【2024年版】ボルグスケールの評価表からメリット!リハビリテーション中止基準まで – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【2024年版】ボルグスケールの評価表からメリット!リハビリテーション中止基準まで

ボルグスケールとは?

ボルグスケール(Borg Scale)は、運動や作業中の主観的な労作の強度を評価するために使用される評価ツールです。スウェーデンの心理学者、グンナー・ボルグ(Gunnar Borg)によって開発されました。このスケールには主に以下の2つのタイプがあります。

  • ボルグRPEスケール(Rating of Perceived Exertion)6-20スケール:このスケールは6から20までの範囲で評価します。主に運動生理学の研究やトレーニングの現場で使用されます。数値が心拍数におおよそ対応しており、例えば「6」は非常に軽い運動、「20」は非常に激しい運動を意味します。

  • ボルグCR10スケール(Category Ratio 10 Scale)0-10スケール:このスケールは0から10までの範囲で評価します。0は「全く感じない」、10は「最大の努力」とされます。特に臨床の現場やリハビリテーションで広く使用されます。

6-20ボルグスケール(Rating of Perceived Exertion, RPE)

数値 感覚の対応
6 非常に楽である
7 非常に軽い
8 非常に軽い
9 軽い
10 軽い
11 ややきつい
12 ややきつい
13 きつい
14 きつい
15 非常にきつい
16 非常にきつい
17 とてもきつい
18 とてもきつい
19 非常に非常にきつい
20 非常に非常にきつい

0-10ボルグスケール(Category Ratio Scale, CR10)

数値 感覚の対応
0 全く楽
1 非常に軽い
2 軽い
3 やや軽い
4 ややきつい
5 きつい
6 やや非常にきつい
7 非常にきつい
8 とてもきつい
9 非常に非常にきつい
10 最大限にきつい

これらの評価表を用いることで、患者の主観的な運動強度をより具体的かつ体系的に評価することができます。

どのような疾患に適応するの?

ボルグスケールの使用例として、以下のような疾患に対する評価や治療に役立ちます。

1. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

解説: COPDの患者は、運動中に呼吸困難を感じやすいため、運動強度の調整が重要です。ボルグスケールを用いることで、患者が主観的に感じる呼吸困難の程度を評価し、無理のない範囲での運動療法を計画できます。

使用方法: 患者に運動中の呼吸のきつさをボルグスケールで評価してもらいます。例えば、6-20スケールで「13-14」(ややきつい)程度を目標に設定します。これにより、適切な運動負荷を設定し、運動耐容能を徐々に向上させることが可能です。

2. 心不全

解説: 心不全患者は、運動中の疲労感や息切れが強くなるため、運動負荷の調整が重要です。ボルグスケールを使用して、患者が感じる労作の強度を評価し、心臓に過度の負担をかけないようにします。

使用方法: 運動療法中、患者に感じる労作の強度をボルグスケールで評価してもらいます。目標とする評価は「11-13」(ややきつい)とし、これを超えない範囲で運動を行うよう指導します。これにより、安全かつ効果的な運動プログラムを設計できます。

3. 慢性疼痛(慢性腰痛、線維筋痛症など)

解説: 慢性疼痛患者は、運動中に痛みが増すことを避けるため、運動強度の慎重な調整が必要です。ボルグスケールを使って、運動中の主観的な痛みや疲労感を評価し、無理のない運動計画を立てます。

使用方法: 運動中、患者に主観的な痛みの強度をボルグスケールで評価してもらいます。例えば、「8-10」(軽い)を目標に設定し、痛みが強くならない範囲で運動を行います。これにより、運動の継続性と効果を高めます。

4. 心筋梗塞後のリハビリテーション

解説: 心筋梗塞後の患者には、徐々に運動強度を増していくリハビリテーションが重要です。ボルグスケールを使用して、運動中の疲労感や労作感を評価し、適切な運動負荷を調整します。

使用方法: 心筋梗塞後のリハビリプログラムでは、患者に運動中の労作感をボルグスケールで評価してもらいます。「11-13」(ややきつい)を目安に運動強度を設定し、徐々に耐容能を向上させます。これにより、安全に運動能力を回復させることが可能です。

5. パーキンソン病

解説: パーキンソン病患者は、運動中の疲労や筋肉のこわばりを感じやすいです。ボルグスケールを用いて主観的な運動強度を評価し、無理のない運動プログラムを構築します。

使用方法: 患者に運動中の疲労感や筋肉のこわばりの程度をボルグスケールで評価してもらいます。「11-13」(ややきつい)を目安に運動強度を調整し、無理のない範囲での運動を行うよう指導します。これにより、運動の継続と症状の改善を目指します。

これらの疾患に対するボルグスケールの使用は、患者の主観的な評価を基にした個別化された運動療法の設計に役立ちます。適切な運動負荷の調整を行うことで、治療効果を最大化し、患者の安全を確保することができます。

