【2024年版】ゴルジ腱器官とⅠb抑制を活用した効果的リハビリアプローチ!メカニズムと実践法を解説 – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【2024年版】ゴルジ腱器官とⅠb抑制を活用した効果的リハビリアプローチ!メカニズムと実践法を解説

論文を読む前に:ゴルジ腱器官とIb抑制に関する講義

金子先生(リハビリテーション医師):「丸山さん、今日は筋骨格系の感覚受容器、特にゴルジ腱器官(GTO: Golgi Tendon Organ)について話しましょう。リハビリの現場では、筋力トレーニングや筋緊張の調整が重要ですが、ゴルジ腱器官が果たす役割とそのリハビリへの応用について理解しておくことが大切です。」

1. ゴルジ腱器官の基礎

金子先生: 「まず、ゴルジ腱器官がどこにあるか知っていますか?」

丸山さん(新人療法士):「ええと、筋肉と腱の移行部に存在する感覚受容器ですよね?」

金子先生:「その通り。ゴルジ腱器官は筋腱移行部に位置し、筋肉が強く収縮すると、その張力を感知して、信号を脊髄へ送ります。これは主にIb感覚線維を介して行われ、筋肉の張力が過度に高まると、GTOは筋力を抑制し、筋肉や腱が損傷しないように保護する役割を果たします。」

2. Ib抑制のメカニズム

金子先生: 「次に、ゴルジ腱器官が引き起こすIb抑制について説明します。これはとても重要です。Ib抑制は、ゴルジ腱器官からのシグナルが脊髄の介在ニューロンを経由して、同じ筋肉に対して運動ニューロンの活動を抑制するメカニズムです。つまり、筋肉が過度に収縮しそうなときに、ゴルジ腱器官が『収縮を抑えなさい』という指令を出して筋緊張を低下させるんです。」

丸山さん: 「筋紡錘が筋の長さを感知し、ゴルジ腱器官が張力を感知するんですね。筋紡錘は筋収縮を促進する一方、ゴルジ腱器官は抑制する役割なんですね。」

金子先生:「その通りです。筋紡錘がIa線維を介して筋の収縮を促す一方で、ゴルジ腱器官はIb線維を介して抑制します。これが筋肉のバランスを保ち、過剰な筋収縮や腱の損傷を防いでいます。」

3. リハビリテーションにおける応用

金子先生:「さて、これらのメカニズムをリハビリにどう応用できるかを考えてみましょう。特に脳卒中後の患者では、筋緊張が異常に高まることがあります。ゴルジ腱器官のIb抑制を利用することで、筋の過度な緊張を緩和できることが期待されます。」

3.1 筋弛緩法とIb抑制

金子先生:「例えば、脳卒中後の痙縮が強い患者に対して、静的ストレッチを行うことが有効です。筋を徐々に伸張することで、ゴルジ腱器官を刺激し、Ib抑制が働くことで筋緊張が減少します。」

丸山さん: 「ストレッチで筋肉が弛緩するのは、ゴルジ腱器官の反応によるものなんですね!」

金子先生:「その通りです。また、PNF(固有受容性神経筋促通法)のようなテクニックでは、筋を強く収縮させた後に弛緩させることで、ゴルジ腱器官が活性化され、筋弛緩を促進します。」

3.2 アイソメトリック収縮の活用

金子先生:「もう一つのアプローチとして、アイソメトリック(等尺性)収縮を利用する方法があります。特定の筋肉を収縮させた状態で保持することで、ゴルジ腱器官が張力を感知し、Ib抑制を介して筋緊張を低下させます。この方法は、特に痙縮が強い患者に対して効果的です。」

丸山さん: 「筋緊張を低下させるために、あえて筋肉を収縮させるんですね。」

3.3 徒手療法での応用

金子先生:「徒手療法でもIb抑制を利用できます。軽い抵抗を加えながら筋を収縮させた後にリラックスさせると、ゴルジ腱器官が筋の過剰な張力を検知し、弛緩を促すことができます。患者の感覚フィードバックをしっかりと活用し、過度な負荷をかけないことが重要です。」

