vol.84:LSVT®BIG からパーキンソン病のリハビリを学ぶ パーキンソン病論文
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カテゴリー
神経系
タイトル
LSVT®BIG (Lee Silverman Voice Treatment)からパーキンソン病のリハビリを学ぼうLSVTLOUDandLSVTBIG:BehavioralTreatmentProgramsfor SpeechandBodyMovementinParkinsonDisease?PMCへ Cynthia Fox et al:Hindawi . 2012 .article ID 391946 page 12
内 容
Introduction
●神経科学の進歩により、運動に基づく行動療法は、パーキンソン病(PD)患者の運動機能の改善および運動症状の進行を遅らせる可能性があることが示唆されています。
●現在の治療法のほとんどは、不足している大脳基底核機能を迂回するための代償行動および外部のCueに依存しています。
●LSVT®プログラムは、LSVT® LOUDに着目して始まり、最近ではLSVT® BIGと広げられている。LSVT®プログラムのユニークな側面は、
a)振幅 increasing amplitude (動き)の大きさのみに焦点を当てる
b)感覚の再教育/再較正sensory recalibrationに焦点を当てる
c)治療成果の長期的な維持を促進するため意識的な努力を促す(能動性、動機づけ)
さらに頻度・反復を要する集中的な訓練プログラムで活動依存性の神経可塑性および運動学習を促進する
という点です。
プログラムの目的の詳細
●LSVT®BIGでは、「速度の訓練」はより速い運動を誘発することができるが、振幅および精度を一貫して改善しないため、速度よりも「振幅の訓練」が、動作緩慢/運動低下を克服するための治療の主な焦点として選択されました。振幅の訓練は結果として、動きを大きくするだけでなく、より速く、より正確な動きを生みます。
●LSVT®BIGは患者の運動実行の知覚を再較正することによって正常な運動振幅へ回復させることを目指しています。より大きな動きに必要な運動出力を生成し、この出力増加が、正常な動きの範囲内に入るということをパーキンソン病患者に学習してもらいます。この感覚不一致に直接的に対処することは、個人が習慣的に治療終了時により大きな動きで動くことを学ぶのに役立ち得ます。
●LSVT®BIGは、運動の正常な振幅の感覚的知覚を再調整することに焦点を当てています。高頻度で集中的な治療を行います。
研究
●研究では、パーキンソン病患者18人におけるLSVT BIGの効果を評価しました。データは、4週間の訓練の後、歩行およびリーチ運動の速度が適度に(12%-14%)増加することを実証しました。
●LSVT BIG研究では、LSVT BIG、ノルディックウォーキング、監督なしの訓練の無作為に割り付けられた60人のパーキンソン病患者と、運動能力の改善が比較された。LSVT BIGを受けた被験者におけるUPDRS motor scoreの平均改善は、4ヶ月のフォローアップ時に5.05でした。対照的に、UPDRS motor scoreは、ノルディックウォーキングの訓練を受けている対照群および監督を受けていない訓練を受けた被験者においてわずかに悪化しました。LSVT BIGの有益な成果は、標準的なTUGや10メートル歩行などのさらなる評価の改善によっても反映されました。
今後の展望
●単一の学習の手がかり(より大きな動き)が認知負荷および精神的労力を最小限に抑え、治療室外での治療戦略の維持および一般化を容易にすると仮定します。LSVTプログラム前後で改善された振幅を維持するためにパーキンソン病を有する個人に二重課題機能が及ぼす影響を試験することは、パーキンソン病患者が振幅のための新しい自己キューを学習する能力を解明すると思われる。
私見・明日への臨床アイデア
●自主練習を「単一」の「手がかり」のみを提供するという点は患者指導に大事と思われます。様々なことを伝えても、多くのことを意識して人は日常を過ごせない。いかにシンプルに大事なことを伝えられるという能力はセラピストに求められると思われます。
●健常人でも気づきの機会がなければ、身体運動イメージが崩れている方が多い。姿勢、運動と特有の症状が出てしまうが故に身体、運動イメージを維持するという視点も必要である。
臨床後記:更新2021/2/19
●パーキンソン病患者では(初期片側性)姿勢反射障害や無動、固縮などの影響から体は縮こまり、動きは小さくなってしまう。そして姿勢としては前傾・側屈・回旋など姿勢変化も生じてくる。後期では認知面の問題も併せて生じ、認知面の問題もある事から、多くの課題を求めるよりは、シンプルな外的手がかりも用いた分かりやすい課題で練習を繰り返すことは大事と思う。
●皮膚・筋の伸張性の低下、Body Imageの崩れなども生じてくる可能性が大きく、軟部組織の長さの改善、運動感覚の再学習も大切と思われる。服薬による時間等も考慮して介入していきたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)