vol.169:脳卒中患者の嚥下障害と舌のトレーニング 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳卒中・神経系
タイトル
脳卒中者の嚥下障害に対するIowa Oral Performance Instrumentを使用した舌のトレーニングの効果
Effect of tongue strength training using the Iowa Oral Performance Instrument in stroke patients with dysphagia
?pubmed Ji-Su Park, J Phys Ther Sci. 2015 Dec; 27(12): 3631–3634.
本論文を読むに至った思考・経緯
・利用者様に嚥下に問題がある方がおり、治療を考えるうえでの一助になればと思い、今回本論文を読もうと思った。
論文内容
論文背景・目的
・舌は嚥下に重要な役割を果たしており、食物の咀嚼、食塊形成、咽頭への送り込みなどに関与している。
・脳卒中者では舌の感覚、運動障害を呈し、誤嚥や食思低下につながるため、適切な舌のトレーニングは必須である。
・硬口蓋に舌を押し付けるトレーニングは舌の基本的な筋力強化練習であるが、その抵抗の強さやトレーニング量などは定量化されていない。
・Iowa Oral Performance Instrument (IOPI Medical LLC, Redmond, WA)は舌のトレーニング時に抵抗量を設定でき、フィードバックを与えることができる。
図:Iowa Oral Performance Instrumentより引用
・本研究は脳卒中者の嚥下障害に対し、舌のトレーニングが与える影響を調べる。
研究方法
・50名の嚥下障害を呈する脳卒中者を2群に分けた。
・対照群は一般的な嚥下障害に対する治療、IOPI群は一般的治療に加え、IOPIでのトレーニング30分/日行った。
・IOPIで舌の前部・後部で硬口蓋に2秒間押し付けるのを日に10回×5セット行う。
・介入は週5回、6週間続けた。
・VF検査にて嚥下機能の変化をみた。嚥下の過程を14分割し、それぞれの機能を評価する。0-100点で評価され、点数が大きいほど重症度が高い。14分割したものを簡便にするため、口腔期、咽頭期の大きく二つに分け、またその合計スコアの3つの項目で介入の効果を比較した。
研究結果
表:実験結果
・IOPI群では介入前後に有意差がみられた(介入後に舌の前部・後部ともに圧迫力が強かった)。しかし、群間の有意差は出なかった。
・介入群ではVF検査においても介入前後の差が見られた(口腔期、咽頭期、合計スコア)。対照群では口腔期と合計スコアで有意に改善していた。群間の差は見られなかった。
私見・明日への臨床アイデア
・IOPIを使用することで嚥下機能に改善が見られた。機器を各利用者様に用意するのは難しいが、簡便なトレーニングとして硬口蓋に舌の前部・後部を押し付けることは自主トレとして指導しやすいと感じた。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中自主トレ100本以上 一覧はこちら
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)