丸山さん: 「適切な抵抗を加えることが、リハビリの効果を高めるんですね。」

4. 脳卒中患者における課題とIb抑制の役割

金子先生: 「ただし、脳卒中患者では、筋の緊張が持続的に高まる痙縮があり、ゴルジ腱器官の機能がうまく働かないことがあります。そこで、リハビリテーションでは筋弛緩のために、さまざまな手法を組み合わせることが重要です。」

まとめ

金子先生:「丸山さん、今日はゴルジ腱器官とIb抑制、そしてそのリハビリへの応用について説明しました。これらの知識を活用し、患者の筋緊張を効果的に調整することが、リハビリの成功につながります。重要なのは、個々の患者の状態に合わせたアプローチを行い、ゴルジ腱器官の抑制効果を最大限に活用することです。」

丸山さん: 「ありがとうございました、先生!実際のリハビリで試してみます。」

このように、ゴルジ腱器官のIb抑制を理解し、それをリハビリテーションに応用することは、特に痙縮や筋緊張の問題を持つ患者のリハビリにおいて重要です。

論文内容

タイトル

ネコのヒラメ筋の自動収縮時のゴルジ腱器官の反応

Responses of Golgi tendon organs to active contractions of the soleus muscle of the cat.

?PubMed Houk J J Neurophysiol. 1967 May;30(3):466-81

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

腱紡錘に興味があり本論文を見つけ、読もうと思った。

内 容

背景・目的

・筋が収縮すると腱に力が生じ、腱紡錘に付着する神経が発火する。

・筋収縮1回の刺激の場合は、電位が立ち上がる際に腱紡錘が発火し、持続的な筋収縮の場合、腱紡錘はリズミカルに発火を繰り返す。

・他の論文によると、筋収縮による張力でもストレッチによる他動的な張力でも、腱紡錘はどちらも同じ閾値で発火すると言われている。

・しかし、反対意見として自動筋収縮では腱紡錘の閾値が他動伸張よりかなり低いとも言われている(L7S1の前根を刺激した場合)

・本研究は特定の前根のみ残して刺激した際の腱紡錘の電位を記録し、自動筋収縮と他動伸張の違いを比較する。

方法

・成熟した猫に椎弓切除を行い、L7S1の前根、後根を近位から除去した。左下肢と殿部は脱神経状態とし、ヒラメ筋のみ神経が付着している状態とした。

・筋線維は約160gの他動張力を負荷した状態から実験を始めた。

・次にL7S1の前根2本のうちどちらかを10-20/秒の周波数で刺激し、ヒラメ筋の一部に筋収縮を誘発した。(単一刺激では刺激と同化し計測に支障が生じるが、刺激頻度が高すぎると筋疲労を生じてしまうため)。

・ヒラメ筋腱にmyographを付け、筋収縮による張力を計測した。

・計8つの腱紡錘を実験に使用した。

結果

図1:筋収縮(上線)と腱紡錘の発火(下線)Houk J (1967)より引用

※上部・下部で違う前根を刺激

 

・図(上部)は筋収縮を生じさせる(図に表示できないほど強い張力)と腱紡錘の発火が止まった。

・図(下部)は筋収縮(張力18g)でも腱紡錘の発火が増えた。

図2:筋線維と腱紡錘のイメージHouk J (1967)より引用

 

・図1より、筋線維全てに腱紡錘が付いていないと筆者は考察していた(図2のM2のみ腱紡錘がある)。

明日への臨床アイデア

1下部を見ると、他動張力160gでの腱紡錘の発火具合より明らかに自動収縮で発火頻度が強いことがわかる。また、18gの張力で発火していることから腱紡錘は筋収縮に対して反応性が高いことが想像できる。ストレッチよりも、筋収縮を促すことがよりIb抑制の効果を得られる可能性がある。全ての線維に腱紡錘が付着していないならば、より多くの筋線維の収縮を動員できるかが筋緊張を緩めるうえで重要になるのではないか。

ゴルジ腱器官のIb抑制を利用したリハビリテーションでの具体的な介入方法については、筋の過剰な収縮や緊張を和らげるために、慎重な手順とアプローチが必要です。以下に、筋への効果的な介入手順を示します。

