【2024年版】Wolf Motor Function Test(WMFT) 評価項目から実施方法、エビデンス、リハビリまで
Wolf Motor Function Test(WMFT)とは?
**Wolf Motor Function Test (WMFT)**は、上肢運動機能を評価するための標準化された評価法です。特に脳卒中後や外傷性脳損傷後の患者に対して使用され、特にリハビリテーションの効果を評価するために用いられます。以下にWMFTの主な特徴と構成要素を説明します。
主な特徴
- 評価対象: 主に脳卒中後や外傷性脳損傷後の上肢機能の評価。
- 評価時間: 評価には約30~45分かかります。
- 信頼性と妥当性: 多くの研究で信頼性と妥当性が確認されています。
評価方法
- 各タスクは0から5のスコアで評価され、0が全く動かせないことを示し、5が完全に正常に動かせることを示します。
- 各タスクの完了時間も計測され、時間が長いほど運動機能の制限が大きいとされます。
Wolf Motor Function Test(WMFT)の評価表
WMFTは全部で17項目から成り、うち15項目がタイム測定のタスクで、2項目が筋力測定のタスクです。
ウルフ・モーター・ファンクション・テスト(WMFT)は、正式には17の課題から構成されています。しかし、実際には筋力に関連する2つの課題を除いた15の課題の結果が特に注目されることが多いです。
準備と設定
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テスト環境の準備
- 静かな場所を選び、必要な用具(テーブル、箱、重り、鉛筆、缶、クリップ、チェッカー、カード、ダイナモメーター、鍵、タオル)を揃える。
- 患者が座る椅子の高さを調整し、足が床にしっかりつくようにする。
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説明とデモンストレーション
- テストの目的と各タスクの説明を簡潔に伝える。
- 各タスクの実演を見せることで、患者が正しい動作を理解できるようにする。
必要物品
必要な物品 | 調整後のサイズ・重さ |
---|---|
テーブル | 長さ30cm |
椅子 | 座面の高さ40〜45cm |
ベッドサイドテーブル | 高さ60〜75cm |
箱 | 高さ25cm、幅と奥行き20〜25cm |
手首重り | 0.5kg〜 |
飲料缶 | 350ml |
鉛筆 | 長さ18cm |
クリップ | 長さ5cm |
小さい円盤 | 直径3cm |
メモカード | サイズ7.6cm x 12.7cm |
鍵と鍵穴 | – |
タオル | – |
バスケット | |
ダイナモメーター(握力測定用) | – |
ストップウォッチ(各タスクの計測用) | – |
ビデオカメラ(オプション、ビデオ記録用) | – |
手順
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材料をすべて準備したら、テストを開始できます。
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各タスクに最大120秒を割り当ててください。「どうぞ」と言ってタスクを開始し、「止めてください」と言って終了します。120秒が経過したら終了です。
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患者の負担を軽減するため、まず少ない影響を受けた腕から始め、次に影響を受けた腕をテストします。
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以下の順序でタスクを実行します:
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前腕をテーブルに置く(横向き)
- 設定:肩を使って前腕をテーブルに置く
- 口頭指示:「前腕をテーブルに置いてください。」
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前腕を箱に置く(横向き)
- 設定:肩を使って前腕を高さ25cmの箱に置く
- 口頭指示:「前腕を箱に置いてください。」
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肘を伸ばす(横向き)
- 設定:肘を伸ばして28cm先のテーブルに置く
- 口頭指示:「肘を伸ばしてテーブルに置いてください。」
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肘を伸ばす(重り)
- 設定:前腕外側で押しながら、0.5kgの重りをテーブルに移動させる
- 口頭指示:「重りを押して肘を伸ばしてください。」
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手をテーブルに置く(正面)
- 設定:手をテーブルに置く
- 口頭指示:「手をテーブルに置いてください。」
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手を箱に置く(正面)
- 設定:手を箱に置く
- 口頭指示:「手を箱に置いてください。」
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重りを箱に置く
- 設定:最も重い可能な重りを箱に置く
- 口頭指示:「重りを持って箱に置いてください。」
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物を取って戻す
- 設定:0.5kgの重りを取って戻す
- 口頭指示:「重りを取って元に戻してください。」
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缶を持ち上げる
- 設定:缶を持ち上げ、握りながら口元に持ってくる
- 口頭指示:「缶を持ち上げてください。」
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鉛筆を持ち上げる
- 設定:親指、人差し指、中指の3本の指を使って鉛筆を持ち上げる
- 口頭指示:「鉛筆を持ち上げてください。」
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クリップを持ち上げる
- 設定:親指と人差し指を使ってクリップを持ち上げる
- 口頭指示:「クリップを持ち上げてください。」
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小さな円盤を積む
- 設定:小さな円盤を中心のチェッカーに積む
- 口頭指示:「小さな円盤を積んでください。」
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カードをひっくり返す
- 設定:親指と人差し指を使ってカードをひっくり返す
- 口頭指示:「カードをひっくり返してください。」
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握力(ダイナモメーターを使用)
- 設定:ダイナモメーターを使って握力を測定する
- 口頭指示:「ダイナモメーターを握ってください。」
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鍵を回す
- 設定:鍵を180度回す
- 口頭指示:「鍵を回してください。」
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タオルをたたむ
- 設定:タオルを持ち、半分にたたむ
- 口頭指示:「タオルをたたんでください。」
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バスケットを持ち上げる
- 設定:バスケットを持ち上げてテーブルに置く
- 口頭指示:「バスケットを持ち上げてください。」
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)