vol.98:フットコアシステムと歩行の関係性 脳卒中/脳梗塞に関わるリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,バイオメカニクス,歩行
タイトル
足部の内在筋促通が脳卒中患者に与える影響 Short foot exercise incorporating the foot core system paradigm on clinical trials for the patients with stroke?原著PDFへ Paul Lee et al:NEUROTHERAPY 2016;20(1):43-52
内 容
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
•足部の内在筋が脳卒中患者の立ち上がりや歩行にどのように影響を与えるか知りたかったため。
•”Foot core system paradigm”という言葉が興味深く、どのように定義されているかが知りたかったため。
目 的
•足部内在筋のトレーニング(short foot exercise)が脳卒中患者の足部のアーチ、筋緊張、歩行スピードや関節可動域にどのように影響するかを調査することである。
方 法
•34名の脳卒中患者(1年以内に再発がなく、50m歩行が可能、他の神経徴候なし)を無作為に2群に分けた。
•コントロール群(一般的理学療法):立位評価、足部モビライゼーション、筋促通、立位アライメント調整。
•介入群(一般的理学療法+short foot exercise):足部内在筋促通のため、端座位・両足部を地面に置き①足趾伸展②足趾IP関節伸展位でMP関節屈曲等尺性収縮(内側アーチ挙上を意識)を行った。
•両群ともに1回90分×週5回×6週間。
•アウトカム:立ち上がり時の筋活動(下腿三頭筋内側、外側、前脛骨筋)、歩行スピード(10m歩行)、足関節背屈可動域
結 果
Paul Lee et al:2016?原著PDFへ
※図の凡例 CEG:一般的理学療法、SFE:short foot exercise、Affected:麻痺側、Non-affected:非麻痺側、GCM(M):下腿三頭筋内側頭、GCM(L):下腿三頭筋外側頭、TA:前脛骨筋
論文の背景や興味深かったこと
•Foot core system paradigm とは、体幹でいうところのコアスタビリティのように、足部の内在筋がアーチを安定させ、外在筋の働きを強めると定義されている。
•本研究では足部内在筋を促通したことで、動作時の下腿三頭筋や前脛骨筋の張力が減少し、歩行スピードが速くなった。安定したアーチは少ない筋収縮でも効率的に外在筋の張力を伝達し、歩行や立ち上がりを改善することが示唆された。
私見・明日への臨床アイデア
•足部の内在筋促通により下腿三頭筋や前脛骨筋の筋張力が減少したことから、脳卒中患者が下腿に感じる疲労を軽減できるかもしれないと思った。
•背屈可動域にも改善が見られており、足部の内在筋促通が下腿三頭筋の筋緊張を緩和し、可動域練習としても使えることが示唆された。
臨床後記:更新日2021/3/6
●足部のShort Foot exerciseも重要であるが、その際の踵の内外反、内側・外側縦アーチの状態、母指球・小指球の荷重時の偏りはじめ細かく足部機能を評価してこそ有用となる。また、足部は小さく、過体重となると支えきれなくなり、構造的変化を起こす場合もある。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)