vol.93:姿勢の連鎖と筋活動 脳卒中/ 脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,バイオメカニクス
タイトル
姿勢連鎖可動域は座位ランププッシュ(斜面にある物体を押す)時の筋活動に影響を及ぼすか? Does postural chain mobility influence muscular control in sitting ramp pushes??PubMedへ Le Bozec S et al:Exp Brain Res. 2004 Oct;158(4):427-37. Epub 2004 Jun 10
内 容
なぜこの論文を読もうと思ったか?
•一般的な「運動連鎖」とは異なる「姿勢連鎖(動作時の筋活動のつながり)」に興味があり、論文上でどのように実証されているのか知りたかったため。
•また、筋活動が実際どのようにつながるのかの知識があれば、動作分析やハンドリングに活かせると思ったため
Introduction
•この論文では姿勢連鎖は予測的姿勢調整機能とほぼ同義で、随意運動時(例えば座位で肩関節を屈曲する)に予想される身体の乱れに対する準備運動(体幹伸展筋の筋緊張亢進など)のことを表している。
•姿勢連鎖可動域とは姿勢連鎖に必要な動的な関節可動域のことで、本研究の目的は、脊柱の可動性が減少する仙骨座りと可動性が向上する座骨座りで姿勢連鎖に違いが出るかを確かめることである
方 法
•健常成人7名に対し、座位での前方ランププッシュ(斜面上の物を押す)を仙骨座りと座骨座りで比較した。
•アウトカムは押す力(N、ニュートン)と表面筋電図による筋の発火時間(ミリ秒)。
結 果
•座骨座りの方が仙骨座りより有意に押す力が強かった(図)。
•座り方による発火時間の有意な差はなく、収縮する筋の順番はどちらの座り方も同じだった。姿勢筋が主動作筋より速く活動し始めていた(表) (Le Bozec S et al:2004)?PubMedへ
興味深かったこと
•座位での骨盤アライメントが違うと、筋収縮のタイミングや収縮する筋に違いが出るのではないかと予想していたが、両群同じ結果であることが意外だった
•ただ、標準偏差の値が大きい印象であり、個々のばらつきが結果に影響している可能性を考慮しなければならないと思った
私見・明日への臨床アイデア
•座骨に荷重し骨盤が前傾位であることが上肢随意運動の筋収縮力を高めることがわかり、座位時の骨盤前傾位の重要性を再認識した。
•下腿から徐々に上行性に筋収縮が入り、上肢の運動が生じることが表よりわかる。臨床でのハンドリングはその性質上、主観的な評価になってしまうが、本研究によってハンドリングの技術を客観的に裏付けることができるのではないか
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)