振動刺激は、物理療法の一環として多くの治療現場で使用されており、特に筋肉の機能回復や痛みの管理において有効な手段となっています。

振動刺激に使用される機器は多様で、それぞれに独自の特徴と用途があります。以下の表に代表的な機器とその特徴をまとめました。

機器名 特徴および用途 使用例
全身振動プラットフォーム 全身を振動させるための装置。頻度と強度を調整可能。 筋力強化、バランス改善、血液循環の促進に使用される​ (MDPI)​​ (BioMed Central)​。
焦点筋振動装置 特定の筋肉や腱に直接振動を与える装置。ポータブルで使用しやすい。 脳卒中後のリハビリテーション、筋緊張の調整に使用​ (MDPI)​。
VTSグローブ 手指用の振動刺激デバイス。軽量で持ち運び可能。日常生活で使用できる。 上肢の運動機能改善、触覚認識の向上に使用​ (BioMed Central)​。
振動ローラー 筋膜リリースや筋肉の緩和を目的とした装置。さまざまな硬さや形状がある。 スポーツ後のリカバリー、慢性痛の管理に使用​ (MDPI)​。
振動ベルト 腹部や腰部に巻きつけて使用する装置。持続的な振動を提供。 筋肉のリラックス、脂肪燃焼サポートに使用​ (MDPI)​。
バイブレーションペン 小型で持ち運び可能。特定の小さな部位に振動を加えるための装置。 手指や顔のリハビリ、局所的な筋肉緩和に使用​ (MDPI)​。

 

脳卒中後に活用する際のポイントは?


振動刺激を脳卒中後の麻痺した筋肉に適用する際には、いくつかの重要なポイントがあります。以下に、振動刺激をどの部位に適用するのが効果的かについての考え方を紹介します。

振動刺激の適用部位

腱 vs. 筋

腱への刺激:
腱は筋肉と骨をつなぐ組織で、特に筋腱接合部は感覚受容体が豊富に存在するため、腱への振動刺激は筋紡錘やゴルジ腱器官を刺激しやすく、筋肉の反射的収縮や弛緩を引き起こす可能性があります。腱への振動は、筋のトーヌス(筋緊張)の調節に有効です。

筋への刺激:
筋腹に直接振動を加えることで、筋内の感覚受容体を刺激し、筋収縮を促進したり、筋緊張を緩和したりする効果が期待できます。特に、筋のボリュームが大きい部位に対する振動は、筋全体の活性化に効果的です。

低緊張部位への適用

低緊張(低トーヌス)部位には、振動刺激を加えることで筋の活性化を促進し、筋トーヌスを増加させる効果が期待されます。これは、特に麻痺により筋力が低下している部位に対して有効です。

高緊張部位への適用

高緊張(高トーヌス)部位に対しては、振動刺激が筋緊張の緩和に役立ちます。特に高周波(50Hz以上)の振動刺激は、過度な筋緊張を低下させる効果があるとされています。これにより、筋肉の柔軟性を向上させ、動きの改善が期待されます。

振動刺激の具体的な方法

振動周波数と強度
一般的に、20〜50Hzの振動が筋肉の活性化に効果的とされていますが、具体的な周波数や強度は患者の状態に応じて調整する必要があります​。高周波(50Hz以上)の振動は筋緊張を低下させ、低周波(20Hz以下)の振動は筋収縮を促進する効果があるとされています。

持続時間と頻度
持続時間は短時間(1〜2分間)から開始し、患者の反応を見ながら徐々に延長するのが一般的です。頻度は1日数回から週数回が推奨されますが、患者の状態に合わせて調整が必要です。

文献による支持

文献1: 一部の研究では、腱への振動刺激が筋緊張の調節に効果的であるとされています。例えば、腱の振動刺激は筋の収縮反射を引き起こし、筋のトーヌスを調節するために用いられることが多いです​ (BioMed Central)​。

文献2: 筋腹への振動刺激が直接的な筋収縮を促進し、筋力の回復を支援する効果が報告されています。これは特に低緊張部位に対する刺激として有効です 

まとめ

振動刺激を脳卒中後の麻痺した筋肉に適用する際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。

  • 腱への刺激: 筋緊張の調節を目的とする場合に有効。
  • 筋腹への刺激: 直接的な筋収縮と筋力回復を目的とする場合に有効。
  • 低緊張部位: 振動刺激による筋活性化が期待される。
  • 高緊張部位: 振動刺激による筋緊張の緩和が期待される。

これらのポイントを基に、個々の患者の状態に合わせた振動刺激の適用方法を選定することが重要です。

実際の使用方法の流れ

登場人物

  • 患者さん(山田さん): 60歳の男性。脳卒中後の麻痺が左腕に残っており、筋力低下と筋緊張の調整が必要です。
  • 療法士(田中先生): 経験豊富な作業療法士。山田さんのリハビリテーションを担当しています。

