vol.44:【片麻痺患者のAPA課題における具体的な修正とは】 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!!
PDFでもご覧になれます。→PDF
カテゴリー
脳科学,姿勢制御
タイトル
片麻痺患者のAPA課題における具体的修正 Task-specific modulation of anticipatory postural adjustments in individuals with hemiparesis?PubMedへ Slijper H et al:Clin Neurophysiol. 2002 May;113(5):642-55
内 容
概 要
●麻痺側にマニュアルサポートを加え,自身で動いてもらう課題の際,開始時の動揺方向における変化を片麻痺患者の麻痺側・非麻痺側で調査
方 法
●下肢と体幹の両側の電極活動とその周囲の力の反応が,片麻痺患者10人(皮質・皮質下の障害が原因)の右・左麻痺患者
●全員が杖なしで立位と歩行が可能な患者で計測
●課題は基本的な荷重を離したり,障害を受けていない側の上肢で手を伸ばして握るといったもの
●荷重は体幹の前方あるいは側方で離され,障害を受けた上肢に接触面を与える状況と与えない状況で実施
Fig.1:実験方法(Slijperら2002)
結 果
●APAは片麻痺患者の特に麻痺側において減少を認め,動揺方向へのAPAの調整は型にはまらないパターンであったり,ゆっくりなものであった
●荷重のある物体をリリースした後のCoPの編位は短く,正常人と類似していた
Fig.2:筋活動パターンの比較(Slijperら2002) (a)健常者群 (b)脳卒中群
Fig.3:健常者群と脳卒中群の筋活動タイミングの比較(Slijperら2002) 患者のヒラメ筋と脊柱起立筋の活動が接触にて減少している.つまり,抑制性メカニズムが働いていることを意味する
まとめ
●片麻痺患者での自身で動いていく動揺への予測的な準備の能力は減少しており,それらは姿勢の安定のために変化した戦略をするのかもしれない
●患者は素早い運動をする直前に非麻痺側側に重心移動し,非麻痺側のAPAで適応しようとしてしまう
●特に装具や杖はその助長を生み出す
●この環境の変化への要求に対するAPAのマルアダプティブな適応は,脳卒中後の回復を遅らせ,転倒リスクを高める方向へと導いてしまう
私見・明日への臨床アイデア
●タッチのようなリファレンスを与えた際のAPAを見ているのは,リファレンス(参照枠)の重要性を説明することに繋がるように思える
●今回は麻痺側のAPAの減少であったが,今後は非麻痺側に焦点を当てた文献も探索していく必要があると感じた
●このStudyのように非麻痺側で荷重を支える際には,APAの中でもpAPAが麻痺側でまず作動する必要性があり,その現象学的な要素として麻痺側へのWeight Transがまず発生する必要性がある
●その結果,非麻痺側aAPAが作動することで姿勢動揺に対応できる
●つまりは,この条件下で麻痺側のAPAを発火できない背景には,被験者自体が機能的な麻痺側へのWeight Transを行う能力が乏しいのではないか?ということも示唆される
●神経科学と現象学を繋ぐことのできる可能性をもったPaperStudyであるように思う
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
論文サマリー 一覧はこちら
脳卒中自主トレ100本以上 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)