【2024年版】パーキンソン病後に姿勢が変形し、腰痛やふとももの痛みで歩けません。治療は?
パーキンソン病後の腰曲がりとは?
パーキンソン病後の腰曲がり:カンプトコルミア(Camptocormia)は、異常な前屈姿勢を特徴とする軸性姿勢変形です。主にパーキンソン病や他の運動障害に関連して発生します。以下に、カンプトコルミアの定義について詳述します。
カンプトコルミアの定義
カンプトコルミアは、立位や歩行中に45度以上の胸腰椎前屈を示す状態と定義されます。この症状は、座位や仰臥位(仰向けに寝た状態)では緩和されることが特徴です (BMJ Journals) (Karger Publishers)。
ピサ症候群は、パーキンソン病のなかで有病率が7.4〜10.3%と推定されており、腰痛、姿勢の非対称性、QOL(生活の質)の低下と関連し、患者の障害に大きな影響を与えています。
パーキンソン病後の腰曲がりと痛みのエピソード
登場人物:
- 金子先生: 経験豊富な理学療法士。
- 丸山さん: パーキンソン病による腰曲がりと神経痛を抱える患者。
第1日: 初回評価と治療計画の立案
丸山さんがリハビリテーション施設に到着すると、金子先生が笑顔で迎えました。
金子先生: 「こんにちは、丸山さん。お越しいただきありがとうございます。今日は、現在の状態を評価し、今後の治療計画を立てるためにいくつかのテストを行います。」
丸山さんはゆっくりと腰をおろし、少し顔をしかめました。
金子先生: 「腰の痛みがひどそうですね。具体的にどの部分が痛むのか教えていただけますか?」
丸山さん: 「はい、最近は特に右腰から右太ももの外側にかけて鋭い痛みが走ります。朝起きるときや、長時間座っているときに特に痛いです。」
金子先生は丸山さんの姿勢を観察し、腰曲がりの程度を確認しました。その後、筋力テストと筋電図(EMG)を用いて、特定の筋肉群の緊張を評価しました。
金子先生: 「丸山さん、筋肉の緊張が強く、特に腰部と臀部の筋肉に負担がかかっていますね。これが神経痛の原因となっている可能性が高いです。具体的な治療計画を立てる前に、もう少し詳しく調べてみましょう。」
次に、腰椎のX線検査とMRIの結果を確認し、腰椎の変形と神経根の圧迫の有無を評価しました。
金子先生: 「MRIの結果から、腰椎の変形が確認できました。神経根も圧迫されていますね。これに対する治療計画を立てましょう。」
丸山さん: 「最近は痛みが強くなってきて、本当に困っているんです。何とか改善できる方法はありますか?」
金子先生: 「もちろんです。まずは筋肉の緊張を緩和するためのストレッチングエクササイズとマッサージから始めましょう。その後、腰椎の安定性を向上させるためのトレーニングを行います。少しずつ改善していくはずです。」
第2回: 治療の開始
金子先生と丸山さんは、治療プランに基づいて最初のリハビリテーションセッションを開始しました。
金子先生: 「今日は、筋肉の緊張を緩和するためのストレッチングエクササイズから始めます。その後、腰部と臀部のマッサージを行います。」
丸山さんは、金子先生の指示に従い、腰部と臀部の筋肉をじっくりとストレッチしました。その間も時折痛みを訴えましたが、金子先生は優しく励ましました。
金子先生: 「無理をしないで、痛みが強くなったらすぐに教えてくださいね。少しずつ進めていきましょう。」
ストレッチングの後、金子先生は慎重にマッサージを行い、筋肉の緊張を緩和しました。
丸山さん: 「マッサージがとても気持ちいいです。少し痛みが和らいだ気がします。」
金子先生: 「よかったです。この調子で続けていきましょう。次に、腰椎の安定性を向上させるためのエクササイズを行います。」
金子先生は、腰椎の安定性を強化するためのコアマッスルトレーニングを丸山さんに指導しました。
第3回: 継続的なリハビリテーション
数週間が経ち、丸山さんは定期的にリハビリテーションセッションを続けました。筋肉の緊張が徐々に緩和され、腰椎の安定性も向上していきました。
丸山さん: 「最近、神経痛が少し軽くなってきました。歩くのも楽になってきた気がします。」
金子先生: 「素晴らしいですね、丸山さん。このまま続けていきましょう。次は、筋膜の炎症を軽減するための超音波療法も取り入れます。」
超音波療法を使用して、筋膜の炎症を軽減し、組織の修復を促進しました。その後、冷却療法を行い、炎症を抑えました。
第4回: 結果の確認と新たな目標設定
数ヶ月後、金子先生と丸山さんは、これまでのリハビリテーションの成果を確認するためのセッションを行いました。
金子先生: 「丸山さん、リハビリを始めてから筋肉の緊張がかなり緩和され、腰椎の安定性も向上しています。神経痛も軽減しているようですね。」
丸山さん: 「はい、本当に助かりました。でも、まだ完全には治っていないので、もっと頑張りたいです。」
金子先生: 「その意気です。次の目標は、さらなる筋力強化と姿勢の改善です。また、新しいストレッチングとエクササイズを取り入れ、再発を防ぎましょう。」
痛みの原因は?
