vol.340:腓腹筋と膝伸展の関係性 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
複雑な動作での二関節筋の特徴的活動
The unique action of bi-articular muscles in complex movements.
?PubMed G J van J Anat. 1987 Dec; 155: 1–5.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
立ち上がりの伸展相においてハムストリングスの活動があると他論文でみた。股関節伸展に作用するのはわかるが、膝関節に対しては教科書通りに屈曲に働くのであろうか。その場合、ハムストは大腿四頭筋に対してブレーキをする筋になってしまう。伸展相において、ハムストが膝伸展を起こすことはあるのだろうか。二関節筋の機能について興味があり、本論文を読みたいと思った。
内 容
背景・目的
・二関節筋はエネルギー消費を節約する役割があると言われている。
・大腿直筋と腓腹筋はジャンプ動作中にエネルギーを近位から遠位に移行するとある。例えば膝伸展が足底屈と同時に起こる場合、腓腹筋が多大な力を出す一方で、膝伸筋も底屈トルクの一部として力を発揮している。
・スピードスケートのような底屈のないプッシュオフの場合、膝を完全に伸展することが出来ない。これらの知見から導かれる仮説は、二関節筋は膝関節を回転させる力を身体重心を平行移動させる力に変換するということではないか。
・この仮説を立証するために、ジャンプ動作を解析する。
方法
・10名の被験者のカウンタージャンプ動作を右方向から動画解析した。解析はプッシュオフ相(身体重心が上方へ動き出したところ~足部が地面を離れる直前まで)のみ
・関節角度、角速度、関節モーメント、床反力を計測した。また、外側広筋、大腿直筋、腓腹筋外側、内側頭の筋電位を測定した。
結果
図:実験結果 G J van J Anat (1987)より引用
※グラフはプッシュオフ相のみ。相の始まりは身体重心が上方へ向かいだしたところから。
※グラフは外側広筋と腓腹筋のみ。大腿直筋は外側広筋とほぼ同じ活動だったため割愛。
※下図は角速度を表している。VHAは膝関節の角速度、VAGは足関節の角速度、VHGはVHAとVAGを合わせた値となっている。正の値は膝伸展方向、足底屈方向となっている。
・VHAの最大値は平均して膝関節屈曲58°で見られた。
・VAGは-70msで急激に上昇した。一方でVHAは減少していた。
私見・明日への臨床アイデア
・ジャンプ動作-70msに大腿直筋と外側広筋はピークに達し、腓腹筋の活動が高まる。筆者によると、膝伸筋だけでは膝完全伸展は得られず、腓腹筋が後半働くことで膝伸展を得ているのだという。
・ジャンプ動作のプッシュオフ相と歩行時の立脚中期は要求される力に差はあるが、重心を上方移動させるという点で類似している。そう考えると、臨床にて膝を伸ばせず軽度膝屈曲で歩く利用者は膝伸筋だけの影響でなく、腓腹筋の働きが弱いから生じる現象かもしれない。腓腹筋を鍛えて反応をみてみたい。
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)