Vol.360:運動イメージの効果とは!?‐研究レビューと評価法について‐ 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学系
タイトル
運動イメージの研究レビューと評価法について
Motor Imagery Training After Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials.PubMed Guerra ZF et al.(2017)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・運動イメージを臨床応用する際に、まずは現在の研究結果の集約されたものを読もうと思ったため。
内 容
背景・目的
・motor imagery [MI] は、神経学的な病態を有する方の運動機能を改善することを示唆する多くの研究があります。
・我々は、脳卒中後のMIの有効性に関連する文献を評価するためのsystematic reviewおよびmeta analysisを行った。
方法
・PubMed、Web of Knowledge、Scopus、Cochrane、およびPEDroのデータベースを検索しました。
結果
・研究間でプロトコルの異質性が高かった(異質性とは、簡単に言えばメタ解析の結果のバラつき具合のことです。)
・そのほとんどの研究は、低品質の研究であるが、MIの利点を示している。品質にかかわらず、すべての研究のメタアナリシスは、バランス、下肢/歩行、および上肢に関連するアウトカムに関する全体的な分析に有意差を示した。
・ほとんどの研究では参加者は従来型の運動療法および/または作業療法と併せてMIを実施した。 Dicksteinらによる研究のみが、実験群の介入としてMIのみを使用し、他の介入とMIを組み合わせることは記載しなかった。
・合計で11の(34.4%)の研究が30分のMIを使用したが、最小時間は5分であった(1つの研究でのみ)。
・脳卒中患者12人(37.5%)は4週間の介入を受けたのに対し、9人(28.1%)の研究では介入期間は6週間であった。
・MIの介入プロトコルは、MI戦略(例えば、視覚または運動感覚の映像)または反復回数に制限を受けることなく、特定の動きまたはタスクのMIを行った。 また、映画、オーディオテープ、または動きや想像上の課題に関連する映像など、映像を促進する戦略の有無に制限はありませんでした。
・このレビューに含まれている、MIの生活活動への影響を調査したすべての研究は、適切な方法論的品質を有しており、介入群と対照群との間に有意差がないことを見出した。
・Functinal Reach Testを使用したバランス評価では対照群と比較してMI群で統計学的に好ましい差異が見出されたが、Berg balance scaleでは見られなかった。
・歩行能力評価では、TUGと歩行速度による評価では有意差が認められたが、10メートル歩行試験では有意差が認められなかった。
・ARATおよびFugl-Meyer Upper Limb(FMUL)サブスケールの統計学的差異が、異質性とともに検出された。
・研究の注目すべき欠点は、運動のイメージ中に参加者を監視していないことです。
他論文より補足
・脳卒中後のメンタルプラクティストレーニング(メンタルプラクティスとは運動の上達を図るために,その運動をイメージとし. て再生させるトレーニング方法のこと)の効果を得るには、運動イメージを「鮮明に」に行えることが必要です。
その評価方法の一つのKVIQは、被験者が一人称視点から想像することができる感覚(運動感覚:Kサブスケール)およびイメージの明瞭度(視覚:Vサブスケール)を5点尺度で評価します。KVIQは、健常者および脳卒中後の人々においてそれらの使用を支持する同様の心理学的特性を示しました。
KVIQ-10と20がありますが、10は半分の時間で投与することができるため、身体障害者の評価には適しています。The Kinesthetic and Visual Imagery Questionnaire (KVIQ) for assessing motor imagery in persons with physical disabilities: a reliability and construct validity study. J Neurol Phys Ther.2007 Mar;31(1):20-9.Malouin F et al.
私見・明日への臨床アイデア
・運動イメージは,①筋感覚運動イメージ②視覚的運動イメージに分類されます。筋感覚的運動イメージが運動学習には効果的といわれます。そのイメージの鮮明性・正確性が介入においては大切です。運動イメージの鮮明性はMovement Imagery Questionnaire Revised version(MIQ-R)やKinesthetic Visual Imagery Questionnaire(KVIQ)によって評価されます。
・脳卒中者では、注意力や障害の程度など様々な因子がイメージを妨げます。より鮮明で、集中でき、反復を要すると思われます。第三者的に観察するのではなく、主体的にイメージすることが大切と思われます。
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)