vol.119:脳卒中者の肩関節痛とテーピング 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
上肢
タイトル
脳卒中者の肩関節痛に対するテーピング -ランダム化比較試験- ?PubMed: Hanger et al, ‘A randomized controlled trial of strapping to prevent post-stroke shoulder pain.’ Clin Rehabil. 2000 Aug;14(4):370-80.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脳卒中者の肩関節痛に対し、テーピングによる予防は可能か知りたかったから
内 容
目 的
脳卒中者の肩関節にテーピングを行い、①痛みの増悪を予防、軽減できるか、②肩関節可動域を保てるか、③上肢機能を改善することができるか検討する。
方 法
・無作為化比較試験
・テーピング群49名、コントロール群49名
・最長6週間のテーピング(麻痺側90°の自動外転獲得、もしくは退院した場合は6週以下で終了)。
・非伸縮性のテープとアンダーテープを使用(図)し、亜脱臼の防止を目的として貼付した。
図:テーピングの貼り方 Hanger et al (2000)より引用
・アウトカムは感覚、痛み(SROMP、VAS)、上肢機能(Motor Assessment Scale: MAS)、FIMにて評価し、開始時、終了時(6週後)、終了時から2か月後(14週後)に計測。
※SROMP:上肢自動外転の際に疼痛が発生した角度
結 果
・どのアウトカムに対しても両群間に有意な差は見られなかった。
・終了時(6週後)、VASはテーピング群1.8、コントロール群2.5 (p=0.09)、MASはテーピング群5.5、コントロール群2.8(p=0.12)であり、有意差はないが疼痛、上肢機能はテーピング群に良好な値がみられた。
・テーピングが亜脱臼を防止したという結果は得られなかった。
・両群ともSROMPは時間の経過とともに値が低下した(より小さい外転角度でも痛みが発生するようになった)。
|
開始時 |
終了時(6週後) |
終了時から2カ月後(14週後) |
テーピング群 |
55° |
45° |
35° |
コントロール群 |
60° |
44° |
40° |
興味深かったこと
・今回テーピングによる疼痛予防効果や機能改善はあるとはいえず、非麻痺側外転時の痛みは時間の経過とともに悪化していた。原因として①テーピング自体が亜脱臼を防止できていなかった、②亜脱臼が痛みの原因ではなかった、が考えられる。①ではテーピング後にX線などで亜脱臼が整復されたかは検証されておらず、筆者もテーピングが適切だったか疑問視していた。②では亜脱臼以外の肩関節痛の原因として、筋緊張異常、肩甲骨内転、感覚低下、身体失認、関節不動や不良なハンドリングなどが挙げられており、これらの因子の影響を考慮する必要があると思われる。
明日への臨床アイデア
・麻痺側肩関節の痛みを亜脱臼と決めつけず、原因を精査し対応していきたい。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)