腰曲がり(カンプトコルミア)は、パーキンソン病の患者によく見られる姿勢異常の一種で、前屈姿勢が特徴です。この症状が進行すると、筋肉の不均衡や姿勢の変化が原因で、神経に負担がかかることがあります。その結果、特に右腰から右太ももの外側にかけて神経痛が生じることがあります。
以下に、神経痛の主な原因について神経内科医師に説明します。
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筋肉の不均衡と緊張: パーキンソン病による腰曲がりは、特定の筋肉群に過度の緊張を引き起こします。これが腰部や臀部の筋肉に負担をかけ、神経を圧迫することがあります。
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腰椎の変形: 長期間の異常な姿勢は、腰椎(腰の骨)の変形を引き起こし、神経根に圧力をかける可能性があります。これにより、右腰から右太ももの外側にかけて神経痛が生じることがあります。
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神経根症: 腰椎の変形や筋肉の緊張が神経根(脊髄から出る神経の根元)を圧迫することで、神経根症を引き起こし、神経痛を感じることがあります。
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筋膜の炎症: 腰や臀部の筋膜(筋肉を包む組織)が炎症を起こすと、神経が刺激されて痛みを引き起こすことがあります。
これらの要因を考慮し、患者の症状に対する適切な治療法を検討することが重要です。治療法としては、理学療法、姿勢矯正、疼痛管理、薬物療法、さらには場合によっては手術が検討されることがあります。
患者さんの具体的な症状と状態に応じた個別のアプローチが必要ですので、詳細な評価と治療計画を立てるためには、神経内科医師と密に連携することが不可欠です。
痛みの評価方法は?
筋肉の不均衡と緊張
評価方法:
- 筋力テスト: 腰部および臀部の筋力を測定し、どの筋肉群が過度に緊張しているかを確認します。
- 筋電図(EMG): 筋肉の電気活動を測定し、異常な筋緊張や筋肉の過活動を検出します。
- 姿勢評価: 患者の姿勢を観察し、腰曲がりの程度や筋肉の不均衡を視覚的に評価します。
腰椎の変形
評価方法:
- X線検査: 腰椎の構造を確認し、変形の有無や程度を評価します。
- MRI: 腰椎の詳細な画像を取得し、神経根への圧迫や椎間板の状態を評価します。
- CTスキャン: 骨の詳細な断面画像を取得し、骨の変形や椎間孔の狭窄を確認します。
神経根症
評価方法:
- 神経学的検査: 反射、感覚、運動機能を評価し、神経根の圧迫による症状を特定します。
- 直腿挙上テスト(SLRテスト): 仰向けで脚を上げ、痛みの出現を確認して神経根症を疑います。
- 神経伝導速度(NCV)検査: 神経の伝導速度を測定し、神経根の圧迫による伝導障害を確認します。
筋膜の炎症
評価方法:
- 触診: 痛みのある部位を触診し、炎症や圧痛の有無を確認します。
- 超音波検査: 筋膜の状態を評価し、炎症の有無を確認します。
- 炎症マーカー: 血液検査で炎症マーカー(例えば、C反応性タンパク質(CRP))を測定し、炎症の存在を確認します。
これらの評価方法を用いて、患者の症状の原因を特定し、適切な治療計画を立てることが重要です。各評価方法の結果に基づいて、リハビリテーションや薬物療法などの治療法を適切に選択し、症状の軽減と生活の質の向上を図ります。
治療、リハビリテーションは?