ストーリー


初回評価と計画
  1. 初回評価

    • 田中先生: 「山田さん、今日は初回の評価を行います。左腕の筋力や筋緊張の状態を確認させてください。」

    • 山田さん: 「お願いします。」

    • 田中先生は山田さんの左腕を丁寧に触診し、筋力テストを行います。また、筋緊張の程度を確認します。

  2. 計画立案

    • 田中先生: 「山田さん、評価の結果、左腕の筋力が低下しており、特に前腕の筋緊張が高くなっています。これから振動刺激を使って筋力の回復と筋緊張の調整を行っていきましょう。」
実施開始
  1. 準備

    • 田中先生: 「まず、振動刺激を使うためのデバイスを準備します。これは、振動を与えることで筋肉や腱を刺激するものです。痛みはありませんので安心してください。」
  2. 振動周波数と強度の設定

    • 田中先生: 「山田さん、最初は低周波の20Hzから始めます。これで筋収縮を促進し、筋力の回復を目指しますね。強度は最初は低めに設定して、徐々に上げていきます。」
  3. 低緊張部位への適用

    • 田中先生: 「では、まず低緊張部位である上腕二頭筋に振動を加えていきます。リラックスしてください。」

    • 山田さん: 「わかりました。」

    • 田中先生は振動デバイスを山田さんの上腕二頭筋に当て、1〜2分間の振動刺激を行います。

  4. 高緊張部位への適用

    • 田中先生: 「次に、前腕の筋緊張が高い部分に対して高周波の50Hzの振動を加えます。これで筋緊張を緩和させます。」

    • 山田さん: 「お願いします。」

    • 田中先生は振動デバイスを山田さんの前腕に当て、筋緊張の緩和を促します。

フィードバックと調整
  1. フィードバック

    • 田中先生: 「山田さん、振動刺激はいかがでしたか?痛みや不快感はありませんでしたか?」
    • 山田さん: 「大丈夫でした。少しずつ腕が軽く感じるようになりました。」
  2. 調整と次回の計画

    • 田中先生: 「良かったです。次回は今日のフィードバックを元に、振動の強度や周波数を調整しながら進めていきます。また、持続時間も少しずつ延長していきましょう。週に3回、このようなセッションを続けていきますね。」
継続的なリハビリ
  1. 継続的なアプローチ

    • セッションを重ねるごとに、山田さんの筋力と筋緊張の改善が見られます。田中先生は山田さんの状態に合わせて、振動周波数や強度を調整し、最適なリハビリ計画を提供し続けます。
  2. 最終評価と自主トレーニングの指導

    • 田中先生: 「山田さん、今日の最終評価では筋力がかなり改善しています。自宅でも簡単にできる振動刺激の方法をお教えしますので、ぜひ継続してください。」
    • 山田さん: 「ありがとうございます。これからも続けます。」

このように、振動刺激を用いたリハビリテーションは、患者さんの状態に応じた適切な周波数と強度の設定、継続的な評価と調整を通じて、効果的に進めていくことが重要です。

 

関連論文は?

  1. Focal Muscle Vibration for Stroke Rehabilitation: A Review of Vibration Parameters and Protocols
    このレビュー論文では、焦点筋振動(FMV)のデバイス、パラメータ、プロトコルに焦点を当てて、脳卒中リハビリテーションにおける使用を検討しています。20種類の筋肉が対象とされ、振動周波数は30Hzから300Hz、振動の持続時間は14秒から60分までと幅広く報告されています。このレビューは、FMVの技術改良や標準化プロトコルの開発の必要性を強調しています​ (MDPI)​。

  2. Effects of Vibration Therapy for Post-Stroke Spasticity: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
    このメタアナリシスでは、脳卒中後の痙縮に対する振動療法(VT)の効果を評価しています。13の試験を分析し、VTが痙縮の短期的な軽減に有意な効果を持つことを示しています。特に、20Hz以上の高周波振動が効果的であることが報告されています​ (BioMed Central)​。

  3. Wearable Vibrotactile Stimulation for Upper Extremity Rehabilitation in Chronic Stroke: Clinical Feasibility Trial Using the VTS Glove
    この研究は、慢性脳卒中患者を対象にしたウェアラブル振動刺激デバイス(VTSグローブ)を用いた上肢リハビリテーションの臨床的実現可能性を評価しています。研究では、VTSグローブが使用者の日常生活の中で低負荷かつパッシブにリハビリを促進することを示しています。主要な評価項目として、手の触覚認識や運動機能が含まれています​ (BioMed Central)​。

これらの論文は、振動刺激が脳卒中後のリハビリテーションにおいて有望な手法であることを示しており、特に筋緊張の調整や運動機能の改善に効果があるとされています。

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