vol.54:fNIRSでみる脳の活動と歩行分析 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,歩行
タイトル
正常歩行とステッピングにおける皮質調整:fNIRSを用いての検討 Cortical control of normal gait and precision stepping: an fNIRS study?PubMedへ Koenraadt KL et al.:Neuroimage. 2014 Jan 15;85 Pt 1:415-22
内 容
概 要
●近年,歩行中の皮質制御のリアルタイムイメージングが機能的近赤外線スペクトロスコピー(fNIRS)によって可能となっている
●従来まで,的を正確にステップする様な複雑な歩行についての皮質領域の活動についてはまだよく理解されていない
●過去の動物やヒトの実験では,感覚運動皮質(S1/M1)や補足運動野(SMA),前頭前野(PFC)に余分な活動を引き起こすと考えられている
●本研究では,PFC/SMA/M1/S1における血行力学変化をfNIRSを用いてとらえた
Fig.:運動皮質と前頭前皮質における配置設定(Koenraadt KL et al.:2014)
方 法
●従来のfNIRSを用いた歩行の研究とは対照的に,参照チャネル(表面血行力学干渉の修正)を用いることで最適化
●11名の被験者が無作為に3km/hのトレッドミル(正常歩行)を10施行行い,3km/hの左右どちらかにステップするための点が次々と現れるトレッドミルを(正確なステッピング)10施行行う
●歩行はおよそ35秒で,残りの25–35は静止立位を保つ
結 果
●PFCは,どちらの歩行課題ともに開始直前に活性化した
●PFCの余分な活動は,正確なステッピング課題の前半に見られた
●SMAの活動は,主に両方の課題の前に見られた
●対照的に,M1/S1はどちらの課題とも静止立位時との変化が見られなかった
●SMAとM1/S1においては,正常歩行時と正確なステッピング課題の間に優位な差が見られなかった
●正確なステッピング課題を含む歩行中のM1/S1における活性化の不足は,歩行が主に皮質下の自律的な活動に依存しているため,運動皮質の活動が静止立位と歩行に寄与する部分が少ない為と考えられる
Fig.:皮質別にみた血流動態の反応性(Koenraadt KL et al.:2014) HbO(酸素化ヘモグロビン)/HbR(脱酸素化ヘモグロビン)/NW(通常歩行時)/PS(ステッピング時)
まとめ
●前頭前野は注意が要求される課題の時に活性化すると知られている(Wood and Grafman,2003;Yogev-Seligmann et al.,2008).これは,fNIRSでも同様に見られる
●姿勢課題の例では,Mihara(2008)らがfNIRSで前頭前野の活動が,身体に外乱が与えられる前の警告時と同時に見られると報告
●この予測的な活性化は,注意が向けられることに関連しており,とくに背外側前頭前野dorsolateral PFCに見られる(Luks et al.,2007;Mihara et al.,2008)
●このタイプの活性化は,複雑さが増す課題遂行時にも見られる
●近年,Holtzerら(2011)は前頭前野の活動が通常の歩行に比べて,会話しながらの歩行時に増加するという報告も行っている
私見・明日への臨床アイデア
●前頭前野,補足運動野ともに活動するのは歩行の前.例え30秒強の短い歩行でも,狭い屋内の移動時に求められる正確なステッピングも,皮質が関与するのは初めの方だけなのかもしれない
●前頭葉の障害患者では,皮質の再編成を待つ間に,皮質下の活動を十分に機能する様に治療を進め,脳の可塑性が歩行開始が命令出来る様になる頃に歩けなくならない様にするべきではないだろうか
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)