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【2024年最新】肥満が足部・姿勢制御に及ぼす影響、Foot Posture Indexまで解説:リハビリ論文サマリー

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論文内容

カテゴリー

運動学

 

タイトル

足部とコアスタビリティに及ぼす肥満の影響 Effects of body mass index on foot posture alignment and core stability in a healthy adult population?PubMedへ AlAbdulwahab SS et al:J Exerc Rehabil. 2016 Jun 30;12(3):182-7

 

内 容

はじめに

足のバイオメカニクスとコアスタビリティ (CS)は、立位と歩行の質において重要な役割を果たします。

肥満(過体重)を有する人の数は、多くの国で急速に増加しています。全成人の3分の1以上が現在体重超過または肥満です(Kitahara et al,2014)。肥満は、筋骨格疼痛および傷害のリスクに関連しています(Peltonen et al.2003)。このようなBMIの増加に関連する異常は、CSおよびFoot Posture Index(FPI)に影響を及ぼし得ます。

※肥満、Foot Posture IndexFPI)については下記で詳細解説。

 

目 的

本研究の目的は、健康成人におけるFoot Posture Index(FPI)およびコアスタビリティに対する肥満指数(BMI)の影響を調べることでした。

 

方 法

平均年齢24.3±6.4歳、25~29.9の体重超過のBMI値を有する健康な成人被験者39名が本研究に参加した。

 

Foot Posture Index(FPI)を用いて足の生体力学を分析した。 コアスタビリティはplank testにてどれくらい耐えられるかという方法で評価した。

 

結 果

スピアマン順位相関係数は、BMIFPIおよびCSの両方と有意な相関を示しました。

 

fig.AlAbdulwahab SS et al:2016)?PubMedへ

 

 

まとめ

これらの知見は、肥満女性は扁平足の傾向があり、肥満の男性はより発達した足を有する傾向があることを観察した以前の研究と一致している(Aurichio et al。2011)。

 

脂肪量は、肥満者における偏平足の原因である可能性が示唆されている(Wearing et al。、2012)。

 

高レベルの筋肉内脂肪は、健康な高齢者の機能低下と関連している(Hicksら、2005)。また、脂肪組織は肥満個体の腹部に蓄積することが知られている。

 

増加するBMIとFPIとの間の負の関係の1つの可能な説明は、体重が過剰であると足の機械的負荷が大きくなることである。

 

本研究は、体重過多のBMIがfoot posture alignment とCSに影響を与えると結論付けた。この研究結果は、予防的リハビリテーションの際に考慮すべきである。

 

肥満についての解説

肥満の定義は、体脂肪の過剰蓄積により健康に悪影響を及ぼす状態を指します。

 

1. 体格指数(BMI)による定義

肥満の診断に最も一般的に使用される指標は、BMIBody Mass Index)です。BMIは体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で計算されます。

WHOBMI分類:

  • 18.5未満:低体重
  • 18.5–24.9:正常体重
  • 25.0–29.9:過体重(前肥満)
  • 30.0–34.9:肥満(クラスI
  • 35.0–39.9:高度肥満(クラスII
  • 40.0以上:極度肥満(クラスIII

2. 身体組成と肥満

BMIは肥満の簡便な指標ですが、筋肉量が多い人や体脂肪が少ない人にも当てはまるため、限界があります。そのため、身体組成を評価する他の指標も重要です。

腹部肥満:

  • ウエスト周囲径:腹部肥満は心血管疾患や糖尿病のリスクを高めるため、ウエスト周囲径(Waist Circumference, WC)も重要な指標です。
    • 男性:102 cm以上
    • 女性:88 cm以上

ウエスト・ヒップ比(WHR):

  • ウエスト周囲径をヒップ周囲径で割った比率も肥満評価に使用されます。
    • 男性:0.90以上
    • 女性:0.85以上

3. 脂肪分布と肥満

体脂肪の分布も肥満の評価において重要です。特に内臓脂肪の蓄積が健康リスクを高めることが示されています。

画像診断:

  • CTスキャンやMRI:これらの画像診断技術を用いて内臓脂肪と皮下脂肪の分布を評価することができます。内臓脂肪が多いと、メタボリックシンドロームや心血管疾患のリスクが増加します。

4. メタボリックシンドロームと肥満

メタボリックシンドロームは、肥満に関連する複数の代謝異常が合併した状態を指します。以下の基準のうち3つ以上が該当する場合、メタボリックシンドロームと診断されます。

メタボリックシンドロームの診断基準(ATP III):

  • 腹部肥満:上記のウエスト周囲径基準
  • 高トリグリセリド血症150 mg/dL以上
  • HDLコレステロール血症
    • 男性:40 mg/dL未満
    • 女性:50 mg/dL未満
  • 高血圧130/85 mmHg以上
  • 高血糖:空腹時血糖110 mg/dL以上

5. 疾患との関連

肥満は以下のような多くの健康リスクと関連しています。

  • 心血管疾患:高血圧、冠動脈疾患、心不全など
  • 糖尿病:特に2型糖尿病
  • がん:乳がん、大腸がん、子宮内膜がんなど
  • 呼吸器疾患:睡眠時無呼吸症候群など
  • 整形外科的問題:変形性関節症など
  • 精神的健康:うつ病、低いQOLQuality of Life)など

