vol.42:麻痺側足部の位置で異なる立ち座りの有効性:脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
麻痺側を後ろに引いた足部の位置で行う立ち座りが有効 The effect of foot position and chair height on the asymmetry of vertical forces during sit-to-stand and stand-to-sit tasks in individuals with hemiparesis?PubMedへ Roy G et al:Clin Biomech (Bristol, Avon). 2006 Jul;21(6):585-93
内 容
概 要
●脳卒中の非対称な運動パターン(asymmetrical motor pattern)は両側身体の繫がりを必要とする活動(立ち上がりなど)のパフォーマンスに影響を与える
●本研究では,以下の足部の位置で12名の陳旧性片麻痺患者の自然な速度の立ち座りを見ている
①spontaneous:自然な位置 ②symmetrical:対称的な位置 ③asymmetrical with the affected foot placed backward:麻痺側足部を後ろに引いた非対称な位置 ④asymmetrical with the unaffected foot placed backward:非麻痺側足部を後ろに引いた非対称な位置
方 法
●フォースプレートと椅子の座面で圧を測定
●それぞれの足部の位置で,2種類の高さ設定位置から立ち座りを行う(地面から大腿骨外顆までの長さと同じ100%,少し高座位の120%)
●それぞれの状態における垂直方向への力が,4つの時期で測定された(始め・足部と大腿部への荷重・離殿と殿部の着地・動作の終了時)
結 果
●遂行時間範囲は,2.31秒から3.69秒で,着座動作の方が立ち上がりよりも長くなった
●垂直方向への力は,概ね動作の中間時期が最も大きくなった
●被検者がまだ座面に接している時にでも,大腿足部ともに荷重の非対称性は見られた
●麻痺側を後ろに引いた非対称姿勢は,どちらの高さでも麻痺側への荷重を生じさせた
●解釈:荷重の非対称性は,それぞれ離殿前や着座前から始まっている
●麻痺側足部を後ろに引いた姿勢は,荷重の対称性を生み出す事が分かった
●臨床の評価及び治療場面で,足部の位置を考慮する必要がある
考 察
●立ち上がりと着座の違いはそれぞれの課題と感覚入力に関連する,運動制御のタイプの違いに依存している
●立位からの着座は,身体を下げる際に遠心性様式の筋収縮制御を必要とし,視覚による補助も受けられない
●そのため座面につく際にはより多くの注意を必要とするため,着座には時間がかかる
Fig.1:座位→立位,立位→座位における麻痺側と非麻痺側の垂直反力非対称性の比較
明日への臨床アイデア
●文中引用にSTSを把握・治療する上で参考になるものが多かったので以下に記載
~片麻痺症例の立ち上がりの特徴~
①立ち上がりに必要な時間が延長する ?(Yos-hida et al., 1983; Engardt and Olsson, 1992; Hesse et al., 1994a; Malouin et al., 2004)
②質量中心が前後左右に変異する ?(Yoshida et al., 1983; Hesse et al., 1994a; Lee et al., 1997; Cheng et al., 1998; Chou et al., 2003)
③荷重パターンが非対称となる ?(Engardt and Olsson, 1992; Engardt, 1994a,b; Cheng et al., 1998; Eng and Chu, 2002; Chou et al., 2003; Malouin et al., 2004)
④立ち上がり課題中の麻痺側と非麻痺側の重心割合は転倒群では平均して24%から53%であり?(Hesse et al., 1994a; Cheng et al., 1998; Hesse et al., 1998; Chou et al., 2003) ,非転倒群では44%から48%であった?(Cheng et al., 1998)
⑤コントロール群と比較した着座の際には麻痺側荷重は41%で15%も低値であった ?(Malouin et al. 2004)
⑥パフォーマンスの低下は,麻痺と姿勢コントロール低下に関連していた ?(Eriksrud and Bohan-non, 2003; Lord et al., 2002)
●上記報告にもあるように,ただ麻痺側に…非麻痺側に荷重をかければいいということではなく,常に重心との関係性をもちながら立ち座りを分析する必要性がある
●たとえ,非麻痺側に荷重はできていても重心が麻痺側に偏移してれば,Pushing様の姿勢反応になる可能性もあり得るため,他部位との協調関係をみながらの治療が肝要であることを学んだ
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)