vol.102:脳卒中患者における筋疲労の男女差 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
脳卒中患者の膝伸筋の疲労しやすさは男女で違いがあるか?
Sex differences in Neuromuscular fatigability of the knee extensors post-stroke ?PubMed Centralへ Kirking. M et al: Brain Science. 2017 Jan; 7(1): 8.
内 容
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脳卒中の患者が筋疲労を訴えることが多く、その性差をしらべた本研究が興味深かったため。
目 的
・脳卒中後の筋力増強に関するエビデンスが数多く存在するが、筋疲労に関するものは少ない。
・そのため、本研究は慢性期脳卒中患者の膝伸筋の筋疲労の起こりやすさを男女で比較する。
方 法
・脳卒中患者群18名(男性10名、女性8名)
・コントロール群23名(健常成人、男性12名、女性11名)
・ハンドヘルドダイナモメーターにて膝伸筋等尺性収縮の筋力を計測する。
・6秒筋収縮(30%MVC;最大筋力の30%)→3秒インターバル→6秒筋収縮…
・30%MVCを下回るまで続ける。
・また、大腿直筋と内側広筋の筋活動を筋電図で計測した。
結 果
・脳卒中群はコントロール群より有意に筋疲労が生じやすかった(脳卒中群24.1±17分、コントロール群34.9±16分)
・男性は女性より有意に筋疲労が生じやすかった(男性17.9±9分、女性41.6±15分)
図1:各群男女の継続時間
凡例
Task duration:継続時間
control:コントロール
stroke:脳卒中
・また、脳卒中群の女性の大腿直筋は常に一定の筋電図値を示していた。
図2:計測中の大腿直筋の筋電活動の変化
凡例
RF:大腿直筋
Kirking. M et al: Brain Science. 2017 Jan; 7(1): 8.?原著論文へ
論文の背景や興味深かったこと
・性差が大きく影響していたことが意外だった。女性脳卒中患者の大腿直筋は筋電図での値の変化が少なく、常に安定して膝伸展をすることができていた(図2)。男性のように筋電図の変化が大きいというは、筋活動を調整しようとしていた結果であり、求心性の神経発火が増えフィードバック機構がより働いたのではないかと筆者らは考察していた。求心性の神経発火増加は神経性の疲労につながり、今回の性差が生じたのではないかと考えられていた。
私見・明日への臨床アイデア
・仮に今回の疲労しやすさの一因が筆者らの言う通り、性差における求心性神経の発火量の違いであるとするならば、男性は女性より求心性神経が発火しやすいと仮説が立てられる。もしかすると、促通の際、より感覚情報が入力されやすい男性の方が、効率的に運動学習がなされるかもしれない。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)