vol.129:MRIでみる脳卒中者の肩の痛み 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
上肢
タイトル
脳卒中者の肩関節痛 -MRIの所見から-MRI findings in Painful Post-stroke Shoulder
?PubMed Rajiv R Shah Stroke. 2008 Jun; 39(6): 1808–1813.
本論文を読むに至った思考・経緯
本論文は脳卒中者の痛みに対し、MRIで疼痛原因を追究している。痛みの原因を知る一助になると考え読もうと思った。
論文内容
研究背景・目的
脳卒中者の肩関節の構造的な異常を見つけ、臨床症状との関係性を調査する。
研究方法
・脳卒中者(発症から3カ月以上、肩関節痛が発生してから3カ月以上)
・VAS、亜脱臼の程度、筋機能、感覚を計測
・MRIにて腱板、上腕二頭筋、三角筋の損傷、腱炎、萎縮を評価。さらに肩峰下滑液包、関節唇異常、肩鎖関節包の肥厚を評価
研究結果
・89名の脳卒中者の肩関節を計測
・男性67%
・発症から平均61週経過、痛みが発生してから平均53.4週経過
・肩甲上腕関節の亜脱臼は平均0.89横指
表1:腱板筋の損傷割合
Rajiv (2008) より引用
・損傷のない腱板筋の割合は、棘上筋で66名、棘下筋で76名、小円筋で88名、肩甲下筋で88名だった。
・完全断裂は棘上筋で5名、棘下筋で2名だった。
・小円筋、肩甲下筋の損傷はほぼみられなかった。
・二頭筋の断裂は1名でみられた。
・三角筋の断裂はなかった。
・少なくとも一つの筋の断裂を示した被験者は31名、二つ以上は14名だった。
・一つ以上の筋の腱炎を呈していたのは56名、複数の筋では18名だった。各筋では棘上筋で45名、棘下筋で17名、肩甲下筋で9名、上腕二頭筋で6名、その他の筋では腱炎はみられなかった。
・筋萎縮は棘上筋で20名、棘下筋で18名、小円筋12名、三角筋で18-20名、上腕二頭筋で12名だった。
・関節唇損傷は9%、肩峰下滑液包炎は26%、肩鎖関節の肥厚は67%にみられた。
・より高齢な患者に棘上筋損傷が多かった。
図1:年齢と棘上筋損傷割合
Rajiv (2008) より引用
・発症から27.5週未満の被験者に棘上筋、棘下筋損傷が多く見られた。
図2:発症期間と棘上筋、棘下筋の損傷割合
Rajiv (2008) より引用
私見・明日への臨床アイデア
・肩甲骨の正常なアライメントの学習、そこからの挙上動作の反復により前鋸筋・僧帽筋下部線維の筋活動の正常化、さらに痛みの緩和が図れることが示唆された。
・今回は自動運動中心の介入で肩甲骨周囲筋の筋活動に変化が見られた。徒手による筋への刺激を加えることでより効果の高い治療が展開できると考える。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)