vol.60:姿勢反応における大脳皮質のコントロール 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,姿勢制御
タイトル
姿勢反応における大脳皮質のコントロール
Cortical control of postural responses?PubMedへ
Jacobs JV et al:J Neural Transm (Vienna). 2007;114(10):1339-48
内 容
概 要
●外部の動揺に対する姿勢反応に対する皮質関与のエビデンスを報告したPaper
●潜在期間の特異反応について定義はせず,一般的な用語(例:initial vs Lateなど)を姿勢反応における皮質関与の根拠に基づいて討議している
内 容
●すばやい随意運動をする際に先行して現れる姿勢反応は,脊髄伸張反射に比べ滞在が長く,皮質の関与が見込まれる
●オートマティックな姿勢制御はshort-latency(SL)=短い滞在,medium-latency(ML)=中等度の滞在,long-latency(LL)=長い滞在の3つが世間一般的に言われ,可能性として皮質間の伝達は滞在時間を長くしてしまうと言われている
●動揺へのステップ反応やリーチなどはinitial condition(手すり安全な床面など)に基づいて変化する
Fig.1:姿勢動揺に対する潜在時間でみた皮質コントロールの神経回路モデル(Jacobs JV et al:2007?PubMedへ)
●姿勢動揺が起きて最初に反応するのはMidbrain(中脳)で,Synergyがつくられた後,Latephaseにて皮質が関与しステッピングやリーチングが出現する(環境への適応=平衡反応)
●除脳ネコの実験のおいては,抗重力位を保つのは脳幹レベルで十分であったと報告している
●過去10年,オートマティックな姿勢コントロールは神経生理学において単脊髄ループか,皮質を介すループなのか議論が続いている
●調査では,除脳猫において最初のinitiateは脳幹から起こるようだと報告している
●動揺への最初の反応に皮質間は含まないが,反応過程の中(late phase)で皮質間は含まれるかも知れない(リーチ・代償的なステッピング反応など)
●運動野が損傷されるとスッテッピング反応がでなくなることが実験で明らかになっている
●動揺の40~50ms後に第1次感覚野の反応が見られる
まとめ
●早急な反応には皮質の関与は乏しいが,環境に適応していくようなバランスに必要となる
●姿勢制御において,皮質は皮質脊髄路を介す直接的な関与と脳幹を介す間接的な関与があり,スピードや柔軟性のあるバランスに貢献している
私見・明日への臨床アイデア
●大脳皮質に障害のある患者のバランス反応に着目する際の参照となる
●Stepping strategyを過剰にとる患者は皮質優位のバランスとして考えてよいかもしれない
●aAPAは皮質の関与が非常に重要になってくるのではないか?
●皮質優位の姿勢戦略はStrategyの発現までにラグを要し,即時の姿勢応答に適応していくことが困難となることが容易に推測できるため,皮質・皮質下でのコントロールの配分?をセラピストが評価しながら姿勢制御を学習させていくことが望ましい
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)