筋肉の不均衡と緊張
専門的治療:
- 理学療法: ストレッチングや特定の筋力強化エクササイズを行い、筋肉のバランスを改善します。理学療法士と協力して、個別の運動プログラムを作成します。
- マッサージ療法: 緊張している筋肉をリラックスさせ、血流を改善するためにマッサージを行います。
- 薬物療法: 筋弛緩剤や抗痙攣薬を使用して、筋肉の緊張を軽減します。
- ボトックス注射: 過活動な筋肉にボトックスを注射し、筋肉の収縮を抑制します。
腰椎の変形
専門的治療:
- 保存療法:
- ブレース(補助具): 腰椎のサポートを提供し、姿勢を改善するために使用します。
- 痛み管理: NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やオピオイドなどの薬物療法を使用して、痛みを管理します。
- 理学療法: 腰椎の安定性を向上させるためのエクササイズを行い、腰部の筋力を強化します。
- 脊椎矯正手術: 保存療法が効果を示さない場合、脊椎矯正手術を検討します。手術により、圧迫されている神経を解放し、脊椎の構造を修正します。
神経根症
専門的治療:
- 薬物療法:
- 神経痛治療薬: ガバペンチンやプレガバリンなどの薬を使用して、神経痛を軽減します。
- 抗炎症薬: NSAIDsを使用して、神経根の炎症を抑えます。
- 硬膜外ステロイド注射: 神経根の周囲にステロイドを注射し、炎症を軽減します。
- 理学療法: 神経根の圧迫を軽減するための姿勢調整やストレッチングエクササイズを行います。
- 手術: 保存療法が効果を示さない場合、椎間板ヘルニアや骨棘の除去手術を行い、神経根の圧迫を解消します。
筋膜の炎症
専門的治療:
- 物理療法:
- 超音波療法: 超音波を使用して、炎症を軽減し、組織の修復を促進します。
- アイシング: 炎症を軽減するために、患部を冷やします。
- マッサージ療法: 炎症を引き起こしている筋膜の緊張を緩和するためにマッサージを行います。
- 薬物療法: NSAIDsを使用して、筋膜の炎症を抑えます。
- リハビリテーション: 筋膜の柔軟性を回復し、再発を防ぐためのストレッチングエクササイズを行います。
これらの治療方法を組み合わせて、患者の症状を軽減し、生活の質を向上させることを目指します。各患者の状態に応じて、個別の治療計画を立てることが重要です。
STROKE LABでのリハビリ効果は?
原因となる体幹や脊柱、大腿分の筋のコンディションや伸張を引き出しながら、その後の運動、バランス訓練へと繋げていきます。
上記内容は、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。
退院後のリハビリは STROKE LABへ
当施設は脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。
パーキンソン病におけるカンプトコルミアの治療に関する重要な研究論文
以下は、パーキンソン病に関連するカンプトコルミア(腰曲がり症状)についての研究論文とその概要です。各リンクから詳細な情報を確認できます。
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パーキンソン病におけるカンプトコルミアの外科的治療:系統的レビューとメタアナリシス
- 概要: この研究では、パーキンソン病患者に対するカンプトコルミアの外科的治療法を系統的にレビューし、特に深部脳刺激療法(DBS)に焦点を当てています。メタアナリシスでは、成功率に影響を与える可能性のある要因(年齢やカンプトコルミアの期間など)を特定しました。DBSは有望な結果を示していますが、患者ごとに結果が異なることが明らかになりました (jns)。
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パーキンソン病におけるカンプトコルミア: 定義、疫学、病因、治療法
- 概要: このレビューでは、カンプトコルミアの定義、パーキンソン病患者における発生率(3%から18%)および病因について詳述しています。中央および末梢のメカニズムが病因に寄与している可能性があると考えられています。治療法としては、薬物療法、非薬物療法、および外科的アプローチが挙げられています (BMJ Journals)。
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パーキンソン病におけるカンプトコルミア: 文献レビュー
- 概要: この論文は、カンプトコルミアの臨床現象についてレビューしています。カンプトコルミアは、立位や歩行中に悪化し、仰臥位では改善される特徴があります。病因としては、体幹筋の局所性ミオパシー、軸性ジストニア、および薬物誘発の可能性が挙げられています。現在の治療戦略とその効果についても評価しています (Karger Publishers)。
論文へのリンク:
- パーキンソン病におけるカンプトコルミアの外科的治療 (jns).
- パーキンソン病におけるカンプトコルミア: 定義、疫学、病因、治療法 (BMJ Journals).
- パーキンソン病におけるカンプトコルミア: 文献レビュー (Karger Publishers).
これらの論文は、パーキンソン病におけるカンプトコルミアの理解を深めるために重要な情報を提供しています。各論文のリンクから、詳細な情報をぜひご覧ください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)