vol.120:脳卒中後の肩関節痛に対するボトックス注射 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
上肢
タイトル
痙性麻痺を呈する脳卒中者肩関節痛に対する肩甲下筋ボツリヌス療法 -プラセボ対照、無作為化二重盲検群間比較試験- ?PubMed Yelnik et al, ‘Treatment of shoulder pain in spastic hemiplegia by reducing spasticity of the subscapular muscle: a randomised, double blind, placebo controlled study of botulinum toxin A.’, J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007 Aug;78(8):845-8. Epub 2006 Nov 6.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脳卒中者の肩関節痛の原因は亜脱臼だけではなく、筋緊張異常も考えられる。ボトックス注射により筋緊張異常を正した際に、肩関節痛はどう変化するか知りたかったため。
内 容
目 的
・脳卒中者の肩甲下筋に対してボトックス注射を行った場合、プラセボ群と比較して痛み、外旋・外転可動域、筋緊張に変化があるか調べること。
方 法
・プラセボ対照、無作為化二重盲検群間比較試験
・被験者は脳卒中患者20名で、肩関節内旋筋、肘屈筋の筋緊張がModified Ashworth Scale(MAS)で1+以上、かつ他動での肩関節外旋可動域が10°、もしくは対側と比して30°以上小さいことが条件。
・ボトックス注射群10名、コントロール群(プラセボ注射群)10名
・アウトカムは痛み(VAS)、関節可動域(座位での肩関節外旋、外転可動域)、筋緊張(肩関節内旋筋、肘屈筋、手関節背屈筋、手指屈筋のMAS)、鎮痛剤内服量の変化
・計測はベースライン、1・2・4週後に行う。
結 果
・ボトックス注射群では痛み(VAS)はWeek1,2,4全てでベースラインに比して減少がみられたが、群間の有意差はWeek4で見られた(p=0.04)。※以下、グラフの値はすべて中央値。
図1:VASの変化
・ボトックス注射群で関節可動域の外旋可動域の向上が見られた。Week2とWeek4でボトックス群がコントロール群に比して有意に改善していた(それぞれp=0.05、0.018)。
図2:外旋可動域の変化
・外転可動には大きな変化はなかった。
図3:外転可動域の変化
・MASの変化で群間の有意差が出たのはWeek4の手指屈筋のみだった。
興味深かったこと
・ボトックス注射により麻痺側肩関節痛が減少し、1カ月間効果が継続していた。被験者数が少ない論文ではあるが、麻痺側の不良姿勢(内転内旋)が疼痛原因とする論文もあり(Hanger et al, 2000)、肩甲下筋が疼痛の原因であることが示唆された。
明日への臨床アイデア
・麻痺側肩関節痛を訴える患者に対し、Drと協力してアプローチすることで良好な結果が得られるかもしれない。また、徒手療法や運動療法でも肩甲下筋にアプローチする方法があるか文献を調べてみたい。
引用文献
Hanger, H.C., Whitewood, P., Brown, G., Ball, M. C., Cox, R. and Sainsbury, R. (2000) ‘A randomized controlled trial of strapping to prevent post-stroke pain’, Clinical Rehabilitation, 14, pp.370-380.
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)