改めて下肢二関節筋の役割について考える
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
CKC下肢伸展時における二関節筋ハムストリングスと腓腹筋の役割 The role of the biarticular hamstrings and gastrocnemius muscles in closed chain lower limb extension. ?PubMed Cleather DJ J Theor Biol. 2015 Jan 21;365:217-25. doi: 10.1016/j.jtbi.2014.10.020.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・Cleather DJ (2015)の後半に、下肢二関節筋の役割について他の論文を踏まえた考察がある。 ・臨床の中で単関節筋を優位に活動させ、二関節筋が協調的な働きを欠いていることをよく体験する。その為、二関節筋の重要性を日々感じており、立ち上がり時の大腿直筋やハムストリングス、腓腹筋などハンドリングする機会が多い。また、特にリーチではコントロールも十分に配慮しなければならず、二関節筋が生む関節トルクについて重要な知見を述べている論文があったため、読むこととした。
内 容
背景・目的
・joint-based analysisと segment-based analysisを比較し下肢二関節筋の役割を考えること。
結果
・二関節筋が存在する理由を以下の3つにまとめた(主にjoint-based analysisにて説明されていた)。
- 二関節筋は力を近位から遠位の関節に伝える
例えば、腓腹筋が膝を伸展した場合、それは足関節の伸展ともとれる(下腿が後方へ移動するため、足関節では背屈(伸展))。この下行性に力が伝達されるメリットは、
①肢節が体幹に近くなることで過剰なモーメントアームを作らず、少ない力で体を動かせること
②完全伸展を得る際に各関節一斉に伸展するのではなく、近位から順に伸展した方が効率的であること
③外力の方向を制御できること(単関節筋のみでは不可能とある)
- 二関節筋は関節の安定性を向上させる
例えば、腓腹筋は脛骨を伸展させるが、大腿骨に対しては屈曲作用がある。
代償的に大腿四頭筋の収縮が必要となり、屈筋・伸筋で共同収縮が生じる。この作用により関節安定性が向上すると著者は述べている。
- 二関節筋は筋の長さ変化を減らす
長さ変化を減らすことで、筋が遅い速度で収縮することになる。遅い収縮速度は強い力を効率的に生むことができる、と述べられている。
下図はジャンプ動作中に二関節筋の収縮速度が単関節筋より大きく遅いことを示している。
図:ジャンプ動作中の単関節筋、二関節筋の収縮速度の違い Cleather DJ (2015)より引用
私見・明日への臨床アイデア
・二関節筋によって動作が効率的に行われそうな印象があるが、メカニズムをよく理解できない。二関節筋がある場合とない場合で下肢運動がどう違うのか、詳しく理解したい。 ・また、アームの長さは姿勢により変わるため、その変化具合をまとめた論文を見てみたい。
職種 理学療法士
下肢のハンドリングに役立つ動画
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)