Vol411. 運動強度が脳機能に及ぼす影響って知っていますか?
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タイトル
運動強度によって脳に影響を及ぼす機能は変わるの?原著はこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
運動強度で脳機能にどのような影響があるのか?以前から気になっていた。きつい運動は長続きしないし、楽な運動は効果は少ないが長続きしやすい。など、メカニズムを理解できれば臨床への関わりも変わってくると思った。
内 容
背景
一過性の運動は、認知、感覚運動、および情動ネットワーク内の安静状態の機能的接続(rs-FC)に影響を与えますが、これらの効果が運動強度によってどう影響されるかは明確になっていない。
方法
25人の男性アスリートが、漸増トレッドミルテストを使用して個々の健康状態の評価を受けました。 別の日に、彼らは「低」(乳酸閾値より35%低い)および「高」(乳酸閾値より20%高い)強度の運動を30分行いました。
運動前後に、Rs-fMRI、正と負の感情スケール(PANAS)を評価しました。 最終的に22人の参加者(3つのドロップアウト)からデータが抽出された。
前後の変化および条件間(低–高)の影響は、反復測定ANOVAを適用し、FSLのランダム化を使用して評価した。有意水準はp <0.05で、しきい値のないクラスター強化を使用して複数の比較に対して修正した。
結果
PANASにおいて、両方の運動条件の後、ポジティブな気分が大幅に増加することを明らかにした。条件間の有意な違いは、右の感情報酬ネットワーク(ARN)、右前頭頭頂ネットワーク(FPN)、感覚運動ネットワーク(SMN)において示された。
「低」運動強度における前後の比較では、左と右のFPNでrs-FCの有意な増加が明らかになったが、「高」運動強度の前後の比較では、SMNと背側注意ネットワーク(DAN)でrs-FCが減少し、左ARNで増加した。
最近の調査結果を支持して、この研究は運動強度によって駆動される明確なrs-FCの変化を報告する最初のものである。1.「低」運動強度でみられたFPN のrs-FCの増加は、認知/注意処理に有益な機能的可塑性を示す可能性がある。
2.ARNのrs-FCの増加は、内因性オピオイドを介した内部情動状態に関連する可能性がある。最後に、3.SMNのrs-FCの減少は、持続的な運動疲労を示している可能性がある。
rs-FCへの明確な影響は、さまざまな運動強度によって媒介される一過性の運動後の一時的な持続的ネットワーク変化の理論に適合し、認知的/注意的または感情的反応に異なる影響を与える。
私見・明日への臨床アイデア
運動負荷の設定は、心肺機能の改善を目的にするのか、筋持久力や筋力の改善を目的にするのかで、低強度の運動にするのか、高強度の運動にするのかが違います。 皆さんは運動の強度をその都度変更し、目的に合った練習を実施しているかと思います。
{(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度(%)+安静時心拍数 カルボーネン法は有名ですが、皆さんご存じでしょうか?
これは自分の求める強度の運動をするためには、どのくらいの心拍数を目安にしたらいいのか、が分かる式です。 運動強度の目安は諸説ありますが、強度が高いほど瞬発力や筋力強化、 低いほど筋持久力や脂肪燃焼、そして準備運動に有用とされます。
またこの他にもBorg指数といったものや修正Borg指数といったものもあります。
ただ皆さんは、どこの脳部位を活性化させるかを考えて
運動強度を調整したことはあるでしょうか?
今回の論文は、また新しい観点から運動強度の調整を促すような内容です。
「底」強度の運動では、認知/注意処理に有益な機能的可塑性を示す可能性がある。
「高」強度の運動では、感情報酬ネットワーク(ARN)の安静時の機能的接続性(rs-FC)を増加させることで、内因性オピオイドを介して感情的なプロセスに有益な変化を与える可能性がある。
このように、身体機能的な効果と合わせて、脳活動を意識した運動強度の調整も、大切な考え方かもしれません。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)