 

Foot Posture Index(FPI)についての解説

Foot Posture IndexFPI)は、足の姿勢を評価するための臨床的評価ツールです。FPIは、足部の生体力学的特性やアライメントを評価するために使用され、足部の異常や機能障害を特定するのに役立ちます。特に、足部の過回内や過回外の評価に有効です。

画像引用元:Resrech Gate

FPIは図のように6つの項目から構成され、それぞれが5段階のスコアリングシステムを持っています。各項目は-2から+2のスコアで評価され、総合スコアが-12から+12の範囲で示されます。

臨床的意義

FPIは、足部の姿勢異常やアライメントの評価において信頼性と妥当性が高いとされています。特に、以下の点で臨床的に重要です。


  1. 足部障害の診断

    • 足部の過回内や過回外は、足底筋膜炎、後脛骨筋腱障害、シンスプリントなどの足部障害のリスク要因となります。FPIはこれらのリスク評価に役立ちます。

  2. 治療計画の策定

    • 足部の姿勢に基づいたインソールや矯正装具の設計、リハビリテーションプログラムの作成に役立ちます。

  3. スポーツ医学

    • アスリートの足部姿勢評価を通じて、スポーツパフォーマンスの向上や傷害予防に貢献します。

 

明日への臨床アイデア

肥満が足部に影響することが上記で分かりましたね。肥満を改善するためには、科学的な知識と臨床的なアプローチが必要です。まずは肥満の原因について考えてみましょう。

肥満の原因

肥満は単一の原因で発生するものではなく、下記のような多因子性の疾患です。

a. 遺伝的要因

  • 遺伝的素因:特定の遺伝子変異や多型が肥満に関連していることが知られています。

  • 家族歴:肥満は家族内での発生が多く、遺伝的要因と生活環境の影響が考えられます。

b. 環境的要因

  • 食生活:高カロリー、高脂肪、低栄養価の食事は肥満の主要因です。加工食品やファーストフードの摂取が増えています。
  • 身体活動:現代の座りがちな生活スタイルが肥満を助長しています。

c. 行動的要因

  • 食事パターン:過食や間食の習慣、ストレス食いなどが肥満に寄与します。
  • 運動不足:定期的な身体活動の不足がエネルギー消費の低下を招きます。

d. 生理的要因

  • ホルモンの影響:レプチンやグレリンなどのホルモンが食欲やエネルギー代謝に影響を与えます。
  • 代謝異常:インスリン抵抗性や基礎代謝率の低下が肥満に関与します。

次に、肥満に対する治療アプローチについて学ぶ必要があります。下記に、一般的な治療アプローチを挙げていきます。

3. 治療アプローチ

ライフスタイルの変更

  • 食事療法:低カロリー、高栄養価の食事への変更が推奨されます。食事計画は個別にカスタマイズされるべきです。
    • カロリー制限:一般的には500–1000 kcal/日のカロリー制限が推奨されます。
    • バランスの取れた栄養摂取:野菜、果物、全粒穀物、低脂肪タンパク質を含むバランスの取れた食事。
  • 運動療法:有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが効果的です。
    • 週150分以上の中等度の有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど。
    • 筋力トレーニング:週2回以上の全身の主要な筋群を対象としたトレーニング。

行動療法

  • 行動変容技術:食行動の記録、目標設定、ストレス管理、社会的支援などが含まれます。
  • 認知行動療法(CBT):食事や運動の習慣を改善するための心理療法。

薬物療法

  • FDA承認の肥満治療薬:オルリスタット、ロルカセリン、フェンテルミン/トピラマート複合薬、ナルトレキソン/ブプロピオン複合薬、リラグルチドなど。
    • 作用機序:食欲抑制、脂肪吸収抑制、代謝促進など。
  • 適応基準BMI30以上、またはBMI27以上で併存疾患がある場合。

外科治療

  • 減量手術(bariatric surgery):高度肥満(BMI 40以上、またはBMI 35以上で併存疾患がある場合)に適応されます。
    • 手術法:ルーワイ胃バイパス術、スリーブ状胃切除術、調節式胃バンド術など。
    • リスクと効果:体重減少の持続効果があり、併存疾患の改善が期待されますが、手術リスクも考慮する必要があります。

4. 患者教育とサポート

  • 継続的な患者教育:栄養、運動、行動変容に関する情報提供。
  • サポートグループやカウンセリングの利用。

 

患者の体重が身体制御に及ぼす影響を考慮すると、また臨床が変わるかもしれませんね。

 

執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表

・国家資格(作業療法士)取得

・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務

・海外で3年に渡り徒手研修修了

・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆

 

併せて読みたい関連記事はこちら

 

●vol.98:フットコアと動作の関係性 脳卒中/脳梗塞)リハビリに関わる論文サマリー

 

●vol.131:ウインドラス機構と足部アライメントの関係とは? 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー

 

●vol.391:肥満だと歩行開始にどのうような影響を及ぼすのか?脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

 

 

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