脳卒中サバイバーの立ち上がりの特徴 転倒しやすいヒト、しにくいヒト その4 1秒間の垂直力移送
お疲れ様です。
STROKE LABの金子です。
昨日はじめてのstroke labで、ゲストを招いての「GIちゃんねる撮影」で、興奮しすぎて夜眠れず、眠気と戦っています。
本日も脳卒中の方々の立ち上がりの特徴シリーズ、お送りします。
今日のテーマは、「脳卒中サバイバーの立ち上がりの特徴 転倒しやすいヒト、しにくいヒト その4 1秒間の垂直力生成の割合」
第1回→こちら
第2回→こちら
第3回→こちら
前回の垂直抗力の話の続きといいますか、1秒間での垂直抗力の割合を算出したものが、4番目の数値です。
この上から四番目の項目はそれほど深く考えるものではなく、単純に健常人は立ち上がりの秒数が短く、垂直抗力の数値が高いので、それを割り算した数値といっていいでしょうか。
まとめると、
「健常人は1秒間にたくさんの垂直抗力を生み出せるということです」
健常者:85.96 転倒歴のない脳卒中サバイバー:55.23 転倒歴のある脳卒中サバイバー23.78
という明らかに有意差のある数値となっています。
つまり!! このポイントを抑えておくと、脳卒中の方の立ち上がりの本質を見抜けるということです。
動作分析の際のポイントとして、一定の秒数間にどれだけ抗重力活動(垂直抗力)を生み出せるかが、立ち上がりの本質的な自立要素につながるということです。
これまでの条件の様に、
1:立ち上がりに時間がかかる
2:立ち上がり時に両下肢に左右差がある
3:最大の垂直抗力の生成
これらのまとめが4といえます。
両下肢荷重に左右差があれば、安定した垂直抗力を生み出せません。 時間が遅ければ垂直抗力の秒数間の移送率は乏しくなります。 最大の垂直抗力の生成が低いほど、屈曲傾向が強く、安定した立位になりません。
いかがでしょうか??
日常のトランスファー場面、 立ち上がり場面、 トイレ動作場面などを思い浮かべてください。
今担当している患者さんで、上記項目に問題のある方はいないでしょうか?
例えば代償的に股関節屈曲が強く、前のめりに立ち上がりを実施し、FIMで立ち上がり、移乗動作が自立している方。
本当の意味での自立でしょうか?動作の効率性、次の動作(立ってものをとる、歩き出す)に移行する際のシークエンスに問題が出ていないでしょうか?
昨日述べてませんでしたが、 3の最大の垂直抗力を生み出せるポイントってなんでしょうか?
色々あると思いますが、僕はアンクルのトルクを生成できるかはひとつ重要だと思っています。
よく体重計に乗る際、勢いよく立つと、体重がびゅーんと上がり、その後落ち着きますよね?
僕らは床面に体重以上の力を伝えることで、その反力を利用して立ち上がるのです。
これが脳卒中の方々のように、おそるおそるゆっくり立ってみてください。
体重計の躍動は少ないと思います。
アンクルのトルク、ロッカーファンクション機能を生み出すには、股関節戦略ではなく足関節戦略を作れないといけません。
それらの点を踏まえて、翌日の臨床に取り組むと、評価の仕方が変わるかもしれません。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)