1. アイソメトリック収縮(等尺性収縮)の活用

ゴルジ腱器官のIb抑制を利用するためには、筋肉が張力を感じる状況を作り出す必要があります。そのため、アイソメトリック収縮が効果的です。

  • 手順:
    1. 対象筋を収縮させ、力を維持します。収縮中に関節の角度を変えずに、一定の張力を筋肉にかけます。
    2. 10秒ほど筋を収縮させ、筋が最大張力に達した後、徐々に弛緩させます。
    3. アイソメトリック収縮を繰り返すことで、ゴルジ腱器官が張力を検知し、筋弛緩が促進されます。
    4. 各筋に対して、3~5回の収縮弛緩サイクルを行います。
  • 目的:
    1. ゴルジ腱器官が筋張力を抑制することで、過剰な筋緊張が和らぎます。
    2. 主に痙縮のある脳卒中患者などに有効です。

2. PNFストレッチング(固有受容性神経筋促通法)

PNF法では、反復的な収縮と弛緩を組み合わせることで、ゴルジ腱器官を活性化します。これはIb抑制を活用して筋緊張を減少させるための有効な方法です。

  • 手順:
    1. 患者の筋肉を収縮させます。たとえば、四肢の筋肉を自動的、または他動的に収縮させた後に弛緩させます。
    2. 筋肉を最大の収縮状態に保ちながら、抵抗を加えます(等尺性収縮)。
    3. 抵抗を解除し、筋をリラックスさせた状態で伸張させます(静的ストレッチ)。
    4. この収縮と弛緩を数回繰り返すことで、Ib抑制が促進され、筋弛緩がさらに効果的に進みます。
  • 目的:
    1. 痙縮患者における筋緊張の低下。
    2. 関節可動域の拡大と筋の柔軟性の向上。

3. 静的ストレッチング

静的ストレッチは、筋を長時間にわたって伸張させ、ゴルジ腱器官を刺激することで、Ib抑制を引き起こす方法です。

  • 手順:
    1. 筋肉をゆっくりと他動的に伸ばします(もしくは自動的に)。
    2. 張力が加わった状態で、そのまま15~30秒程度保持します。
    3. 筋肉が張力に適応し、ゴルジ腱器官がIb抑制を引き起こすと、筋が弛緩します。
    4. ストレッチ後にゆっくりと元の位置に戻します。
  • 目的:
    1. 反射的に筋肉を弛緩させ、痙縮の軽減。
    2. 筋と腱の柔軟性向上。

4. 持続的低負荷収縮

脳卒中患者では、持続的な低負荷での収縮もゴルジ腱器官の機能を活性化し、筋緊張のコントロールに有効です。

  • 手順:
    1. 患者に軽い負荷をかけながら、持続的に筋肉を収縮させます。
    2. 筋肉に一定の張力がかかるよう、10~20秒間保持。
    3. 収縮後、筋肉をゆっくりと弛緩させ、回復時間を与えます。
  • 目的:
    1. 徐々に筋緊張を調整し、筋肉の過剰な張力を和らげる。

5. 関節モビライゼーションとIb抑制

関節モビライゼーションと組み合わせて、ゴルジ腱器官を刺激する方法も有効です。特に関節可動域が制限されている場合に役立ちます。

  • 手順:
    1. 関節を緩やかに動かしながら、筋肉を収縮・弛緩させます。
    2. モビライゼーション中に筋が伸展し、ゴルジ腱器官が刺激されることで筋緊張が低下します。
    3. 繰り返し行うことで、関節可動域が広がり、筋の柔軟性が向上します。
  • 目的:
    1. 筋緊張の低減と関節可動域の拡大。
    2. 痙縮の抑制に加え、リハビリにおける運動機能の改善。