ボルグスケール(Borg Scale)のメリットとデメリット

メリット デメリット
簡便で直感的な評価: 患者自身が簡単に理解し、運動強度を評価できる​  主観的評価: 患者の感じ方に依存するため、個人差が大きい​ 
広範な適用性: 心肺リハビリテーションやスポーツトレーニングなど、様々な場面で使用可能 慣れが必要: 正確な評価には患者がスケールに慣れる必要がある​ 
非侵襲的: 心拍数モニタリングなどの生理学的測定に比べて非侵襲的​  主観性によるバイアス: 患者が過小または過大評価する可能性がある​ 
コスト効果が高い: 特別な機器や装置を必要とせず、低コストで実施可能​  心理的要因の影響: 気分や心理的状態が評価に影響を与えることがある​ 
即時フィードバック: リアルタイムでの評価が可能で、即座に運動負荷を調整できる​  スケールの曖昧さ: 特に初心者には、数値の感覚が曖昧でわかりにくい場合がある​ 

リハビリテーションの中止基準は?

リハビリテーションを実施しない場合の基準 基準
(1) 安静時脈拍 40/分以下または120/分以上
(2) 安静時収縮期血圧 70mmHg以下または200mmHg以上
(3) 安静時拡張期血圧 120mmHg以上
(4) 労作性狭心症 発作が確認された場合
(5) 心房細動 著しい徐脈または頻脈が確認された場合
(6) 心筋梗塞発症直後 循環動態が不良な場合
(7) 著しい不整脈 発作が確認された場合
(8) 安静時胸痛 胸痛が持続する場合
(9) 動悸・息切れ・胸痛 リハビリテーション実施前にこれらの症状が確認された場合
(10) めまい、冷や汗、嘔気等 座位でこれらの症状が確認された場合
(11) 安静時体温 38℃以上
(12) 安静時酸素飽和度(SpO2) 90%以下
リハビリテーションを途中で中止する場合の基準 基準
(1) 中等度以上の呼吸困難、めまい、嘔気、胸痛、頭痛、強い疲労感等 これらの症状が出現した場合
(2) 脈拍 140/分を超えた場合
(3) 運動時収縮期血圧 40mmHg以上の上昇
(4) 運動時拡張期血圧 20mmHg以上の上昇
(5) 頻呼吸 30回/分以上の呼吸回数が確認された場合
(6) 不整脈 発作が増加した場合
(7) 徐脈 発作が確認された場合
(8) 意識状態の悪化 悪化が確認された場合

この表は、患者の安全を最優先に考えたリハビリテーションの実施および中止基準を明確に示しています。医療スタッフはこれらの基準を遵守し、患者の状態に応じた適切な対応を行うことが重要です。

実践場面

登場人物:

  • 金子先生: 経験豊富なリハビリテーション療法士
  • 丸山さん: 心筋梗塞後のリハビリテーション中の患者


第1章: 初回評価

丸山さんが金子先生のリハビリテーションルームに入ってきました。心筋梗塞後の回復を目指して、今日は初めての運動療法の評価が行われます。

金子先生: 「こんにちは、丸山さん。今日は運動中の感じ方を評価するためにボルグスケールを使います。このスケールは6から20までの数字で、6が『非常に楽』、20が『非常にきつい』を示します。運動中に感じる疲労感や呼吸のきつさをこのスケールで教えてください。」

丸山さん: 「わかりました。ちょっと緊張しますが、よろしくお願いします。」

第2章: ウォーミングアップ

金子先生は、丸山さんに軽いウォーミングアップを指示しました。丸山さんはトレッドミルで5分間のウォーキングを行います。

金子先生: 「どうですか、丸山さん?このウォーキングはどのくらいきついですか?」

丸山さん: 「うーん、今は8ぐらいですかね。まだ楽です。」

金子先生: 「それは良いですね。次に少し速度を上げてみましょう。」

第3章: メインの運動

ウォーミングアップの後、金子先生は丸山さんに適度な強度の運動を指示します。丸山さんはエアロバイクに乗り、15分間のサイクリングを行います。

金子先生: 「丸山さん、途中で疲れを感じたら教えてください。ボルグスケールで評価をお願いします。」

10分経過後、丸山さんは少し息が上がってきました。

丸山さん: 「今は12くらいです。ややきつい感じです。」

金子先生: 「いいですね。このままもう少し続けてみましょう。」

第4章: クールダウンと評価

運動が終わり、丸山さんはクールダウンのために軽いストレッチを行います。

金子先生: 「お疲れ様でした、丸山さん。全体的な運動のきつさをボルグスケールで教えてください。」

丸山さん: 「運動全体を通して、13くらいですかね。ややきつい感じでしたが、無理はしていません。」

金子先生: 「素晴らしいですね。今日の運動の強度は適切でした。次回もこの調子で進めていきましょう。」

第5章: 点数化とフィードバック

金子先生は、丸山さんの主観的な評価をもとに運動強度を点数化し、次回のセッションに反映させます。

  • ウォーミングアップ: 8(軽い)
  • メインの運動: 12(ややきつい)
  • 全体の評価: 13(ややきつい)

