vol.45:眼球運動は歩行改善のための重要因子!? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,バランス
タイトル
進行性核上性麻痺(PSP)患者における歩行改善の為のバランスと眼球運動トレーニング Balance and eye movement training to improve gait in people with progressive supranuclear palsy: quasi-randomized clinical trial?PubMedへ Zampieri C et al:Phys Ther. 2008 Dec;88(12):1460-73
内 容
概 要
●この研究の目的は,進行性核上性麻痺=PSPは,垂直方向の眼球麻痺と歩行不安定性に対し,バランストレーニングと眼球運動と視覚的な気づきトレーニングを合わせて行うのと,バランストレーニングのみを行うので,どれくらい効果が違うのかを調査している
方 法
●参加者は19 名の中等度障害を受けているPSP患者
●2.4m歩行とタイムド“アップ&ゴー”テストで分析
Fig.1:実験の流れ
眼球治療の内容
①視覚的な気づきトレーニング
●参加者は部屋の中央に立ち,セラピストは物体を提示し(例えばテニスボール),テニスボールが何処に隠されるのか注目させる
●参加者はその場でターンして目や頭部を全ての方向へ動かして部屋に隠された物体を探さなくてはならない
●セラピストは物体を見つけるまでにどれくらいかかるかを数える
●参加者は次ぎのときにはなるべく早く自分の時間を刻むように励まされ,(回数を多くするには,参加者がどれくらい早いかによる)このエクササイズは8から10分で行われる
②バイオフィードバックトレーニング
●セラピストと参加者は向かい合って座る
●参加者は赤外線眼球運動記録装置を装着し,イラストレーションを見る(内在の)
●もう一人のセラピストは,参加者の後方におり,かむ棒をもっている(参加者の頭部を安定させる為)
●セラピストの合図の上で,参加者は眼球運動を動かす ・最大限の水平・垂直の随意的なサッケード,振幅の集束;的がないところで行う ・垂直下方のターゲッドへのサッケード(セラピストが持っているペンの先),速度への集束
③コンピュータートレーニング
●サッケードは目の前のコンピュータースクリーンで練習される
●コンピュータープログラムは不規則に右もしくは左へ矢印で違った場所を指すように表される
●参加者は矢印の方向へ出来るだけ早く眼球を動かすようにし,矢印に相当するキーボードをクリックする
●矢印はスクリーン上の色々な所に現れるため,この活動は全ての方向への眼球運動を高める
●多くの正解答・誤解答の平均と反応時間は,実験の終わりに手に入る
●参加者は4~5回の施行を行い,それぞれの施行ごとに2分間設けた
④プラットフォームの脚をきっかけにしたトレーニング
●参加者はプロジェクタースクリーンの2.5m後方に面している木製のプラットフォームの前方に立つ(高さ17.5cm,幅57cm,奥行き48cm)
●刺激反応の模範は,注意とステッピングを統合して使われた
●矢印はスクリーンに2秒間投射され(1度に1つ),そして参加者は矢印を見た後でプラットフォームへステップしなければならない
●矢印とともに,ハイピッチ音もしくはローピッチ音が再生される
●認知的課題はどちらの下肢を使うか決定するという規定に付随する
●ハイピッチ音が流れた時,参加者は矢印のように同じ足をステップすることを前提とした
●ローピッチ音が流れた時,参加者は矢印と反対の足をステップすることを前提とした
●それぞれの矢印で,1ステップする事を前提とした
●3~4週目のセラピー(セッション9と12)においては,ランダム時間での後方へ動揺させるバランス活動の課題が増加して導入されている
●この課題は50分で終了する
結 果
●眼球治療介入群で,歩行立脚時間と歩行スピードの改善が見られ,対照群ではステップ長のみに改善が見られた
●眼球運動のエクササイズがバランストレーニングの補助として働くことを発見した
Fig.2:PSP患者と健常者における歩行とバッテリー検査の介入前後の比較 Zampieri C et al?原著Pdfへ
私見・明日への臨床アイデア
●PSP患者には,探索的な眼球運動をバランス練習と組み合わせていく必要がある事が示唆されるStudyである
●Sensory Integrationの観点からも視覚への介入はとても重要であることを窺わせる知見
●PSPのような著名な眼球運動障害をもった症例に対して,それが仮に不可逆的なものであったとしても,「眼球の動き」という現象的な視点でなく,動かないながらも視覚的に気づき(Awareness)を患者が持とうとしているか?それが歩行などの活動時に少しでも発揮できているか?によってバランス戦略に大きな影響を与えるかもしれないことを示唆してくれている
●実験の中でも視覚と歩行時におけるSteppingをリンクさせるような試みにもあるように,随意的な眼球運動を促した後,活動・動作下での無意識的なコントロールが難病患者であっても必要不可欠であり,それ以外の疾患では尚一層のことが言えるのではないと感じた
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)