6.徒手によるIb抑制促通の手順

  1. 患者をリラックスした体位に置く
    • 患者を座位または仰臥位でリラックスさせ、筋肉に過度の緊張がかからないようにします。
  2. 筋腱移行部の特定
    • ターゲットとする筋の腱を明確に把握します。たとえば、上肢では上腕二頭筋の筋腱移行部、大腿では大腿四頭筋の腱部などがターゲットになります。
  3. 適切な圧力を加える
    • 筋腱移行部や腱に対して、親指や指先を使い、一定の圧力を加えます。このとき、深部へしっかりとした圧をかけ、ゴルジ腱器官が張力を感知するようにします。
  4. リズミカルな圧迫と解放
    • 約1~2秒間圧迫した後、すぐに解放します。このリズミカルな圧迫と解放を繰り返し、ゴルジ腱器官の活動を促します。
    • 1セットにつき10~15回程度の刺激を行います。
  5. 圧迫をかける時間の調整
    • ゴルジ腱器官が張力に反応するため、持続的な圧迫も有効です。圧迫時間を少し長く(5~10秒)することにより、筋弛緩を強化することができます。
  6. 筋の反応を確認
    • 圧迫によって筋の緊張が低下していることを触診や動作確認で確認します。弛緩が不十分な場合は、別の角度や部位から再度圧迫を試みます。

まとめ

ゴルジ腱器官のIb抑制を利用したリハビリテーションの介入は、患者の筋緊張を効果的にコントロールするために非常に有効です。特に、脳卒中患者のように痙縮が問題となる場合、適切な収縮と弛緩を組み合わせたアプローチは、筋の柔軟性と運動機能の向上に貢献します。

新人療法士がIb抑制を利用したリハビリを行う際のポイント

新人療法士がIb抑制を利用したリハビリテーションを行う際、以下の専門的なポイントを理解し、効果的に介入することが重要です。

1. 筋腱移行部への適切な圧刺激

ゴルジ腱器官(GTO)が多く存在する筋腱移行部に対して、適切な圧迫を加えることでIb抑制が促通されます。圧の強さと持続時間を調整し、筋肉の緊張を和らげるようにします。

2. リズミカルな刺激を加える

GTOは持続的な圧刺激よりもリズミカルな刺激に敏感です。圧迫する際、一定のリズムで行うことで、抑制を強化しやすくなります。1-2秒間の圧迫と解放を繰り返すのが効果的です。

3. 対象筋の収縮タイミングの把握

Ib抑制は、筋が高張性または過剰収縮している時に強く作用します。対象筋が最大収縮する直前や緊張がピークに達する瞬間に介入することで、効果が高まります。

4. 異なる筋肉群への応用

各筋群にはそれぞれ独自の機能があり、GTOの反応性も異なるため、大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋など複数の筋群に対して適用し、Ib抑制の全身的な効果を引き出すことが重要です。

5. 筋の収縮-弛緩のパターンを理解

筋の収縮-弛緩パターンを理解し、そのサイクルに合わせてIb抑制を促す手技を行うことが大切です。特に、筋が収縮している際に圧迫し、弛緩時に解放するタイミングが効果を左右します。

6. 患者のフィードバックを重視

リズミカルな圧刺激が適切かどうか、患者からのフィードバックが重要です。圧迫の強さや頻度を患者の感覚に応じて調整することで、適切な抑制効果を得られます。

7. 姿勢との連動

筋が短縮された状態で行うとIb抑制は効果的でない場合があります。筋の適切な伸長を促すために、姿勢やアライメントを確認し、最適なポジションで介入を行います。

8. 持続的な練習

Ib抑制は一度の施術で完全に効果を発揮するわけではなく、持続的な刺激が必要です。定期的な介入により、持続的な効果を期待できます。

9. 代償動作の防止

筋腱移行部への刺激時、患者が無意識に代償動作を行う可能性があります。特にリーチ動作や歩行時のIb抑制介入では、代償動作を防ぐための姿勢制御が求められます。

10. 反射性収縮の観察

圧迫によるGTOへの刺激は筋収縮を抑える効果がありますが、過度に行うと逆に筋が反射的に収縮することがあります。そのため、筋の反応を観察しながら、刺激の強度を調整することが必要です。

これらのポイントを理解し、臨床で適用することで、Ib抑制を利用した効果的なリハビリテーションが可能となります。

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