金子先生は、丸山さんのフィードバックをもとに次回の運動プログラムを調整し、より効果的で安全なリハビリテーションを提供します。

金子先生: 「丸山さん、今日の運動強度は非常に良かったです。次回もこの調子で進めていきます。引き続き頑張りましょう。」

丸山さん: 「ありがとうございます、金子先生。今日の運動は少しきつかったですが、次回も楽しみにしています。」


このように、金子先生と丸山さんは、ボルグスケールを用いて主観的な運動強度を評価しながら、効果的なリハビリテーションを進めていきます。ボルグスケールを用いることで、患者の安全を確保しながら、個別に最適化された運動プログラムを提供することが可能です。

リハビリテーション中止のストーリー

シーン1: 初回評価

金子先生は、丸山さんの病室を訪れました。丸山さんは心筋梗塞の発症直後で、今日初めてのリハビリテーションが予定されています。

金子先生:
「丸山さん、今日はリハビリの初日ですね。まずは安全に行うために、いくつかの基準を確認させていただきます。」

金子先生は、丸山さんの安静時脈拍と血圧を測定しました。

金子先生:
「丸山さん、安静時脈拍は70/分、収縮期血圧は120mmHg、拡張期血圧は80mmHgですので、リハビリを安全に始められます。」

シーン2: リハビリ開始

丸山さんは、金子先生と一緒に座位から立ち上がり、歩行訓練を始めました。金子先生は、丸山さんの体調を注意深く観察しています。

金子先生:
「歩行中に息切れや胸痛が出た場合はすぐに教えてくださいね。」

丸山さん:
「わかりました、金子先生。」

シーン3: 中止の決断

リハビリが進むにつれて、丸山さんは次第に顔色が悪くなり、呼吸が荒くなってきました。

丸山さん:
「金子先生、息が苦しくなってきました…。」

金子先生はすぐにリハビリを中止し、丸山さんを椅子に座らせました。安静時脈拍と酸素飽和度を再度測定しました。

金子先生:
「丸山さん、お疲れ様でした。安静にしてくださいね。脈拍が140/分を超えて、酸素飽和度も90%以下になっていますので、今日はここでリハビリを終了します。」

シーン4: アフターケア

金子先生は丸山さんの状態を記録し、医師に報告しました。

金子先生:
「丸山さん、今日は無理せず、ゆっくり休んでください。次回のリハビリは体調が良くなってから再開しましょう。」

丸山さん:
「ありがとうございました、金子先生。またお願いします。」


このように、金子先生はリハビリテーション中に患者の状態を注意深く観察し、安全基準に基づいて適切なタイミングで中止の判断を行いました。これにより、丸山さんは安全にリハビリを進めることができました。

 

エビデンスは?

ボルグスケールと主観的運動強度に関する関連研究論文

  1. 抵抗運動中の主観的運動強度の収束的妥当性に関する系統的レビューとメタ分析

    • 概要: この研究は、ボルグ6-20スケールとCR-10スケールを含む様々な主観的運動強度(RPE)スケールの妥当性をレビューしています。異なるRPEスケール間での一貫性が高いことが示され、運動モードに関係なく結果の妥当性に影響を与えないことが強調されています。
    • リンク: Sports Medicine – Open
  2. ボルグの主観的運動強度評価と運動強度の生理学的指標との関連

    • 概要: この論文は、ボルグのRPEスコアと酸素摂取量や心拍数などの生理学的パラメータとの関係を調査しています。強い相関が確認され、運動や臨床の現場で運動強度のモニタリングと調整にボルグスケールを使用することが支持されています。
    • リンク: European Journal of Applied Physiology
  3. 主観的運動強度は心肺運動負荷試験中の複数の生理学的パラメータと相関する

    • 概要: この研究は、心肺運動負荷試験中の主観的運動強度と生理学的反応との相関を調査しています。RPEが筋酸素摂取量や心血管反応とよく相関し、運動強度を評価する上で有効なツールであることが示されています。
    • リンク: SpringerLink
  4. ボルグスケールの主観的運動強度評価と増分運動中の脚筋の酸素脱飽和との関係

    • 概要: この研究は、ボルグスケールRPEと増分運動中の脚筋の酸素脱飽和との関係を探っています。ボルグスケールが筋酸素レベルを反映し、様々な運動形態での運動強度を評価する上で有効であることが確認されました。
    • リンク: SpringerLink
  5. ボルグCR-10スケールを用いた無酸素閾値における主観的運動強度の評価

    • 概要: この論文は、無酸素閾値における主観的運動強度の評価にボルグCR-10スケールを使用しています。特に持久力スポーツや臨床現場での評価ツールとしてCR-10スケールが有効であることが支持されています。
    • リンク: Journal of Sports Science and Medicine

これらの論文は、ボルグスケールが様々な運動および臨床シナリオで有効であることを示しており、その信頼性と妥当性を強調しています。

上記内容は、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。

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